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6話 十字独善9





「仕切り直しですかな? ロース様」


 俺から距離をとったコジルドは、片手で大きくマントを広げなびかせた。


「あぁ、第2ラウンドだ。一撃食らわせるまで、攻撃の手を緩めないからな」


「フハハッ……! ならば我も、少々抵抗をお見せしましょう。

 スキル『オートエイム』……!」


 スキル名を唱えるなり、コジルドの体が一瞬だけ淡い光を放った。


「『オートエイム』……。自動照準スキルか。だが、なぜこのタイミングで」


「いかにも。本来このスキルは、狙撃に特化したスキル。

 ですが我のように使いこなせば、この場で最も我の利となるものに、自動で照準を合わす事が可能なのです。

 例えそれが敵の弱点でなく、我への攻撃だとしても。そしてロース様の繰り出される、拳でさえも……!」


「そうか。便利なスキルだな。

 それで……! お前は先ほどから、どこを見てタネを明かしている……」


 コジルドの向ける視線の先を辿ってみると。


「ロース様。このひとりボッチが、あたくしの胸元から目を離さないのですが。

 気色悪い……!」


 冷め切った表情で、レアコードが胸元を両腕で庇っていた。

 どうやら早速、『オートエイム』が効果を発揮したようだ……!


「勘違いなされるな、ロース様。これは自動で利を判別しているわけで、我の意思とは無縁の……」


「見苦しいから、言い訳止めろ。

 それより、続きといくぞ……!」


 俺は拳をグッと握り締め、右足を引きスタートの構えをとる。


「いつでも参られよ、ロース様」


 未だにレアコードへ視線を向けたまま、口だけ返事のコジルド。

 いい加減、こっち向けよ……!


 俺は溢れるイラ立ちをおさえながら、再びコジルドに向け走り出した。

 その途端、コジルドはこちらへと顔を振り向かせる。


「やっと戦意を向けたか!」


 俺はスピードを維持したまま間合いへと入り、両拳に力を込めた。


 下手な鉄砲でも数撃てば当たるはず……!

 戦闘術などろくに知らない今の俺は、ラッキーパンチを期待するしかない。この剛腕ならどんな相手でも、当たれば強力な一撃になり得る。


 まずはまととらえる感覚を、身につけなければ……!


 俺は先ほどよりもモーションを小さく抑え、両手で交互に殴打おうだを打ち込んでいく。


 しかし……。


「くっそ、当たらない……!」


 俺の放つ殴打の応酬おうしゅうは、ことごとくコジルドにかわされていた。


「フハハッ! 先ほどよりも、無駄が少ない身のこなしですな。

 しかし我の目は、バッチリとロース様の拳を捉えておりますぞ!」


 打点を見抜くように、コジルドの両目はキョロキョロと目線を動かし続ける。

 『オートエイム』の性能も凄いが、それに反応できるコジルドの身体能力も凄い。

 もはや、チートじゃないか……!


「ロース様、下手な鉄砲も数撃てば当たる作戦ですかな!? フハハッ……!」


 挙句に、俺の考えまで読まれた。

 怪しい笑みを維持され、余裕を見せつけられている気がする。


 当たらない殴打を繰り出し続ける最中さなか

 俺はとある事に気がつき、咄嗟に打開策をひらめいた。


 ――それはコジルドの、目の動き……!


 俺の繰り出す拳に対し、常に両目が同じように動いている。

 ならば別角度からの同時攻撃に、『オートエイム』は対応できないはず……!


 即興そっきょうで成功するかは分からないが、試す価値はある……!


 俺は一瞬だけ、ピタリと攻撃を止めた。

 そして両腕を振りかぶり。


「『オートエイム』、攻略!」


「なっ!?」


 コジルドの横顔を狙う右フックと、腹を狙う左アッパーを同時に打ち込もうとした。


 だが、コジルドは……!


「フハハッ、甘いですな!」


 俺の同時に繰り出した別角度からの両拳に、反応した……!


 コジルドは左右の眼球をそれぞれ、ギョロリと別方向へ向けた。


 き、気色悪いっ……!

 コイツ、カメレオンかよ。しかも怪しくニヤついたままだし。

 こんなイッちゃってる顔面を、至近距離で拝みたくなかった……!


 コジルドは瞬時に回避をこころみたのか、俺の両拳が届く前に、バックステップで後退しかけた。


 その時……。

 

「うぐっ! マ、マントが……ゴヘッ!!」


 突然()ったコジルドの腹に、俺の左アッパーが痛快にヒットした。



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