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僕は普通になった。  作者: 犬飼潤
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いつもどおり


 僕は普通ではない。幼い頃からそう思っていた。そう思ってはいたものの、それで良いと思っていた。いや、そう思わざるを得ないといった方が適切だろうか。どんな環境にいても馴染むことができない。もはや特技だ。一人でいる僕はいつも多数に殴られる。でも死なない。僕は弱い、それと同時に強がりだ。人に弱みを見せることを嫌う。だからこそ多数は僕を殴る、絶対に壊れないサンドバッグとして。その時から僕は強く思う。「普通にだけはなりたくない」と。


 そんなどうでもよい回想から目を覚ますと、一面に広がるのは「海」だ。いや嘘だ。空だ。今日は天気がとても良い。こんな日には景色の良いおしゃれなカフェにでもいって物理学に溺れたいと思ったものの、そうもいかないという背反する感情を鞄に入れて僕は今日もお気に入りのベンチを後にする。大学の中庭のど真ん中に位置する小さな木のベンチだ。

 見慣れた「工場」の中を歩いていくとこれまた見慣れたタリーズコーヒーの登場だ。僕が大学でくつろげる数少ない場所の一つだ。あの店員が今日もいる。僕は少し嬉しくなった。顔からそれがこぼれ落ちないように細心の注意を払いながらいつもと同じコーヒーを頼む。

「今日はなんの授業受けるんですか?」

「熱力学と電磁気学です。」

「へえー、なんか難しそうですね。今日も頑張ってくださいね。」

そう言って彼女はお釣りとレシート渡し、微笑んだ。そつなくそれらを受け取った私は、軽く頭を下げ、コーヒーを受け取った。


 そして今日も授業を受けにまた工場の中をすたすたと歩いていく。

 教室に入るといつものように最前列を陣取る。大抵、教室後方は俗にいう陽キャとやらで溢れかえるのだから、この作業は快適な時間を過ごす上でも極めて重要な工程である。

 そうしているとすぐに僕の好きな教授が教室に入ってきた。身長は180cmくらいで僕より一回り大きく、体格は痩せ型でモデルのような体型である。特徴的なのはそれだけではない。髪型だ。れっきとしたアフロなのだ。レキシというより菅田将暉のようなモジャモジャと言った方がなんとなく印象は良さそうなのでそうとでも言っておこう。そしていつもの優しい口調でいつもと同じように言う。


「じゃあ授業を始めます。」

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