表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/304

13話 以心伝心7





 プルプルと怯えた様子で、デストローガンへと両手をかざしたテー。


「すいません、すいません……。殴られませんように、殴られませんように……」


「おいっ、テーよ。お前の事は殴ったりしないから落ち着け。やる前からこんなに震えて、大丈夫か?」


 俺は未だに信じ切れない。

 本当にここまで気弱でか弱いテーが、デストローガンを操れるのだろうか?

 デュヴェルコードが言うには、テーは手綱たずなを握ると性格が変わるらしいが……。

 手綱を握るだけで、このナヨナヨのテーがオラオラ狂変きょうへんできるのか……!?


「頑張れよテー! 四天王の名にけて!」


「目が泳いでいるぞ、テー! お前そーゆーとこあるよな!」


「いつも通りやれば、きっと大丈夫だテー! 知らんけど!」


 デストローガンに両手を構えるテーに向け、口々にエールとプレッシャーを放っていくマー、ボー、ドー。


「みんな、暖かく心強い声援をありがとう。すいません……」


 とても心強い声援を浴びているとは思えない、気弱な様子のテー。

 暖かい声援をもらった自覚がある時くらい、無闇に謝ったりするなよ……!


「そ、それでは……魔法でりゅう操作用の手綱を生成します。『トゥレメンダス・マニピュレイト・ドラゴン』」


 テーが魔法を詠唱した途端、デストローガンの頭上に魔法陣が出現。

 するとしばらくして、長い首筋を辿たどるように、金色の美しい魔法の手綱が、デストローガンの背中へと伸びていった。


「美しい手綱だな……真っ赤なボディとあいまって、更に貫禄かんろくが増したな」


「真っ赤なボディに、ゴールドのライン。確かに存在感を引き立てる、威圧的なカラーバリエーションですね」


 いつの間にか俺の隣に立ち、デストローガンの様子を見届けていたデュヴェルコード。


「お前もそう思うか、デュヴェルコードよ」


「思いますとも、この威圧感…………そうだ! ロース様も金色の手綱など、お着けになられては? 迫力が出るかもしれませんよ!」


「…………絶対ダメだろ。見た目以前に、魔王が着けたら1番おかしいアイテムだろ」


 俺は()()()()()()デュヴェルコードを尻目にかけながら、再び詠唱者のテーへと視線を戻してみた。


「どうだ、テーよ。様子は?」


「…………はい、ちょうど準備が整ったところです」


 報告を終えるなり、テーはトボトボと歩き始め。


「…………高い、怖い」


 デストローガンの背中へと、4本足で器用に登って行った。

 巨大な背中まで登り詰めたテーは、翼の根元付近にチョコンと座り込む。


「いよいよか。このドラゴンを操る事ができるのなら、勇者ンーディオを迎えつのに、申し分ない戦力になるな」


「えっ! ロース様が期待なさっているとこ、そこですか!?」


 突然俺の横で、大声を上げ目を見開いたデュヴェルコード。


「『そこですか』って……。なら他に、どんな期待を持てと言うのだ」


「決まっていますよ、それは……」


 デュヴェルコードが何かを言いかけた、その時。


「「「オウッ、オウゥゥーーン! ロース様!」」」


 テー以外の四天王が、謎に遠吠えを上げてきた。


「なんだ! ビックリするだろ」


「ロース様、テーが手綱を握ります!」


 テーに向け指を差し、注目するよううながしてくるマー。

 俺はデュヴェルコードの返答を聞きそびれたまま、誘導されるようにテーの方を向く。


 すると間もなくして、テーは金色の手綱を両手で掴んだ。


「手綱を持ちましたね。ここからテーの性格が変わりますよ、ロース様」


「そうか。しかし……なんの動きも見せないな。本当にあれで……」


 テーに注目しつつ、デュヴェルコードと話していた。

 次の瞬間。


「――はあぁぁぁぁ…………」


 デストローガンの背中にまたがるテーから、凄まじく弱々しいため息が聞こえてきた。

 次第にテーの背筋せすじが、前屈まえかがみに小さく小さく丸まっていく。


「…………もうダメです。怖い、怖い……怖い怖い怖い怖い、怖いぃーー」


 ガタガタと体を震わせ、恐怖の一択を口走るテー。

 気づけばテーの背筋せすじは、見た事もない角度で丸まっていた。


「えっ? なんだ、あの直角に近い猫背ねこぜは……!」


「怒られた、叱られた、にくまれた……。僕なんかが猫背で、申し訳ありません……すいません、すいません、すいません……」


 デストローガンの背中で、正座に切り替え土下座を始めたテー。


「どうしたんだテーよ! 手綱を握ると、性格が変わるのではなかったのか!?」


「すいません、すいません。僕みたいな底辺がロース様と口をきいてしまい、すいません、すいません……。

 底辺(ごと)きが、皆様より高い位置に存在してしまい、すいません、すいません……」


 依然として直角猫背をキープしたまま、テーは土下座を続ける。

 まさか俺は、言葉の意味を勘違いしていたのか……?


 ――手綱を握ると、性格が変わる。


 俺はこの言葉を聞いて、勝手にオラオラ狂変きょうへんするものだと思い込んでいた。よくあるパターンだと、まどわされていた。


 しかし俺の予想とは裏腹に、テーは斜め上の変貌へんぼうげてしまった。


 目の前にいるテーを見る限り、確かに性格は変わっている。変わっているのだが。

 先ほどまでのナヨナヨとした雰囲気から一変し、今のテーは……!


大腐おおぐさり、沈痛ちんつう根暗ねくら狼になりやがった……」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ