4話 猛者復活10
ボロボロの姿で倒れたシノに向け、トドメを刺すと告げたレアコード。
だが俺とシノの予想を裏切り、レアコードはシノに回復魔法を唱えた……!
「はい、お疲れ様。もう帰っていいわよ」
「な、ななななな、何してんのよレアコードォーー!!
屈辱を受け入れてボコボコにされたのに、全回復してんじゃない! これじゃ帰れないわよ!!」
レアコードの冷たいひと言を受け、勢いよく立ち上がり怒声を放ったシノ。
どうやらある意味、トドメよりもトドメだったらしい……。
恐らくレアコードは、事情を悟った上で『ヒール』をかけたのだろう。
デュヴェルコードは姉の事を、冷静な立ち回りをする印象と話していたが……。
「もはや、冷酷だな……。血も涙もない」
小さな声で、俺はひとり呟いた。
「ふざけんじゃないわよ、レアコード!
わざとね! わざとじゃないと、こんな迷惑な回復するわけないわ! 責任とりなさいよ!」
「そうね……。『ペネトレイトボルト』でも放とうかしら。一撃で苦しめるわよ」
「魔法はダメよ! 当たり前でしょ!?」
「なぜ魔法はダメなのだ? やられた物証も残るし、一撃で済むとレアコードも諭しているじゃないか」
さも当然のように魔法攻撃を拒否したシノに、俺は疑問を抱いた。
「私はね、魔王の目覚めを信じてもらいたいのよ。なのに魔法でやられたら、意味がないじゃない!
だって、魔王は魔法を使えない、ただの筋肉バカ魔族なんだから! 少し考えれば分かるわよね、この脳筋デーモン!」
角が立つ煽りを挟みつつ、シノは強気な口調で理由を明かした。
最もな意見だが、コイツ……ボッコボコにしてやろうか……!
「そういう事なのね。それなら仕方ないわ、納得よ」
最もな意見に、あっさりと賛同するレアコード。
お前はお前で、少しくらい俺を庇えよ……!
一方で、しばらく静かに身を潜めていたデュヴェルコードに、視線を移してみると。
「あっ……やる気だ。第2ラウンド」
キラキラと目を輝かせ、ゆっくりと右肩を回していた。
「ロース様。引き続き、わたくしにお任せを」
「お任せをって、あのお子様パンチの事か? それにお前、少し快感になり始めているだろ」
「お戯れを。これは仇討ちと、ロース様への侮辱を制裁する、歴としたカチ割りパンチですよ」
「なら、その目の輝きはなんだ?」
俺の質問に答える事なく、デュヴェルコードは笑顔をみせ、シノへと歩み寄り。
「『パラライズ』! うりゃーー!!」
再び麻痺魔法を唱え、シノをポカポカと殴り始めた。
――結局、先ほどと変わらない戦法で、シノは再びボコボコにされた……。
「どうでしたか、ロース様! デジャブフェチをお持ちのロース様には、たまらない光景……」
「だから、そんな特殊フェチはない」
周りに変な誤解をされる前に、俺はデュヴェルコードを遮った。
「うぅぅ……うぅっ……。このロリエルフ、さっきより多く殴りやがって……。回数は増やす必要ないでしょ」
「サービスですよ。こんな機会は、二度とないかもしれないので」
「『ヒール』も欲しい? なんなら回復直後に、『テレポート』で強制送還してあげようかしら」
目の前で倒れている敵に対し、容赦のない煽りを放つダークエルフの姉妹。
そんな煽りを受けながら、シノはヘロヘロと立ち上がる。
「どこまでも、ムカつくエルフたちね。私をコケにして……極めて図々しい……」
「図々しいのはお前だ」
「うるさいわね! いいか魔王、この屈辱は忘れないからね!
明日だ! 明日こそ勇者様を連れ、城を落としに来る! 覚悟してなさいよ!」
シノはプルプルと震える手を伸ばし、俺を指差した。
なぜ、そこで俺を指差す? この場で俺が1番無害だったはずだろ……!
「できれば、もう来ないでくれないか? お前も勇者も……。特にお前」
「腑抜けた事を。それでも魔王なの!?
その減らず口も、明日には利けなくなる事を、覚悟して待つのね!」
威勢のいい口調とは裏腹に、よろめく足で俺たちに背を向けたシノ。
体を前のめりに、重たげな足取りで正門を出ていく。
――そよ風にローブと体を煽られ、シノはヘロヘロと歩き去っていった……。
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