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感情製造所

作者: 九頭坂本

 ベルトコンベアに載せられて、

ゼリー状の大きな物体が

作業員である俺らの前に運ばれてきた。

その物体は、

透き通っていて純粋でキラキラと輝いていて、

俺が今まで見てきた中で最も綺麗なものだった。

「凄いだろ?これが性欲だよ」

隣で働いていた先輩が言った。

「これが、ですか。

最近新しく運ばれてくるようになったって

噂には聞いていましたが、見るのは初めてです」

「凄えよなあ。

こんな大きくて綺麗なのは今までに無い」

俺達は揃って溜息を漏らした。

「まあ、いくら綺麗でも仕事は仕事だ」

先輩はそう言って型を取り出した。

「残念です」

俺もそれに合わせて鉈を構えた。

左手で性欲を固定し、

右手に構えた鉈を力任せに振り下ろす。

カットした性欲を先輩が型に入れ形を整え、

流れ作業で完成品を運ぶベルトコンベアに載せた。

俺はその様子を見ていて、内心がっかりした。

そうして出来上がった感情は元の輝きを失い、

全く別の、

大して綺麗でもないものになってしまったのだ。

「勿体ねえよなあ。あれ、恋情っていうらしいぜ」

先輩がぼやく声が聞こえてきた。

俺は頷き、強く同意する。

「わかります。

性欲の時は、あんなに綺麗だったのに。

なんか、本質を見失ってる、みたいな。

そんな感じがする」

俺達は運ばれていく恋情を呆然と眺めていた。


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