14話 新技炸裂5
勇者パーティの再来により、正門前の広場に集結した俺たち魔王軍。
「役者は揃った。お前こそ覚悟しておけよ、ンーディオ!」
俺はデュヴェルコードたち3人を背後に置き、ンーディオへと体勢を向け直した。
「チンタラと待たせすぎだ、魔王ロース。ラスボス狩りくらい、とっとと始めさせろ」
「いつまでも口の減らない勇者だ……! お前には、同胞の死を償ってもらう。私の手で罪滅ぼしさせてやるからな!」
「ハハッ! 滅びるのはテメェだ魔王。罪と魔族は、滅ぼすためにあるんだからな!」
こちらを挑発するように、だらしなく舌を出してきたンーディオ。
その言い分だと……つまり罪を償ってくれるのか?
「そう簡単に、今の魔族を滅ぼせると思うなよ……!」
「おいおいっ、その根拠のない自信は、どっから来るんだよ」
「根拠ならあるさ。以前にも忠告したはずだ、私には上級魔法が控えているとな」
俺は堂々と両腕を組み、前回の別れ際に放った嘘の情報を口にした。
尤も、今となっては概ね嘘ではなくなったが……!
しかしンーディオは臆する様子も見せず、逆に不敵な笑みを浮かべてきた。
「あぁ、それか……。その事だけどよぉ、あれから根城に戻って、じっくりと虚実を考えてみたんだ」
「アハハッ! ンーディオ様、根城では悪党みたいですよ。そこはギルドって言わないと」
ンーディオの隣で、笑い声と共に指摘を入れてきた、ドッペルゲンガーのイマシエル。
相変わらず顔のパーツが何もないため、笑い声が聞こえても笑っているのかすら分からない。不気味だし、誰の顔でもいいから変装して欲しいのだが……。
「ハハッ! そうだ、ギルドだな。そのギルドで考えてみたんだ。テメェの口にした上級魔法が、いったい何なのか……。ついでにその攻略や対策も、じっくりとな。
そして攻略を目論んだ結果、オレが行き着いた答えは……!」
「…………あのニヤつきは」
ンーディオの推察を最後まで聞く前に、俺はンーディオの思惑に勘付いた。
そして瞬時に、頭の中で即席の作戦を立て……。
「――デュヴェルコード、レアコード、その場で静かに聞け。私に考えがある」
ンーディオに悟られないよう、目線を敵陣から逸らす事なく、デュヴェルコードとレアコードの両名に聞き耳を立てるよう囁いた。
「「はい……」」
「いいか、ンーディオが聖剣を構えたら…………」
俺は静かに、そして手短に作戦をふたりに伝えた。
そんな俺たちの密かに行った作戦会議に気付く様子もなく、ンーディオはニヤついた表情で話を続ける。
「ハハッ! オレが行き着いた答え、それはシンプルなベストアンサーだ。
テメェみたいな脳筋がどう足掻いたって、上級魔法なんて使える訳がねぇんだ……!」
「つまり、何が言いたい。私が虚勢でも張ったと言う事か?」
「珍しく読み込みが良いじゃねぇか。まぁ当然か、オレを出し抜こうと下らねぇハッタリをカマした、張本人なんだからよ!」
ンーディオは担いでいた聖剣を肩から下ろし、グリップを両手で持ち直した。
そして……。
「ハッタリ頼りの情けねぇ魔王に、初めから警戒なんて必要なかった。それがオレの行き着いた、ベストアンサーだ。
警戒する必要がねぇ今……オレが取る戦法は、豪快の一択だ……!」
ンーディオは姿勢を低くし、腰の横に聖剣を構えた。
この構えは、以前も目にした事がある。となると、次にンーディオの打ってくる手は、恐らくド派手な剣技。
俺が上級魔法を使えないと見込み、圧倒的な火力差で勝利を収めようと目論むはず。
傲慢で野生的なチンピラが、いかにも取りそうな戦法だ。
しかし俺は、この展開を待っていた……!
「デュヴェルコード、レアコード! 今だっ、やれ!」
「は、はい!」
「フフッ、ご武運を」
俺はふたりに合図を出し、素早く身構えた。
――今やそのハッタリが、ハッタリでない事を教えてやるからな、ンーディオ……!