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2話 転生事変4





 目を開けると俺は、正門の前に移動していた。


「ロース様、テレポート完了です」


 俺は視線を下げ、未だ胸元に張りつく笑顔のデュヴェルコードと、目を合わせる。

 どうやら俺たちは、先ほどの部屋から瞬間移動してきたらしい。


「便利だな、魔法というヤツは……」


 前世での常識を超えた能力に、俺は関心していた。

 だが同時に、ムカムカする感覚が……。胸から込み上げて……!


「ロース様とのドライブだったからでしょうか? この距離が、一瞬に感じられました」


 それは瞬間移動だからと、ツッコミを入れたかったが……。

 込み上がるムカムカにえきれず、俺はデュヴェルコードを強引に引き剥がし。


「――おぅえええぇぇぇ……!」


 前屈まえかがみになり、激しく嘔吐えずいた。

 味わった事のない瞬間移動という感覚に、吐き気をもよおしたようだ。


 しかし……。


「――おぅえええぇぇぇ……?」


 目覚めて間もないため、お腹が空いていたのか……。口からは、何も出なかった……。


「き、気持ち悪っ……!」


「それっ、わたくしがですか!? そこまで気持ち悪い発言でした!?」


「いや……違うから、少し黙って……」


 俺は前屈みのまま顔を上げ、デュヴェルコードの肩に手を添えた。


「ご不快なところ申し訳ありませんが、ロース様。急ぎましょう。

 勇者の右腕が、同胞のゴブリンを連れ去ろうとしています!」


 何かを引き摺り歩く、白いローブの後ろ姿に向け、指を差すデュヴェルコード。


「あれはゴブリンだったのか。無抵抗な様子からして、気絶しているようだな。

 とにかく、勇者の右腕と対話を」


 俺は体勢を戻し、声の届く距離まで歩みを寄せ立ち止まった。


「勇者の右腕とやら、止まれ! そしてその手を離し、私の部下を返してもらおう!」


「…………その忌々(いまいま)しい声は……!」


 勇者の右腕は立ち止まり、こちらにゆっくりと振り返った。

 白いローブに身を包んだ、その正体は……。


「お、女っ!?」


「げっ! やっぱり魔王!」


 正体は、人間の女性だった。

 勇者の右腕と言う、俺が持っていたイメージとは裏腹に、戦士離れした絶世の美女。

 本当にこんなキレイな女性が、単身で乗り込んだというのか……?


「まさか、魔王が目覚めていたとは……!

 どおりで朝から、股下またしたがソワつくわけだわ。とんだ日に、ひとりで乗り込んだようね」


 内股で頭を抱える、下品な美女。

 他人ひとの目覚めを、どこで勘づいてんだ……!


 それより、今は平和的解決を。

 俺も元は人間だ。相手が人間なら、話し合える見込みがあるかもしれない。


「お前の股下事情など知らぬが……ここはお互い、手を引かないか?

 まずはそのゴブリンから手を離し、私の話を……」


 穏便おんびんに話をしようと、俺は足を1歩踏み出した。その時……。


「寄るなっ!」


 勇者の右腕はゴブリンから手を離し、担いでいた弓を素早く構えた。

 半身はんみで1本の矢を引き、矢先を俺に向け。


「ちょっ、おまっ……!」


「ロース様! ガードを!」


 デュヴェルコードの警告と同時に……。

 勇者の右腕は、俺を狙い矢を放った!



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