12、変化
イザベラ・スワン・デザイヤノートって名前に慣れきったとは、まだ言えない。
でも、外から見たら私が急に変わったんじゃないか?なんて心配はあまりしてない。
人って案外変わるものだから。
まあ、たいていは見た目だけのことなんだけど。
我が娘は小学生の頃はかなりお節介焼きで、外を飛んで歩ってるような子だったのに、中学に入ったら急に大人しく内向的になった。
反対に我が息子は、ぼーっとした子でずいぶん心配したけど、高校に入ったら急にモテだし活発に。
そのくせどちらも家では「本当の自分なんて誰もわかってくれない」なんてこぼしてた。
後になって「アレが厨二病」ってそれぞれ悶えてたけど。
本人は変わったつもりでも、人から見るとそうでもなかったり、いつも通りにしてるつもりなのに違うふうに取られたり。
自分も人もけっこういい加減なわけよ。
つまり多少方向性が変わっただけで、私はいまもわがままなお嬢様だってこと。
それはそうとユリアが結婚して二月目にして妊娠が判明!
むむぅ、相手の男やりよる。
それから半年が経とうというのに、大きなおなかを抱えてまだ粘るユリア。
もう、こっちがハラハラする!
侍女の仕事は立ち仕事。かなりハードなんだから、お願い、休んでちょうだい。
私の専属侍女の席は空けておくと固く約束をして産休に入らせた。
それでもお世話はしてもらわなきゃならないから、シフトを組んで三人の侍女にかわるがわる入ってもらう。
育児室の利用も増えて、人員に余裕ができたからこんなこともできる。
ついでに日報の記入とか、申し送りとか、ミーティングなどさせてみる。
最初はおままごとみたいな真似事でもいいのだ。
コレは役に立つって、本人たちが実感してくれればこっちのもの。
はっきり言って、何度も何度も同じ指示をするのは面倒だもの。
だからって、一人の人間が年がら年中一人の人間に仕えっぱなしっていうのもね。
忠誠心、それはとってもありがたいけど。
万一裏切られたり、そうでなくても生身の人間だ、病気もすれば怪我もする。また、その家族もね。
いくら給料が良くても、家族が仕事仕事でいつも家にいないなんて、こっちが恨まれそう。
これで少しでもリスク回避できるといいなぁ。