15、お任せ
邪道だとか伝統がとか賛否両論ある中で、たった一人だけど、魔法省の若手研究者が魔素の取り込みに成功した。
なんとか体内を循環せ、放出された魔法がしょぼくてもいい!
でなきゃ私がモルモットにされてたもの。
おかげさまで第二王子の「教えてくれ」攻撃も、「あちらの方が専門家ですから」ってかわせるし。
赤と緑のおじいちゃまたちは、私が既存の魔法を学ぶことで、せっかくの新しい魔法へのアプローチができなくなるんじゃないかって心配してたけど、いや大丈夫でしょう。
あんなふうに歌ったり踊ったり恥ずかしくてとてもできないから。
外から力を取り込むとか無詠唱とか、私が思うよりずっとすごいことだったらしくて、なんと王家から褒美が出るそうだ。
何がいいか訊かれたので、まだデビュー前だし謁見なんかはいいんで、自壊しちゃった魔法判定器の部品を一揃いもらえませんかね?って父親を通してお願いしたら、あっさりもらえた。
魔法省が散々いじくりまわしたこんなゴミでいいのか?って再三確認されたらしいけど、いいのよ。単なるミーハーだから。
そもそも私はメカ音痴。完成品だろうと部品だろうと見てもいじくっても何もわかりゃしない。
じつはちょっとは期待してたけど、やっぱりわからなかった。
チートとやらはないらしいよ。
でも、人間長く生きると多少なりとも手抜きを覚える。
折しも風邪を引いたので、わがままお嬢様は大騒ぎして治癒魔法師を呼んでもらった。
ちなみに魔法判定器で見た彼らのオーラは虹色だそうだ。
光魔法は白、闇魔法は黒。でも、この二つの属性については数百年前に存在したって記録があるだけで、いまはいないらしいよ。
だいたい「精霊よ」って言ってるのに誰も精霊を信じてないし、治癒魔法に至っては神聖魔法って分類で神の領域なんだって。宗教臭プンプン。
それでも確かに傷も病気も治る。
魔法師の力量次第で治しきれないことも多々あるみたいだけど、今回は「一番のを!」って指定したからね。
万全を期して体内に仕込むなんて度胸はないので、いちばん大きな部品、レンズ部分は髪の毛の中、リング状の金具は腕に嵌めて寝巻の袖で隠し、二つに割れた柄の部分はそれぞれ脇に挟んで、丸ネジは左手、透明のビー玉みたいな塊は右手で握り込んだ。
さあ来い、治癒魔法!
人の周りを右に三周、左に三周、手を翳し「彼のものを癒し給え」……まともに思えるから不思議よ。
おかげさまで熱が下がった。咳も治まった。魔法判定器も直った?
いや、バラバラのままだけどね。
真っ黒になって判読不能になってた文字らしきものが浮き出てきた。
イヤッホー!
本当に叫び跳び上がったのは魔法省の方々。
そう、丸投げ。私にそんな難しいことわかるわけない。
解読できたら、ぜひ教えてね。