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人として生きられない精霊の話  作者: 無気力
精霊樹と周囲
14/15

ニホの関心

グータラして居ると言われる僕だけれども、動かないで生活すると言うのも苦痛なのだ。

だから太陽が頂点に近づく位には起きて、幻獣達の身だしなみを整えたり、精霊樹に近い範囲だけだが森の手入れも行っている。


木漏れ日が暗くない程度に注ぎ。

群生する花々は鮮やかに、深い緑の苔が生い茂る。

そこここには低木が実を付けたりもする。


ユニコーンとペガサスが佇む泉。

黄金の蜂と漆黒のカラスが飛び交う枝。

地面に無造作に顔を出す宝石。

中央には精霊を纏う巨木。


「完璧じゃない?」

「なるほどニャ。精霊は特に執着するモノを持つと聞くけれど、ニホさんは自然……いや、風景かニャ?に執着するタイプのようだニャ。しかもソレを作り出す過程込みの筋金入りニャ」

『おお、ニーニャーミさん。納得が出来ました』

『そうですわね。今までは幻獣に興味が有るのかと思っていましたが、それにしては交流も少ないですし』

「ニャ。幻獣も風景の一部ニャ。中身は特に気にしてないと思うニャ」

「失礼な。僕だってちゃんと会話してるじゃないか」

『業務連絡ですかね』

『あら?そう言えば、お世話になったと言うドラゴンの夫婦とはいつからお会いして居ませんの?』

「……」

「十分、薄情ニャ」

……まあ、精霊ってこんなモノらしいけれど。



ケット・シー達を招き入れ、その斥候達によると人は森の入り口辺りで一度拠点を作っている所らしい。

拠点を作っている場所ならば、人が集団で居れば襲う強さの魔物も居ないだろう。逆にそれから先は縄張りを守ろうとする魔物との戦闘が起きるだろう。


基本的にはその魔物との戦闘のどさくさ紛れに、幻獣達が攻撃しつつ数を減らす事になった。

僕は魔物どもに任せて大丈夫だと思うんだけど、幻獣達が人と戦ってみたいらしい。嗚呼、毛並みが汚れる。


蜂達は肉。

カラス達はヒカリモノと肉。

ミミズは染み込む血。

ユニコーンとペガサスは草食で、ケット・シーは戦う事が報酬だから良いとして。それぞれの目的も有るようだった。

余りの骨や道具なんかは肥やし(魔素)かな。


ところで、ケット・シーの呪いだがアレはとても強力な呪いだ。つまりは代償も相応のモノになる。

睡眠の呪いはケット・シーの尻尾。

犠牲になった子の母親が呪ったらしいが、現在はまともに歩く事も困難らしい。ケット・シーの国で保護されているそうだ。


また、特有の呪いは他の幻獣も持っている。

例えばドラゴンの場合は黒炎の呪いで代償は逆鱗。黒炎の呪いは身体の端から猛烈な熱さと共に黒くなっていく。特別強固な逆鱗の後ろはブレス袋になっていてもしそこを突かれるとブレスの暴発で死んでしまうらしい。


ユニコーンの場合は腐蝕の呪いで代償は角。

ペガサスの場合は雷轟の呪いで代償は左の翼。

ハニーワスプの場合は痛毒の呪いで代償は針。

ミラークロウの場合は反転の呪いで代償は脚2本。

ジュエルワームの場合は結晶の呪いで代償はうん。この時はじめて知ったのだけどジュエルワームの身体には生まれついての宝石が有ってソレが代償らしい。


どれも死に繋がりかねない代償で、呪われる方が余程の事をしない限りは無い。解呪にも同程度の素材が必要とはそういう事でもある。尚、呪った幻獣と同じ素材では解呪出来ない。

あるいは、精霊樹の生きた(葉のついた)枝が解呪素材相当になる。


精霊も一応呪いをかける事が出来る。死滅の呪いで代償は精霊樹。もっと言えば他の精霊のひんしゅくを買う事も代償の1つ。

まあ、直接殺した方が早い上に内容が即死では呪う理由が無い。


興味本位でやった精霊?居たよ。魔王の母親を殺った奴だよ。




さわさわと、風が葉を奏でる。

暇だな~。やっぱり戦争は良くないよね。


いよいよ幻獣達が人に攻撃を開始した為、僕は戦後処理までする事が無い。特に花を咲かせるでもない雑草をプチプチするとか泉を掃除するとか……。


ああ、余ってる宝石を泉の底に沈めたら綺麗かも知れない。宝石にはん~、浄化か癒し辺りの魔法を込めるとか。

いや、1つ丸々、魔素吸収用にして浄化も癒しも精霊樹の繊維で繋いだ半永久的な宝飾品を作ろう。セレートの角飾りが良いかな。セレートはオスだけど。


宝石を丸めるのも、穴を開けるのも魔法を使えば朝飯前である。残念な事には僕のセンスのなさが挙げられるが、宝石の輝きで誤魔化せる、と良いな。


まあ、僕は精霊樹の元に居る訳で。

精霊の中には宝石があるいは単に石、ジュエルワーム、宝飾品や魔法に興味が有るモノも居て。

失敗しようが魔法で元通り、な僕ら精霊は盛り上がってなかなかに沢山の、素晴らしい宝飾品の数々が出来てしまった。


ユニコーンの癒しの角飾り。

ペガサスの速飛の首飾り。

ハニーワスプの多産の腰飾り。

ミラークロウの回避の足飾り。

ジュエルワームの消化の胴?飾り。

ケット・シーの偽装の尾飾り。


「ジュエルワームのやつ宝石目当てよね」

精霊の誰かが言った。

「だって、この宝石ってジュエルワームのうん……」

「「だまらっしゃい!!」」


精霊達は出来上がったモノに興味を無くしたり、相手が決まってる作品はいらないと言って解散した。


ふと、振り返ると汚くなったセレート達やケット・シー達がくたびれて居た。

『お話は終わりました?ニホさん』

「あれ?いつの間に」

「日暮れ前ニャ」


もう月が高く登った頃。

僕は作ったばっかりの宝飾品を手にご機嫌とりもとい、戦果を労った。

明日は期待しないでください。

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