4、保育1
ユリアに結婚話が持ち上がった。
相手は男爵家の三男で、すでに独立し騎士団に所属してる。
真面目な性格で浮気なんてしなさそう。見目も悪くない。
なのに浮かない顔のユリア。
よくよく話を聞いたら、雇い主つまりうちの父親経由の話だから断れない。
別に相手がどうこうじゃなくて、仕事を辞めなきゃならないのが嫌なんだって。
涙ながらに「お嬢様と離れたくないんです」って、ありがたい話じゃないですか。
とことん私を甘やかしてくれる彼女がいたから、イザベラは寂しい子供時代を過ごさずに済んだ。
教育的な面からしたらどうだなんて無粋なことは言うまい。
所詮は使用人。お嬢様に意見なんてできるわけがない。
でもさ。
結婚や育児ばかりが幸せとは言わないけど、この時代背景だと独身女性は生きづらそうだ。
家庭教師もぽろっとこぼしてたけど、世間や身内からの風当たりが強いのもあるけど、とにかく女性の就ける職が少ない。社会保障なんてもちろんない。
私としては、結婚しても勤め続けてくれたらいいと思うんだけど。
彼女が言うには、旦那さんの理解があっても結局、子供ができたら辞めざるを得ない。
子育て終了後の復帰を勧めても、それでは十五年からブランクがあり、その頃にはお嬢様はどこか良いところに嫁いでいるから、キャリアを積めてない自分が仕えられるわけがないって泣くのだ。
認識の違いに唖然。
私はまず、一年の産休を勧めた。
体調にもよるけど、出産予定日の一月半前~産後二月までは絶対休んでもらわなきゃならない。
あとは要相談だね。
幸い産婆と治癒魔法師の二人体制で臨めば、かなり安全に出産できるらしい。
治癒魔法の効果で産後の肥立ちもいいらしいよ。
ただ特に腕のいい治癒魔法師は教会が囲い込んでて、貴族でもなければなかなか呼べないんだとか。
そこはせっかくの公爵家。地位をひけらかし、貨幣で殴って呼んでもらおう、我が父に。