表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
158/304

17話 魔族増強7





 デュヴェルコードの蘇生魔法により、姿を現し始めた白衣のシルエット。

 女性らしき姿が濃くなるにつれ、反比例するようにあわい光が薄くなっていく。


「ロース様、蘇生成功です。彼女が名医にして医療エリアボスの、マッドドクトールです」


 デュヴェルコードが紹介すると共に、魔法陣が消失。

 その跡地に、大きめの白衣を羽織ったマッドドクトールの姿だけが残った。


「ここは……いったい」


 目を開けるなり、不思議そうに辺りを見回し始めたマッドドクトール。

 なんだか名医と言うより、マッド的印象の方がかなり強いな……。


 そでは指先よりも長く、歩けばすそを地面に引きりそうな、身のたけに合っていない大きな白衣を着たマッドドクトール。

 シミだらけな白衣の下には、ボロボロのシャツと破れたスカートを身にまとっている。


 不気味なオーラをただよわせる彼女からは、怪しくきたなげな雰囲気しか感じ取れない。


「あれれ……ロース様。それに側近ちゃんも。ウヒッ、ヒヒヒッ……!

 どうしてこの医院へ、おふたりが? それにウチは、確か勇者にやられて……」


 マッドドクトールは拳でコツコツとひたいを叩き、記憶を辿たど素振そぶりを見せる。

 そんなマッドドクトールに物申したいのか、デュヴェルコードが1歩前に出た。

 

「お帰りなさい、マッドドクトールさん。チンピラ勇者にやぶれたあなたを、ある事情によりわたくしが蘇生させました。

 ついでに今のロース様には、過去の記憶がありません」


「ウヒッ、ヒヒヒ。ウチを蘇生? それにロース様が記憶喪失(そうしつ)? どうして頭がポカンに?」


 マッドドクトールは不気味に笑いながら、俺たちに首をかしげてきた。


「マッドドクトールさんがチンピラ勇者にやぶれ、お亡くなりになっていた間に……以下略です」


「ウヒッ…………全然分からない、どゆこと?」


 ゾッとするほど目を大きく見開き、マッドドクトールは更に首を深くかしげた。


「他の復活者さんや帰還者さん、ついでに敵さんたちにも、散々(さんざん)同じ説明をしてきたので理解してください。

 腕も痛いし面倒臭いので、今回は説明を省略します」


「そんなっ、端折はしょらないで! ウチはその皆さんの中に、微塵みじんも入っていないでしょ、理解不能!」


「理解しようともしていない者に、詳しく説明しても時間の無駄です。いいから早くわたくしの腕を治してください」


「ちょっ……ウヒッ? これ何の横暴おうぼう? 無茶苦茶すぎ。復活ホヤホヤなのに、分からない事が凄い速さで増えていく。

 一先ひとまず側近ちゃん、一旦この医院から消えて? 扱いに困る患者はお断り理念りねんだから、ねっ? 後はロース様からいろいろとお話をうかがうから」


「凄腕の名医でも、頭はパカですね。わたくしよりも、脳筋のロース様から情報が引き出せると言いたいのですか」


 マッドドクトールを小馬鹿にするように、指で自身の側頭部をツンツンと指差すデュヴェルコード。

 この側近、言い合いに熱くなりすぎて、本人の俺が背後にいる事を忘れていないか……?


「誰が脳筋だ、デュヴェルコード。少し言葉が過ぎるぞ」


「ロッ、ロース様! 失礼致しました、背後におられた事を完全に忘れて、ツルツルとお口が滑ってしまいました!」


 途端に俺へと振り向くなり、デュヴェルコードは脱臼した片腕をプランとらしながら、90度のお辞儀をしてきた。

 力が入らないにしても、そんな片腕の扱い方をしたら逆に痛いだろ……!


「はぁ……デュヴェルコードよ。少し口を閉じていろ、私が説明する。つまりだな…………」


 俺は失態ばかりの側近にあきれながら、復活して間もないマッドドクトールに、これまでの経緯や騒動を説明した。



 そして、一通りの説明が終わり……。


「ウヒッ、ヒヒヒ……! ロース様ぁ、それはレアなご体験でしたね。記憶がないって、どんなお気持ちです? ゾクゾク? ソワソワ? それともゲロゲロ?」


 上半身をリズミカルに動かしながら、マッドドクトールが不気味な質問をしてきた。


「………………それはドクターの問診か?」


「ウヒッ、ヒヒヒ……! 単なる興味本位です。では改めまして、ウチはキメラクイーンのマッドドクトールです」


「キメラクイーン……! キメラの中でも上位種の存在か」


「そうですロース様。ウチはキメラクイーンにして、この医療エリアのボス。

 美の追求をこころざし、我が身に数多あまたの改造治療をほどこすも失敗した、魔王城一の名医です。当医院へようこそ」


 白衣の中から瞬時に数本のメスを取り出し、自身の胸に添えながら浅いお辞儀をしてきたマッドドクトール。

 失敗って、自身の体に医療ミスをするようなコイツが、本当に名医なのか……?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ