6、保育3
公爵家の屋敷だ。それはもう馬鹿みたいに広い。空いてる部屋なんていくらでもある。
個人的には中央らへんの部屋がいいと思ったんだけど。
そうすれば仕事合間にちょくちょく子供の顔を見に行けるでしょ。
なのにクレームが入った。子供の泣き声がうるさいって。
何を言うか、子供は泣くのが仕事でしょうに!
でもまあ、文句付けたのがうちの両親らしいので、養われてる身としては身を引きますよ、ええ、すごすごと。
そんな訳で育児室は、私専用の音楽室の隣にお引越し。
はじめ私のピアノは、中庭に面した風通しのいい部屋にあった。
ただ、私の腕前があまりにアレなもんで、屋敷の端っこに追いやられたってわけ。
いいもんね。代わりにママさんたちの休憩時間を長くさせたから。
彼女たちは、給料が以前の半分になってもいいからって復帰してくれた人たち。
もともとこのデザイヤノート公爵家に勤めていて、結婚や出産を機に辞めた人たちに、メイド頭から声を掛けてもらった。
子供は確かに可愛いけど家にこもってばかりいると気が滅入るし、なにより姑と顔をつき合わせてるのがつらいって母親同士、意気投合してたよ。
子供の内訳は乳児が二人、三歳児、五歳児、六歳児がそれぞれ一人。
基本、母親たちがローテーションで子供たちの面倒を見て、その他の女性陣が最低一人はフォローに入るかたち。
特に乳児を抱えるママさんは、どちらか一人いればおっぱいを分けてあげることができるから、互いにうまく時間を融通し合ってる。
給料含めてどんどん待遇改善していきたいところだけど、なにぶんいまは手探り状態。
子供の声にかんするクレームはなくなったけど、今度は私がピアノの練習をすると子供たちが泣くという問題が。
耐えろ、子供たちよ。
もうすぐ上手くなる予定だからね。
そうしたら一緒に歌でも歌おう。
ちなみに公爵家の敷地には別館もいくつかあるんだけど、そっちは別の家族が住んでいる。
公爵家ともなるといろいろあるんだな。