表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/304

12話 四強帰還2





『――繰り返します。報連相! 報連相!

 ただいまー。正門に、魔王軍の誇る屈強くっきょうな魔族集団、『四天王』の皆様がお戻りになりました!

 これより正門にて、ご帰還きかんしゅくしたパレードを実施したいと思いますが、いかがでしょう? 冷やかし目的ではありませんので、手の空いている者は正門にお集まりください』


 例によって寝室に流れた、緊張感のない放送。


「だそうです、ロース様」


「だそうですって……。今回の放送も、中々ふざけてるな……!

 スピーカーの向こうにいる者は、本当に『報連相』の自覚があるのか?」


 放送で相談を持ちかけられても、こちらからは返答の仕様がないんだが……!


「少なくとも、助言をもらう気はなさそうですね」


「だよな、そう思うよな……!

 それに『ただいまー』って、『只今』だろ。軽い挨拶じみたトーンで報告してきたが、まさか帰還した本人たちが放送していないよな?」


「それは……さすがにないと思われます。自分たちの帰還を自ら祝してパレードをもよおすような、痛い魔族はおりませんので」


 至極当然のように、俺へと返答してくるデュヴェルコード。


 自作自演する痛い魔族なら、身近にいるだろ。まるで痛いのお手本と呼べる、とびきりピッタリな実例、コジルドが……!

 まさか、コジルドを魔族扱いしていないって魂胆こんたんじゃないよな……?


「何度も頼んですまないが、また放送を変えるように指示しておいてくれ。

 ちゃんとマジメなテイストでなっ……!」


「かしこまりました。ところで、これから正門へ向かわれますか?

 四天王の帰還が本当でしたら、パレードはともかくとして、ねぎらいのお言葉などをお掛けになられたら、きっと喜びますよ」


「そうだな……。私にとっては事情も素性も分からない、情報皆無(かいむ)な存在だ。四天王と呼ばれる者たちを見てみたい。もしかすると、手薄な魔王城の即戦力になるかもしれないしな!

 デュヴェルコードよ、歩いて正門へ向かうぞ。歩く道中、その四天王についての情報を聞かせてくれ」


「承知致しました。まず四天王とは、4名の獣人じゅうじん族からなる、狼獣人の集団で……」


 その場に立ち止まったまま、突然説明を始める型破りなロリエルフ。


「デュヴェルコードよ。『まず四天王とは』の前に、()()は正門に向かおうか……!」


 指示をフル無視した説明をさえぎるように、俺はデュヴェルコードの小さな手を取り、寝室のドアへと歩き出した。


「ドキッ……! まさか、これは愛の逃避行とうひこうですか!?

 ロース様のお導きでしたら、わたくしはどこへでも着いて行きます!」


 俺の背後から、デュヴェルコードの上擦うわずった声が聞こえてくる。

 いらん事を言うな、これはただの催促さいそくだ……!


「なら一先(ひとま)ず、正門へ着いて来い……!」


 俺は寝室のドアを開けて外へ出るなり、デュヴェルコードの手を引き、俺の隣を歩くよう誘導した。


「それで、四天王とはどんな者たちだ?」


「はい。四天王は4名のおおかみ系獣人族からなる、魔王軍の戦闘員です。

 ここしばらくの間は、昏睡前のロース様がめいじられていた別任務により、魔王城を離れておりました」


 俺の横を歩きながら、スラスラと答えていくデュヴェルコード。


「そうだったのか。推察するに、ンーディオが魔王城を完全攻略に追い込んだ最中さなかにも、その四天王が不在だったという事か?」


「おっしゃる通りです。ロース様の昏睡に加え、四天王不在と言うタイミングで、チンピラ勇者が猛攻もうこうを仕掛けて来ました」


「やはりか……。私の昏睡中と言い、四天王の不在と言い、つくづくンーディオは狙ったように魔王城を攻めに来ていたのだな……!」


 ――なんだか、同情が芽生えてくる。


 四天王などと、大それた通り名で呼ばれる者たちだ。きっとエリアボスやデュヴェルコードに匹敵する程の戦闘力を持っているはず。

 そんな猛者もさ集団が、勇者パーティとの奮闘中に不在だったとなると……。城に残っていた魔族からすれば、かなりの痛手いたでだったに違いない。


 城に残り奮闘した者たちは、さぞない気持ちだっただろうに……!



「――まぁ、四天王が魔王城にいたとしても、結果は変わらなかったでしょうが」


 推察にふけていた矢先に、デュヴェルコードが気になる事をささやいてきた。


「はぇっ? お前、今なんて!?」


 そんな不安をあおるような小言に、俺は思わずデュヴェルコードへと視線を移す。


「四天王がいたところで、どの道魔王城は完全攻略されていましたよ。

 だって名ばかりで、そこまで期待を持てるほど強くもありませんから」


 更に不安を煽るようなデュヴェルコードの告発に、俺は戸惑いながら歩みを止めた。


 俺がまだ日本にいた頃、アニメやゲームで四天王と言う通り名は、何度も耳にしてきた。

 名に恥じず、ほこらしい強さを持つ四強といった、猛者もさ集団のイメージを持っていた。


 そんな四天王が、この魔王城では……。


「な、名前負けする……弱者なのか……!?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ