27話 悪魔決戦2
俺はドンワコードの再来に備えて、レアコードに共闘してもらうよう話を持ち掛けた。
「ロース様と共闘、そしてロース様の秘策?」
「そうだ、本来ドンワコード相手には使用したくない、1回限りのとっておきだがな。でもいざという時は、私の全てを賭けてヤツを……」
「お断りしますわ」
俺が言い終わるより早く、レアコードはあっさりと拒否してきた。
「即答かよ……! なぜダメなのだ? デュヴェルコードは恐怖心から萎縮して戦えないだろうし、コジルドは屋外での戦闘が不向き。従兄弟を手に掛けるという重荷を踏まえても尚、お前しかいないのだ。
まさか、そんなに私のとっておきが頼りないのか?」
「とっておき云々ではありませんわ、あたくしでは手に負えないのです。暫く対峙していませんが、魔法、体術共に、ドンワの方が優っているでしょうし」
俺は消極的なレアコードの言葉に、ゴクリと唾を呑む。
「お前が言うほどにか……。やはりあの強さは、伊達ではないらしいな。私も実際に対峙してみて、圧倒的な力の差を痛感したよ」
「でしたね」
「んっ……? でしたね?」
俺はレアコードの反応が気になり、思わず首を傾げた。
「ロース様とドンワの戦闘を、窓から見下していましたから」
レアコードの返答に、忽ち俺の顔が引き攣る。
「見下すなと言いたいところだが、それより見てないで加勢に来いよ。
見れば分かるだろ、私が攻めあぐねていた事くらい……!」
「無駄な血が流れたら、無駄に痛いですもの」
「………………俺は文字通り、死ぬほど痛かったぞ」
「とにかく、ドンワに関わったら危ないという強い認識が働き、向かえなかっただけですわ。ドンワって、昔から凶暴でしたし」
「そうなのかも知れないが……。仕返しと言えば言葉が悪いが、デュヴェルコードのためにも、一矢報いてくれないか? 私もこのまま引き下がるのは御免なんだ」
「そうねぇ……」
両腕を胸の前で組み、渋る様子をみせるレアコード。
「直接の加勢でなくても、間接的な協力ならどうだ?」
「ロース様、あたくしはデュヴェルみたいに器用な支援はできませんわよ。尽くすタイプに見えます?」
「いやぁ……どちらかと言うと、真逆な冷酷タイプだな。ならドンワコードを撹乱させるのはどうだ? 色仕掛けとかで、ヤツの心を惑わすとか。
噂によると、お前は女の子が憧れる3大グランドスラムなんだろ? 実際、顔もスタイルも抜群だし」
俺が提案を述べるなり、レアコードの眉がピクリと反応した。
「絶対に嫌ですわ。何であたくしが、ロース様にも負けないどスケベ面のアイツに、にゃんにゃん甘えないといけないのかしら。他人の美しさを悪用しないで欲しいですわ」
「待て待て。私まで巻き込むな、誰がどスケベ顔だ」
「失礼しましたわ。ですが、ハニートラッパーになる気はありませんわ。惑わすなら、ロース様がにゃんにゃんすれば宜しいでしょ」
「いや、私がやって何の効果がある、瞬殺されるわ。それに誰得だ。
見たいか? 魔王が敵にふにゃふにゃと甘える姿を」
「まぁ、ロース様が見て欲しいのであれば、黙って見守りますが、きっと反吐が出ますわね」
「誰も見て欲しいなんて言ってないだろ……! どうにか、デュヴェルコードのためにも、ドンワコードを何とかしなくては。あの子が抱く恐怖の権化を倒せば、スランプからも解放されるだろう。
何か良い策は、んん……。囮作戦でドンワコードを誘い込み、魔王城の総力をぶつけて袋叩きにするか……。しかし、また漆黒の隕石を落とされたら、それこそ一撃で全滅する可能性も」
俺がブツブツと策を呟いていると。
「――デュヴェルのためにドンワを迎え討つのなら、ロース様おひとりで倒されては?」
レアコードが、無謀な策を口にしてきた。
「はぇっ? 私ひとりでだと?」
「そう申しましたわよ」
「いやっ……新手のイジメか? 急に投げ槍すぎないか?」
真面目な様子で無謀な提案をするレアコードに、俺は気が抜けた。
「あたくしだって、まともな策とは思っていません。微塵並みの勝算しか見込めませんわ。ただ……」
「ただ、何だ?」
「もしかするとデュヴェルは、ロース様にドンワを倒して欲しいと、望んでいるのかも知れないと思いましてね……」
「えっ……」
真剣な眼差しで語ってくるレアコードの推察に、俺の胸がキュッと高鳴った。




