12話 四強帰還4
俺に向け次々と声をかけてくる、正門前の4人組。
「デュヴェルコードよ、あれが例の四天王か?」
俺は開放した大扉の前で歩みを止め、デュヴェルコードに問いかける。
すると流れに沿うように、デュヴェルコードも俺の隣で立ち止まった。
「おっしゃる通り、あれが先ほどご説明した、獣人族の四天王です」
正門前に立ち並んだ4人組の正体を認知するなり、俺は改めて四天王を見渡す。
「2本足で立っているが、見た目は狼そのものだな。
身長は……お前と同じくらいか? 想像していたよりも、少し小柄だな。あと……」
「あと、なんですか?」
「いや、見た目は4人ともそっくりなのだが……。端にいるひとりだけ、少し雰囲気が違うな」
堂々と胸を張る3人の隅で、ひとりだけモジモジと自信なさげな佇まいの獣人がいた。
「あの獣人は……恐らくいつも通りなので大丈夫です」
「なら良いのだが、似ていても性格は様々と言う事だな。『十人十色』みたいなものか」
「ぷふっ。ロース様、ご冗談を。今のは間抜けていて、少し可愛かったです」
「ん? なんの事だ?」
「どう見積もっても、四天王は4人しかおりませんよ。不意打ちのおパカ発言ですか?」
片手で口元を隠し、ニヤついた上目遣いで俺を見てくるデュヴェルコード。
まさかこの子、『十人十色』を物理的に解釈しているのか……?
「………………人それぞれと言う、ただの例えなんだが」
「えぇ……分かり難い例えって、こんなに面倒くさいのですね。………………すいません、独り言です」
デュヴェルコードは途端に冷め切った顔つきになり、四天王の方へと向き直った。
「独り言にしては、しっかりとしたボリュームだったぞ……!
それより、駆けつけたのは私たちだけか? パレードはどうした?」
「恐らく放送者が、今でもパカみたいにロース様のお返事を待っているのです。パレードの件は放っておきましょう」
「そうか。なら私たちだけで、四天王を出迎えてやるとしよう。話も聞きたいしな」
俺たちは再び、正門へと向かい横並びで歩き出す。
そして四天王の手前で、俺たちは同時に歩みを止めた。
「お久しぶりです、四天王の獣たち。それで? あなたたちは何をして、何をしに帰還したのですか?」
歩みを止めるなり、真っ先に口を開いたのはデュヴェルコードだった。
「酷いですよデュヴェルコード様! せっかく元気に帰って来たのに! ドライ!」
「そうですよ、そうですよ! デュヴェルコード様って、そーゆーとこありますよね!」
「そうそう! 昔から僕たちに冷たいですよね! 知らんけど!」
端にいる自信なさげなひとりを除き、次々とデュヴェルコードに論破していく四天王。
「まぁ待て。帰還して早々、言い合うのも風通しが悪い。
まずは『よく戻った』と言わせてもらおう」
俺は険悪な雰囲気にならないよう、直ちに場の沈静化を試みる。
すると四天王は、すぐさま気をつけの姿勢を取り。
「これは失礼しました!」
「ロース様、優しい!」
「ロース様、あったかいですね!」
「…………です」
各々に、俺へと気持ちを伝えてきた。
だが、そんな矢先に……!
「あれ……?」
端にいる自信なさげなひとりが、突然俺へと顔を突き出してきた。
――クンクンッ……!
「なんだか、ロース様の匂いが……違う……」
匂いを嗅ぐ仕草を取るなり、俺の心臓をザワつかせるような、意味深な告発をしてきた。




