表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/304

15話 悪徳魔法5





 俺たち魔王軍に向け、弓矢を構え『マシンガンアロー』を唱えたシノ。


 威圧感のある魔法陣に加え、こちらに向いた鋭い矢先が悪寒を誘ってくる。


「まさかあんな人族に、我が駆け引きでおくれを取るとは。弱体化した上に愛槍あいそう『当たランス』を失った我に、もはや太刀打ちできるすべは……これまでか……」


「そのようね、感謝するわヴァンパイア。ハハハッ、思い通りのお膳立ぜんだてをしてくれて!」


 高らかに笑いながら、シノは構えた矢を放った。


 放たれた矢が魔法陣を通過するなり、続々と同じ軌道を描く無数の矢が出現し、こちらを目掛けて一列に連射され始める。


「まったくおろかだ……死を予告する妖精バンシーにでも、我は気に入られたのだろうか。

 今宵こよいを迎える事なく、1日に2度も命を散らす羽目になるとは。フハハ……まぁこのまま生き恥をさらすより、甘んじて死を受け入れ……」



「――『ワンサイド・ブラックホール』」


 コジルドの悲嘆ひたんを、突然レアコードの詠唱が遮った。

 するとたちまちコジルドの目前に、闇を思わせる漆黒しっこくの魔法陣が出現。


「なっ! これは!」


 コジルドの無念を裏切るように、続々と飛んでくる無数の矢を、魔法陣がブラックホールのように造作もなく吸い込んでいく。


「フフッ、失礼。助ける気なんて更々(さらさら)なかったけど、気が変わったわ。

 ねぇ()()()()()()、どうかしら? 消えた方がマシなくらい恥をかいたのに、生き残れた気分は」


 魔法陣を持続させるように手をかざしたまま、意味あり気に不敵な笑みを浮かべるレアコード。

 なんてひどいドライモンスターだ。肉体的に助けたとは言え、精神的に殺すなよ……!


 静かに空っぽの瞳をレアコードに向けるコジルドを、尻目に掛けていた最中さなか



「――ンーディオ様! 回復の度合いは!?」


 レアコードの魔法陣で死角になった勇者パーティサイドから、シノの声が聞こえてきた。


「右手は動く! マイル、回復はもういいぞ」


「ご、ごじゃりゅ!」


 向こう側の会話を聞く限り、ンーディオは動けるだけの応急処置を済ませたのだろう……。


「シノ、オメェはもう引け! 後はオレが時間を稼ぐ。気に食わねぇが、戦術的撤退(てったい)だ。

 て言うかシノ、大口叩いた割に誰ひとり倒してねぇじゃねぇか!」


「すすす、すいませんでした!」


 シノの謝罪と共に、絶え間なく飛んで来ていた矢の連射が、ピタリとんだ。


「レアコード、こちらも魔法を解いて大丈夫だろう。助かったぞ」


「そのようですね」


 俺の指示にすんなりと了承りょうしょうした様子で、レアコードはかざしていた手を下ろし魔法を解除した。

 そして魔法陣が消失するなり、死角で見えなかった勇者パーティの姿が現れる。


「もう、立ち上がれるまで回復したのか。体力までバケモノかよ……」


 見ると勇者パーティは再び集結しており、ンーディオは荒息を吐きながらも立っていた。しかし左手を負傷したままなのか、プラリと力なく下にらしている。


「ハァ、ハァッ。イマシエル、()()を出せ!」


「承知です!」


 ンーディオからの指示を受けるなり、大きなカバンをあさりだしたイマシエル。

 するとカバンの中から一振りの剣を取り出し、ンーディオへと手渡した。


 その途端、俺の背後で。


 ――ドサッ……。


 誰かが、崩れ落ちる音がした。


 音に反応し後ろを振り向くと、ギョッと目を見開いたデュヴェルコードが、地面に尻餅をついていた。


「どうした、デュヴェルコードよ」


「…………………………」


 俺の問いかけに、ダンマリのデュヴェルコード。何やらモゴモゴと口を動かし、指を差しながらアピールしてくる。

 まさか、待っているのか? 喋ってもいい許しを……!

 俺はただ、大人しくしてくれと言っただけなのに……。


「静かだと思えば……いいぞ、発言を許可する」


「ロース様っ!! あれはっ、あれはっ!!」


 しばらく黙っていた反動なのか、デュヴェルコードは溜まりに溜まった声量で叫んできた。


「ちょっ、声量……! あれはって、ンーディオの持つ剣を知っているのか?」


「あれは、あの剣は………………ま、魔剣……!」


「はぇっ!? 魔剣!? 勇者がっ!?」


 勇者が持つには不相応ふそうおうすぎる武器に、俺は驚きを隠せなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ