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人として生きられない精霊の話  作者: 無気力
精霊樹と周囲
13/15

傲慢さ

「……ニホの森って知ってるよな。精霊にとって重要な森らしいな?今度この国はそこへ戦力を向ける事は知っているか?」

『知ってるけど?』

っていうか、その戦力を確認しに来た。


結論を言えば、杞憂も杞憂。全く問題無かった。

いや、僕自身は武術家じゃないから身体能力や魔力量によらない技術とかで、思ったより戦えるのかもしれないけど。


……最悪、数の多い働き蜂やカラス、ミミズ達の数体が犠牲になるのは、普段の魔物との戦いでも無いでもない。

ただ、それは本当の最悪だ。この都市国家の最も強い者が100人居ても……と、言うより中層手前で魔物相手に壊滅するんじゃなかろうか。


「診て欲しい相手が、その遠征に関係があるとしたら?」

『まあ、精霊樹を狙う相手は居ない方が良いよねぇ』

え?殺して欲しいとかそっち系?

それはそれで騙された感じ満載だけど、僕にも元が絶てるメリットは有るし。


「え?待て待て。そんな事したら本格的に戦争になるぞ?」

そうかなぁ?


『精霊と?』

「ニホの森と」

『どうやって?』

「え?ええと……」

強いて言えば、人の側の勝利条件は精霊樹。

けれど、精霊樹を伐り倒す事は世界的にタブーな上にたどり着けるかすら怪しい。戦争とは同格の相手としか成り立たない。


『まあいいや。偉い人からしらみ潰しに会って契約終わらせよう』

思ったより手間な事になった。やっぱり人は面倒だ。

相手も精霊は見えるのかな?見えないならやっぱり何を願うつもりで会わせようとしたんだろう。


「えっ?待って、まっ……」

きこえな~い。



とりあえずハークスの屋敷をざっと回って、城の偉そうな人に片端から会っていく事、16人目。

基本的に壁なんかはすり抜けられる上に、精霊の目は見たいモノを見たいように見れるので探すのは早かった。契約で縛られていた感覚が消えた時、目の前に居たのはハークスと同じ年頃、20程の女だった。


『もしかして……彼女自慢?』

「違う!」

「ハークス様?」

大分急いだらしい。息を切らしたハークスが入ってくるようだったのでタイミングを伺って、呟いてみた。


護衛らしい女騎士が警戒を浮かべた。

女はこんこんと眠っている。


呪いだった。


しかも、ケット・シー(猫の幻獣)の睡眠の呪い。

なるほど、解呪に幻獣クラスの素材が必要な訳だ。


『……へー。幻獣を怒らせたんだ』

幻獣は賢く、理性的だ。呪いをかけられる程の事をしたと。


「違う!事故だった。普通(魔物)の猫だと思ったんだ」


……話を聞けば、子猫等の弱い魔物を姫(呪い)の魔法の的に使っていたらしい。魔物は人類の敵だが可愛い顔してエグいわ。

ケット・シーは比較的人に近い領域でのんびりと暮らすが、特に幼い子は好奇心が強い。幻獣が強いとは言え、幼ければ弱く。しかし姫(呪い)の魔法で何発も食らってようやく死ぬ程度に生命力は有った筈だ。

おかしいと思えよ。的が長持ちするとでも思って見ていたのか。


『事故だとしても怒るだろ。むしろ猶予(睡眠)期間が有る分有情だと思うよ?それとも、早めに楽になるよう呪いを上乗せして欲しい?』

「止めろ!」

くるり。と、回って姿を変える。


ニャ(何言ってるか分か)(らない)?』

「……クソッ」

僕はそのまま帰る事にした。



お辞儀をする2足立ちの猫を見かけた。











森に着いて、幻獣の目に映るように幻を身に纏う。


「帰ったよ」

『お帰りなさい。ニホさん』

『ご無事で良かったです』

帰った、か。

2体の美しい幻獣が迎えてくれる光景に、癒される。


とりあえず、見てきた事を伝えて他の幻獣達にも広めてもらう。



ごろごろ。

『ニホさん、ケット・シーの方がお見えですが』

「会う」


ケット・シーは2足歩行する猫だ。勿論、毛並みは上等で知性を宿した目は深く輝く。

彼女は深緑の滑らかな短毛の、星のように瞬くラピスラズリの目の美人さんだった。

「はじめまして精霊様ニャ」

ニャ。


「はじめまして。僕はニホと呼んで欲しい。用件は?」

「私はニーニャーミ、ですニャ。もうご存知だと聞いておりますので説明は省きますニャ。この度、ウチの子の仕返しのとばっちりがこちらに来た事の謝罪が1つですニャ」

「まあ、そうだね。人に手を出すのは危険だよね。けど僕としてはニーニャーミさん達に同情する所かな。こちらへの被害予想が軽微だと言う事もあるけれど」

「ありがとうございますニャ。こちら、ケット・シーのマタタビ酒と気配消しの足飾りを受け取って欲しいですニャ。


そして人が攻めて来た時、ウチの者がこの森で戦う事と戦いが終わるまでの滞在の許可が欲しいですニャ」


「いいよ」

「ニャ!?」

「森の幻獣達に許可が取れれば深層に滞在しても良い。原因がケット・シー達に有れど、この森を攻める判断をしたのは人だ。多分遅かれ早かれ結局はいつか人が大規模に来るだろうとは思っていた。それにケット・シー達が()()すると言うので有れば、こちらが支援しない理由も無い、かな?」

『はい。この人里のど真ん中と言う変な場所ですから私達も普通に対人経験は必須でしょうね』

『ケット・シーの方々がいらっしゃるので有れば心強いわ』

うん。変な場所で悪うございました。だってあんまりに荒廃具合が酷くて、って言うか森に一番近い都市は森の後に出来た都市だ。


「ニャんと……ありがとうございますニャ」

「じゃあ、セレート。ニーニャーミさん達をひとまず他の幻獣達の所に案内して。何か適当に拠点に成るところとかも」

『はいはい。ニホさまのおっしゃる通りに』

ケット・シーの怖い所は集団戦と隠密性だ。1対1ならばユニコーンのセレートが害される心配はない。ニーニャーミさんも使者として1体だけで来たようだ。まあ、そもそも相手にそんな事をする理由も無ければ、誠実さすら伝わってくるけど。


「だって僕、あんまりそういう所知らないし」

『いつもグータラしてるからでしょう?私がご案内して差し上げますわ?ニホさま』

「え~アイリスまで。遠慮しておく」


森の幻獣達は何だかんだ僕に感謝して居ると言ってくれる。居場所を作ってくれただとか。今回みたいな情報収集(大半が精霊伝)や森の代表としての取り纏め等だ。

僕も相応に精霊らしい性格だと言われるが、一所に居る精霊はあまり居ないのだと。

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