3、家庭教師
ユリアに都合を尋ねに行かせた後、家庭教師の部屋を訪ねた。
公爵令嬢としては、家庭教師ごときこちらに呼び付けるのが当たり前なんだろうけど、私には先生は敬うべきだって思いがある。
これまでの態度を謝罪した後、授業を午前中にしてもらえないかとお願いしたら、快く承諾してくれた。
雇われの身で身分的にもこちらに逆らえないとはいえ、早速、今日から対応してくれるのがありがたい。
住み込みの家庭教師はたいてい下位貴族の二女三女か、没落貴族の令嬢だ。
彼女たちが教えるのは算数、国語、歴史、音楽、絵画、そしてマナー。
自分たちが教わってきたことを教えるわけだけど、そのレベルはピンからキリまで。
さすがは公爵家に雇われるだけあって、貴族学院を次席で卒業したとか父親が言ってた記憶が薄っすらと。
せっかくのマンツーマン。ただ受け身でいるのもなんだ。これまでサボッてた分も取り戻さないとならないし。
私はすでにできることはできるとアピールし、疑問に思ったことをどしどし質問。
算数はもう教えることがないって言われた。まあ、簡単な足し算引き算ができればいいらしいから、すでに分数の掛け算すらあやしい身としては一安心。
読み書きもこの年齢であれば特に問題はなく、これからの課題としては語彙力を増やすことと、貴族的な言い回しを手紙などの実践形式で学ぶことに。
歴史は果てない感じだ。どうやらこの先生、歴女らしい。話を聞くほどに面白いからいいんだけど。
音楽はピアノを習えるのがうれしい。習い事はお金の掛かるものだったからねぇ。憧れだったんだ。
絵画は配色は褒められたよ。
マナー講座も苦ではない。日々自分の立ち居振る舞いが美しくなっていくのがわかるし。
せっかく美少女に生まれ変わったんだから、それをより完璧に近付けようって意欲が湧いてくる。
そして、うれし恥ずかしの魔法なんだけど、十一歳の誕生日に素質をみて、習うのはそれからなんだって。
あと九か月か……遠いなぁ。