表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
208/304

23話 激痛激怒8





「えぇぇぇーーー!! それ誰ですか、わたくし!?」


 デュヴェルコードの顔にふんしたイマシエルを指差し、驚愕きょうがくした様子で大扉に現れたデュヴェルコード。


「ここで本人登場かよ」


 俺は大扉に立つデュヴェルコードを見るなり、思わずため息を吐いた。

 できればこのタイミングで、戻って来て欲しくはなかった。ややこしい事態に発展しなければいいが……。


「ロース様! 正門の外で、片膝をついてお腹を空かせている彼女は、わたくしですか!?」


「待て待て、色々とおかしい質問だな。まずあんな大袈裟おおげさに、腹を空かせたヤツがいるか?」


「空腹が極限に達すれば、膝のひとつも崩れますよ!

 あれはどう見たって、極度にお腹を空かせたわたくしですよ!」


「あれは私の一撃を腹に食らったから、激痛に見舞われているんだよ!」


「ロース様の一撃って……ゔぇぇーー!! ロース様がわたくしに暴力を!? なんでそんな非道な事を!」


「あぁったく、そうではない! デュヴェルコードはお前であって、アイツはお前ではないだろ!」


「何の謎かけですか! アレやコレやグチャグチャで、全く理解できません!」


 デュヴェルコードはプンスカと怒気をあらわに、乱暴な足取りで俺の方へと向かって来た。

 予想通り、いや予想以上にややこしくしてくれたな。グチャグチャしているのは、この子の脳内だけなんだが……!


 俺の隣に辿たどり着くなり、デュヴェルコードはイマシエルをジッと見つめ。


「ま、まさか……その大人びたナイスバデーなわたくしは……!」


 何か気付いた様子で、デュヴェルコードは両目のオッドアイをパッと見開いた。


「未来から来た、わたくし……!」


「デュヴェルコードよ、それを大マジメに申しているのなら、頭大丈夫か? どう頑張っても、私にはその答えに行き着くルートが見当たらないんだが」


「理屈ではなく感じるのです。あの大人びたわたくしから、不思議なシンパシーを」


「有りもしない電波を受信しないでくれ。それは思い込みかマヤカシだぞ。

 そもそも、時空移動の魔法なんてこの世界にないだろ」


「確かにそのような魔法はありませんが、考えてもみてください。ただでさえ魔法の才能にあふれたわたくしが、大人に成長すれば……。ワンチャン、時空も移動できる魔法とか生み出す可能性だって……!」


「余計な自己分析を始めるな。どれだけ未来の自分に、期待を寄せてんだ」


 俺はあきれながら肩を落とし、デュヴェルコードの肩に力なく片手を置いた。


 ダメだ、忘れていた。俺がンーディオに吐く見え見えのハッタリでさえ、敵味方を問わずひとりでに受けるほど、この子は頭が弱点だった……!

 それに加えて、実現じつげんの可能性を真剣に考え始めるほど、この子は純粋で天才な魔法使いだった。バカと天才は紙一重という事か……。


「それよりロース様! 遥々(はるばる)未来から来た大人のわたくしに暴力を振るった件について、詳しく!」


 デュヴェルコードは俺の手を振り払い、勢いよく顔を向けてきた。


「だから、あれはお前じゃないって!」


「では誰ですか! 未来から来たわたくし以外に、説明がつきませんよ! どう見てもわたくしですのに!」


「それは外見だけであって、正体はイマシエルだ!」


「えっ? 顔面プレーンさん?」


 正体を伝えるなり、デュヴェルコードは呆気あっけにとられた様子で、目を点にした。


「あれはドッペルゲンガーの顔マネだ、ただの()()()だ!」


「海賊?」


「あ、いやっ……とにかく証拠を見せてやる!」


 俺は依然として周囲に浮かせていた岩の破片をひとつ手に取り、イマシエルに向けえて球速を落として放った。

 

「ちょっ、ロース! 負傷中にたたみ掛けてくるな!」


 俺の目論見通り、イマシエルは体を回転させながら、ギリギリのところで岩の破片をかわした。


「見たかデュヴェルコード! お前ならわざわざ攻撃をかわすか? 本当にあれが未来のお前なら、魔法でシールドを張るだろ!」


 俺はイマシエルにビシビシと指を差し、デュヴェルコードにアピールする。


「確かに、それは間違いありませんね! しかしロース様、わたくしの事を知り過ぎでは?」


「………………当たり前だろ。毎日ずーっと横に張り付かれているのだから、嫌でも性格と特性くらい覚えるわ」


「そ、そうですよね、失礼致しました。まぁ途中から、あれは未来のわたくしではないと薄々気付いていましたが。

 わたくしがロース様に負けるなんて、時空を移動するよりあり得ない話ですからね」


 デュヴェルコードは胸の前で両腕を組み、納得したようにウンウンと数回(うなず)いた。

 何て嫌味な説得力なんだ。これを悪気もなくで言っているから、余計にイラッとくる……!


あきれるほど無礼な考察だが、今は良しとしよう。敵がまだ目の前にいる事だしな……」


 俺は宙に浮く岩の破片を再び手に取り、イマシエルへと向き直る。


「まだイマシエルへの報復が終わっていない。先にこっちを片付ける」


 俺はイマシエルに狙いを定め、投球モーションに入るべく腕を大きく振りかぶった。


「お待ちくださいロース様、よく見るとそこら中に石ころが浮かんで……」


「私が魔法で浮かせた、『フロート』を使ってな」


「『フロート』って……えぇぇーー!! ロース様が『フロート』!?」


 デュヴェルコードの叫声に、俺は思わず投球モーションを中断した。

 今度はそこに食いつくのかよ、この騒ぎ立てロリエルフ……!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ