表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/304

3話 魔王責務3





「今、なんて言った!?」


 さらりと飛び出したデュヴェルコードの発言に、俺はギョッと目を見開き食いついた。


「ひぃっ、怒らないでください……!

 見通しが良かったので、と申し上げました。そうですよね、正門開けっ放しでは、ダメですよね。ビクビクッ……!」


 おびえた小動物のように、頭を両手で隠すデュヴェルコード。


「いや……そこもだけど、そこじゃなくて! 『蘇生でも』の方だよ!

 エリアボスを、復活させられるのか!?」


「可能です……! それくらい余裕なので、どうか怒りをおしずめください」


「怒ってはない。驚いただけだ。

 余裕でできる事なら、なぜもっと早くに蘇生措置をとらなかったのだ?」


「同胞が次々とたれていく最中さなか、わたくしは眠るロース様のおそばにベッタリでしたので。この魔法は、現場に行かないと発動しないのです。

 それに、蘇生魔法が使えるのは、城内にわたくししか居りませんゆえに…………褒めて?」


「いや、特に褒めはしない。

 て言うか、城内で無二の魔法が、余裕扱いって」


 もう、余裕ってなんだっけ……?

 やはりこの世界の常識は、俺にとっての非常識だ……!


「そうだ! 試しに、先ほど燃やしたゴブリンを、この場で蘇生させてご覧に入れましょう。『()()()()()()()()』とも言いますし!」


 その場の思いつきか、デュヴェルコードは両手をひとつ、パンッと叩いた。


 それを言うなら、『行き当たりばったり』だろ。

 なぜ、呼吸しながら倒れる羽目に……?

 まさか蘇生直後に、ゴブリンをバッタリと倒したりしないよな……!


 デュヴェルコードはゴブリンが燃えた場所へと、片手をかざし。


「いきます。『リザレクション』……」


 優しく魔法を唱えた。すると。


「お前……今度は黄色のオッドアイが……」


 デュヴェルコードの様子を見てみると、今度は黄色のオッドアイが、淡く光り出していた。


「ロース様、もうすぐです。あの魔法陣を、ご覧になってください」


 俺は指示されるまま、ゴブリンを最後に見た場所へと視線を移してみる。すると、そこには魔法陣が出現していた。

 視界に映った魔法陣の上には、神々しい光に包まれる、燃え去ったはずのゴブリンらしき姿が。


「マジかよ。本当に蘇生とかあるのか……さすが、非常識な世界……」


 呆気あっけにとられ、俺は小さく呟く。


 次第に、光と魔法陣は薄く消えていき、地面に横たわるゴブリンだけがその場に残った。


「あれ? ここは……」


「そこの無礼者。完全燃焼した気分はいかが?」


 ぼんやりとした様子で辺りを見回すゴブリンに、デュヴェルコードは不敵な笑みを向けた。


「ぎょっ、デュヴェルコード様! それにロース様も!

 さ、先ほどは失礼致しました。もう、炎も紫もトラウマに……!

 今後は気を引き締め、魔王にこの身を捧げます。あんな熱い思いは、りです。

 では、これ以上のボロを出さぬうちに、持ち場へ戻らせていただきます!」


 完全燃焼をて心を入れ替えたのか、丁寧にお辞儀をした後、ゴブリンは城内へと走っていった。


「よ、よほど怖い火炎だったのだな。ところで、あのゴブリンの持ち場というのは?」


「ゴミの焼却炉しょうきゃくろです」


「………………持ち場、替えてやらないか?」


 城内へと駆けていくゴブリンの背中が、なんともはかなく見えた。


「しかし、凄いではないか。蘇生が可能なら、勇者を迎え撃つための、十分な戦力を揃えられるのではないか!?」


「はい…………。ですが……わたくし……もう、魔力が……」


 デュヴェルコードは力なく、その場に倒れ込んだ。


「お、おいっ! 大丈夫か!」


 俺は慌てて、倒れたデュヴェルコードの肩をすくい上げた。


「申し訳……ありません。魔法の連発で、魔力が…………。

 少し休めば、回復……心配……ありません」


 どうやらこちらも、別の意味で()()()()したらしい。


「それならいいが。だが勝手に始めたお試しで、自ら力尽きないでくれ……!」


「以後、気をつけますっ……」


 デュヴェルコードは俺の腕に身を任せ、小さな息づかいのまま笑いかけてきた。

 この調子で、うちの側近は本当に大丈夫か……?


「これもある意味……『()()()()()()()』ですね……エヘヘ……」


「………………上手くねぇよ。まんまだよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ