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いや、無理でしょう  作者: 御重スミヲ
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8、再教育


 十歳頃の男の子なんて生意気に決まってる。

 でも、そこは育ちのいい王子様。

 悪さをするといっても高が知れてる。

 いちばんはストレスが溜まってたんだろうな。

 私は、彼が靴を脱いで小川に入ろうが、木登りしようが、泥を捏ねようが叱らなかった。

 それを人に投げつけてきたら、避けて即やりかえしたけど。

 だいたいどれも子供なら当たり前にやることよ?

 大きな怪我をしないように見守りこそすれ、何でもかんでも止めようとする侍従には国王陛下の書付をぺランとね。

 第二王子の私に対する所業を盾に、宰相たる我が父が捥ぎ取ったもの。

 つまりこの一月の間、王子の行動にかんして私の意見が誰のものより強く、そのことは王家が保証する。

 まあ、大怪我させたり生き死ににかかわるようなことになれば、簡単に反故にされるだろうけど。

 もうね、我が公爵領に移動するだけで一騒動だった。

 何かあったら大変なのは、公爵令嬢である私以上。

 もしかすれば次期国王なわけだから、当たり前といえば当たり前なんだけど。

 轡を並べて整然と進む近衛騎士は、純粋に格好良かった。

 「なぜ、私がそんな田舎になど行かねばならんのだ」っていちばん渋ってたのは殿下だけど、その間は勉強しなくていいって言ったら途端に乗り気に。

 だいたいデザイヤノート公爵領はすぐ隣で、もちろん田舎なわけもない。

 領都周辺と商業地区以外が農地や森なのは、王家直轄地も変わりがないし。

 王子と私は晴れの日は外で、雨が降れば室内で毎日遊び倒した。

 「お前、面白いやつだったんだな」って、男の子なんてほんと単純。

 でも、憎まれ口をきくでもなくにこにこしてるのを見れば、こちらもほっこりする。

 子供はこうでなくちゃね。

 いつも青白い顔で、神経質そうに眉根を寄せてるなんて異常事態だ。

 私は、ピンク色のほっぺたを眺めて一人悦に入る。

 動けばお腹も空くからね。

 よく食べ、よく遊び、よく眠る。

 だからといって私の中身は大人。

 農家に鍛冶屋、窯元、商店、漁師に猟師、遊びの延長で社会科見学も織り交ぜる。

 もともと馬鹿ではなかったみたいで、なかなか鋭い質問をしたり、手ずから不格好な器を作って喜ぶ王子。

 一月なんて、あっという間に過ぎた。



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