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15話 悪徳魔法2





「――魔王ロース! 正義の名の下に、私がお前を射抜いぬく!」


 倒れたンーディオや他のパーティメンバーを背後に置き、堂々としたたたずまいで叫んできたシノ。

 ンーディオを負傷させた事への怒りからか、真っ直ぐ俺を睨みつけてくる。


「罪もないドラゴンを無闇に斬りつけておきながら、何が正義だ」


「そうですよ、ご自分の名前が長くて言い難いからって、()()を名乗るなんて」


 俺に便乗するように、デュヴェルコードはシノへ筋違いな言い返しをする。


「デュヴェルコードよ、少し黙っていろ。多分その言い分は違うぞ」


「失礼致しました。ではお口に麻痺まひ魔法の『パラライズ』でも掛けて、静かにしておきます」


 それって……その魔法ひとつで会話はおろか、他の魔法も解除の詠唱えいしょうもできなくなるんじゃ……!


「それは止めてくれ、二次被害のニオイしかしないぞ。頼むから、大人しく普通に立っていてくれ」


 困り果てた俺の表情を読み取ったのか、デュヴェルコードは何も言わずにコクリとうなずいた。


 デュヴェルコードが大人しくなったところで、俺は再びシノへと視線を向け直す。


「それで? お前たちのうやまう勇者殿の具合はどうなんだ? さすがのンーディオも、私の一撃は骨身に染みただろ」


 俺は敵の様子が気になり、シノに余裕をよそおいながら探りを入れる。


「何なのよ、そのネチョっこい嫌味な言い方! ふざけんじゃないわよ!

 ンーディオ様にあんな刺激を与えておいて、無事なわけがないじゃない! 今マイルが全力で回復中よ!」


「なるほど、そこそこ大ダメージのようだな」


「調子に乗るんじゃないわよ、当たり前でしょ! ンーディオ様のあんなアヘった顔、初めて見たわよ!

 余裕もなくハヒって助けをうお姿を前にして、私がどれだけ心を痛めた事か!」

 

 顔を真っ赤に染め、俺へと怒声を飛ばしてくるシノ。

 相変わらず、下品で残念な表現だな。キレイな顔なのに、もう少し上品に話せないのか……?


「おいゴラッ、シノ! 誰がそんな情けねぇ助けを求めたって!?

 オレはまだヒヨってねぇぞ!」


 ンーディオは倒れたまま、シノを睨みつけるように素早く首を振り向かせてきた。


「な、何度もすいません! しかし両腕のいたる骨々を骨折し、大火傷おおやけどった状態で無理はなさらないで……。私がンーディオ様に代わり、あのクソ魔王を倒してきます!」


 シノはンーディオたちを背後に置いたまま、白いローブをなびかせ1歩前に出る。


「勇者の右腕とは言え、このメンツを前にして、お前ひとりで私を倒せると?」


「フンッ。騎士にはね、やらねばならない時があるのよ。それが今……ンーディオ様が負傷中の今こそ、勇者の右腕である私がやらねばならないのよ。やり放題なのよ……!

 怒りに満ち満ちた今の私は、片腕魔王なんかよりはるかに強いわ」


「変な表現が含まれていた気もするが……虚勢きょせいを張っているようにしか思えないぞ。こちらの錚々(そうそう)たるメンツを前にして、行き過ぎた宣言だな」


 シノは余程よほどの自信があるのか、俺がダメ出しをするなり胸の前で腕を組み、嘲笑あざわらうかのように不適な笑みを浮かべた。

 そして透かさず、俺に向け真っ直ぐ指を差してきた。


「お前みたいな脳筋じゃあるまいし、無策なわけがないでしょ……!」


「脳筋ではないにしろ、残念な女だとは思うぞ」


「………………う、うるさいっ! よく聞け卑劣ひれつ魔王、私と一対一で戦え!」


 不適な笑みを浮かべていたシノの表情は一変し、顔を真っ赤に染めながらヤケクソ気味に弓矢を構えた。


「はっ? 一対一だと?」


「そうよ! まさか魔王ともあろう者が怖気おじけ付いたの?

 今のお前となら、間違えなく私に勝機があるわ! 卑劣ひれつ魔王なんかに、勝利の女神は微笑ほほえまない!」


 シノはグッと胸を張り、更に矢を力強く引いた。

 俺の知る限り、女神に良い印象がないため、むしろ微笑ほほえんでほしくないんだが……!


「いや、その勝機は間違えようがないだろ。こちらは片腕が再生途中な上に、明らかに不利な距離を保たれているのだぞ。いったいどっちが卑劣ひれつだ。

 そんなアンフェアな戦闘に、私がミスミス応じる訳がないだろ」


 俺は再生途中の右腕を左手で触りながら、冷静にシノへ言い返す。


 だが、そんな時……。


「フハハッ! ロース様、ここは我にお任せを! あんな性根しょうねくさった変態キューピットなど、我の愛槍あいそうでひと突きですぞ!」


 この中で最も場をき乱しそうなコジルドが、特製サンシェードを構えたまま、俺の隣に移動して来た。




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