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5話 爛漫勇者2





 ――明日にひかえた勇者の再来に向け、俺はこの場にいるふたりに作戦を伝えた。


「明日は、今伝えた作戦で返り討ちを狙いたい。成功するかは分からないが、勝算は見込めるはずだ。

 お前たちはどうだ、やれそうか?」


「勿論ですわ」


「わたくしも問題ございません。そして、素晴らしい作戦です!

 さすが魔王城の頭脳であらせられる、ロース様!」


 伝えた俺の作戦に、ふたりはこころよく賛同してくれた。


「よし、それで頼むぞ。だが敵がこちらの思惑通りに、動かない可能性もある。

 敵が先手の攻撃を仕掛けてきた際には、頼むぞデュヴェルコード」


「お任せください。その際はシールドを張り、敵さんの攻撃をシャットアウトしてご覧にいれましょう!

 側近の名誉にかけて……。わたくし、ファイトッ」


「頼りにしているからな。

 ところで、話は変わるが……。私たちのこの態勢に、なんの意味が?」


「ロース様、今は作戦会議ですよ? 情報が漏れないよう、警戒をおこたってはいけません」


「そうだが……周り、だーれもいないぞ?

 それにお前たちは、地獄耳の持ち主だろ。わざわざ、こんな円陣を組まなくても……」


 俺は終始3人で組み続けていた謎の円陣に、異議を唱えた。


 デュヴェルコードの気持ちも、分からなくもないが……。正門前で、こんな小規模な円を描くのは、正直見窄らしい。

 ひとり背丈の低いデュヴェルコードに合わせ、俺とレアコードは終始スクワットのような中腰キープだし。

 挙句にレアコードは、姿勢が厳しいのか、たまに片足ずつアキレス腱を伸ばしているし……。


「ロース様。これで作戦会議終了でしたら、明日に備えお休みになられてはどうかしら?

 あたくしとデュヴェルはここに残り、作戦の詳しい打ち合わせをしようと思うの。久しぶりに、姉妹トークもしたいですし」


「分かった。私も少し考えたい事がある。

 しばらくは、姉妹水入らずの時間を過ごしてくれ」


「ありがとうございます、ロース様。

 今日のように、明日も完全勝利で乗りきりましょう!」


 可愛らしい笑顔をみせ、両手でガッツポーズをとるデュヴェルコード。

 今日に関しては、敵が自ら敗北を望んだ結果だが……。


 俺はデュヴェルコードに軽い笑顔を返し、ふたりに背を向け城内へと歩き出した。

 うろ覚えな城内の地図を頭に描き、記憶を辿りながら寝室へと向かう。


「テレポートで送ってもらえると早いが、姉妹の時間に水を差すような、無粋ぶすいなマネはできないよな。

 にしても、あの姉妹……。姉は冷酷で、妹はお転婆。似つかないな……」


 ブツブツと独り言を呟きながら、歩くこと数十分。

 俺は、見慣れ始めた寝室に到着した。


「はぁ……。寝室、遠いって……! 正門横に、プレハブの仮寝室でも作ってくれないかな」


 疲れた足取りでドアを潜り、重たい腰をベットへと預ける。

 ひと息ついたところで、俺はポケットから『オブテイン・キー』を取り出した。


「念には念をだ。万が一に備え、自分でも予備プランを準備しておこう」


 以前、カードの中身に目を通した際、俺はとあるスキルに目をつけていた。

 そのスキルのページまで操作していき、取得ボタンを押さずに手を止めた。


 何度も効果を発揮してくれる、持続スキルなのか不明な以上、無闇に残り少ないポイントを消費するのは拒まれる。

 もしも、1度きりの使い捨て仕様だった場合、タイミングが重要になる。


「いざという時は、このスキルを頼ろう。いつでも取得できるように、このページで止めておいて……。

 相変わらず、ユーザー名がムカつくな……!」


 俺は、『40ポイントを消費して、このスキルを取得しますか? ギブスまみれのワキガ外交官さん』のページを開いたまま、カードを仕舞った。


 そして静かに、背中をベットへと沈み込ませ、目を閉じた……。



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