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夜がやっと明け切った早朝。


アイリーンを閉じ込めようと集まったジェファーソンの側近は、アイリーンが私室にいる所を狙い、扉が開かないよう閂の様に木を挟み、ロープで固定した。


何故か騎士が居らず、近くを通る使用人も少ないながら何も言わなかったが、やり切った感満載の彼らは気にも留めず、意気揚々とジェファーソンに報告した。


ジェファーソンはニヤリと嫌な笑みを浮かべて、その腕にブリアナを抱いたまま朝儀が開かれているはずであろう部屋へ向かった。


しかし、部屋にたどり着くと、その異変に気づく。


基本的に重鎮が集まる朝議では、部屋へ至る通路から警備が厳重に敷かれ、部屋の扉前には伝令役が待機しているのだが。扉は全開に開かれ警備はどこにも見えず。使用人がパタパタと行き来していた。


訝しげに眉を寄せたジェファーソンは、腕の中で何も気にしていないかのように微笑むブリアナと顔を見合わせると、取り敢えず開かれた扉から入って中を覗いた。


果たしてそこには使用人と、数人の文官が書類を見ながら話し、歩き去ろうとしている所だった。



「どういう事だ…!」

「誰もいないわ…早く来ちゃったの?ジェイ様?」

「いや…むしろ真っ最中のはず…!

おい、そこのお前、朝儀はどうした?!」



軽く頭を下げて通り過ぎようとしていた文官を、強引に呼び止めてそう問えば、文官は驚きと困惑を顔に浮かべながら、おずおずと返答する。



「お、恐れながら、小一時間前に終わりました…が?」

「なんだと!俺は聞いておらんぞ!」



そんなことを言われても、あんた毎回居ないよね?という気持ちをなんとか押し込めて、文官は続けた。



「1週間前から、開始時刻を早めるお話はありましたし…しかもだらけさせないよう案件に時間制限を設けたために、会議も早くなって、その後の対応も早く取り掛かれる分スムーズに行くようになりましたし…」



何か問題でもあるのだろうかと、文官たちは顔を見合わせた。


ジェファーソンは、その内容から、『アイリーンが先手を打って1週間前から時間を早めさせた』という風に取ると、頭に血を昇らせる。



「アイリーンめ!謀ったな!!」

「え?アイリーン様の仕業なんですかー?ジェイ様を蔑ろにするなんて、酷いっっ」



お決まりのパターンに入った事を悟った優秀な文官達は、憤っているジェファーソンとその腕にぶら下がる正体不明な女に絡まれまいとして、スススーーーっと後退りして、逃げ去った。


ここに居ても仕方ないと、怒りを募らせたジェファーソンはブリアナと共に、いつものように王の執務室(笑)に、向かうと扉を乱暴に開いた。


中でこっそりとお茶を楽しんでいた側近は、飛び上がり急な来訪者に驚きの目を向けた。


そんなオタオタとする側近達を睨み据えたジェファーソンは、気持ちのまま怒鳴りつけた。



「お前達!アイリーンを閉じ込めたのでは無かったのか!」



ヒェっと小さく漏らした側近らは、慌てて居住まいを正して答えた。



「いえ、我らは屋敷から頑丈な木を運ばせ、早朝にアイリーン様が私室に入るのを確認した上で作業に取り掛かりました!」

「あれで抜け出せるはずありません!」



口々にそう言う側近達の顔を見て、嘘をついている様子ではないと感じとったジェファーソンは、少し怒りを収めた。



「では、アイリーンはその木を扉ごと折って出てきたのか…?!」

「え?やだ、すごい怪力?!ブリアナこわぁーい!」



なるほど…!とジェファーソンの突拍子もない発言に納得やら恐怖やら顔に浮かべて口々に恐ろしい女と罵る。



「このままでは、か弱いブリアナ様を力で排してしまうのでは…!狡猾な上にゴリラのような女だとは…恐ろしい…!」



側近のとんでも発言を拾ったジェファーソンは、こうしては置けぬ!と早々にアイリーンを排除を硬く決心した。その舞台となるべくブリアナ王妃のお披露目を行わなくてはと考え、直近での夜会開催予定を…無ければ開かせるように命令しようという考えに思い至り、早速とばかりに宰相の元へと駆けていった。



「宰相はおるか!」



バーーーーンと宰相執務室の扉を、騎士が止めるのも聞かずに力任せに開いたジェファーソンは、中にいた財務大臣と話し合っていた宰相を見つけると、ズカズカと近寄り横柄な態度で尋ねた。



「王宮で開かれる直近の夜会はいつだ?」



残念すぎる王の態度に半目になりながら閉口していた宰相は、ため息まじりに口を開いた。



「如何されましたか陛下?今はまだ喪に服す期間となっているはずですが…」

「もう良いだろう!何か皆が集まる会はないのか?!」


「…あるにはありますが、1ヵ月後に予定されておりま「わかった!あるのだな。なら良い!」そうですか」



そう言うとジェファーソンは、ニヤリとした嫌な笑みを浮かべて踵を返して足早に去って行った。

騒々しい一行が居なくなった室内では、なんとも言えない空気に包まれた。


黒く艶やかな長い髪を片側にゆるく纏めた宰相は、ため息をこぼして必要になるであろう策を頭の中で組み立てて実行する事を決め、向かいに座る財務大臣に目を向けた。



「招待状を追加します」

「では…」

「王太后様にお話を通しましょう。今や王妃様は無くてはならない存在。1ヵ月後の会であのお方の資質が判断された時点で迅速に…。

式を挙げていなかったことが幸いしましたね」


「そうですな。では、各所に秘密裏に回しましょう」



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