精霊2
『コレだから、気紛れで自身含めた興味無いモノに頓着しない精霊って奴は』
グルウガが声を上げた理由は、グルウガの住み家についてではなく、ろくに成長して居ない癖に大規模な魔法を使った僕だった。
そう言えば、身体を構成する魔素が魔法を使うのに随分と減った。
「せっかく綺麗にしたのに」
僕はと言えば、獲物の血で汚れたグルウガの顔を綺麗にしている。グルウガからの契約で対価は隅に積み上がっている骨で、僕は了承した。
『毎日汚れる』
「まあ、勝手にでも綺麗にするけど。それより本当に良いの?」
『ああ。元々精霊との契約のように対価や触媒用のモノだ。保存が効く』
「ふ~ん」
魔法の種類の中でも対価を払って効果をあげるモノの中に、骨をそのまま使役する死霊魔法が有る。或いはドラゴン同士の物々交換。コレクションにするドラゴンも居るらしい。グルウガには余り必要無いモノのようだ。今回、役に立ったが。
骨は遠慮無く取り込んだ。流石はドラゴンの獲物の骨。結構な魔素が溜まった。人の等級で言えば下級精霊位。
グルウガに教えて貰ったが人は精霊の強さ、つまり魔素量でランク付けをするらしい。
小精霊・産まれて間もない。
下級精霊・僕
中級精霊・一番多い
上級精霊
大精霊・ドラゴン位強い
神霊・信仰される
精霊は大体数十年かけて下級精霊になるが、他の生き物と契約する事で成長が速くなる。僕は特殊だ。
普通はドラゴン側に小精霊と契約する利点はない。
「グルウガは優しい」
『……いや、ニホが勝手をするからなぁ』
苦労人の気配を感じた。
それから、グルウガとの生活が始まった。
既に一回、一気に綺麗にしてあるので、細々した汚れの分解をし、グルウガの魔力を貰う。まあ、一方的に僕が付きまとっているとも言うけれど、グルウガは優しいから何も言わないので良しとする。
因みにドラゴンも排泄はする。
「?分解すれば全ては同じ。魔素になる」
『恥ずかしいのだが』
グルウガは何故か照れていた。
一応、グルウガにとって不要なモノしか分解していない。
特に、グルウガから溢れる威圧的な魔力は他の生き物を遠ざける。特に弱い生き物だ。弱い生き物は言ってしまえば餌であり、餌がなければ中規模な生き物だって定着しない。
精霊樹を中心に持つ森は大抵巨大だが、多様性はあるに越した事はないだろう。
と、言うのは建前で、グルウガの狩りは長い。獲物を探しに結構遠くまで出かけるからだ。
僕的には早く帰って来て欲しいのが本音。
後は、精霊として魔力を魔素に変換する事が自然なので、濃い魔力が毎日のように吹き出すココは効率が良い。
僕的にも、美しいグルウガは目の保養でもある。
魔力の分解って言っても、ほとんど何もせずに美しいモノを観賞する。引きこもって居た時とほとんど変わり無くて、誰にも迷惑かけていない生活。
ストレスフリーである。
……前の僕の家族はどうしてるかな……ごめんなさい。
ベリッ。
「あっ」
『おい』
今僕は、グルウガから契約を受けての鱗のお手入れの最中。
下に新しい鱗が生え、古くなった鱗は簡単に剥がせるのだ。付いたままにしておくとむずむずするらしい。落ちる前の綺麗な鱗は僕にくれるらしいので、喜んでやった。
……うっかりまだ下の鱗が生えきってないモノも取ったりする。
かさぶたをはぐみたいな?
「ごめんなさい」
『まあ……ニホの力で剥がれたならどうせすぐ取れた奴だ。特に痛くないし、気にするな』
ちょっとだけ色の薄かった下の鱗も、すぐに周りと同じようになった。ドラゴンの再生力は高い。再生するに任せて、全身を魔法で焼いて汚れを取り除く荒業をするドラゴンも居るらしい。脱皮したり。
次いでに頭を守るように立派で、王様の冠のように威厳溢れる角や、爪なんかの手入れもさせてくれた。荒削りに研いではあるので少し形を整えつつ磨くだけだが。
当然、グルウガの角や爪は硬い。ので、特性の研磨棒を用意した。最も硬いのはダイヤモンドだが、魔法の世界なのでもっと良いモノをイメージして魔法で造り上げた。ダイヤモンドも意識したからなのか透明で光の加減で何処と無く虹色に見えるちょっとざらざらした棒である。
『ちょっ、それ……精霊結晶……』
曰く、魔素を操る精霊にしか生み出せない純粋な魔素の塊だ。魔素を大量に必要とするので精霊と交流の有るグルウガでも滅多に見ない代物らしい。
当然のように僕は小精霊に堕ち、グルウガに呆れた目で視られた。だがしかし、
「綺麗になった」
『そういう問題では』
「それに、コレは純粋に僕のモノだから吸収すればこの通り」
『……』
下級精霊に戻った。魔素結晶は僕の一部と言っても過言ではない。吸収率100%なのである。……削れた分は減ったが。