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解散

[なる]、[ならない]

真っ暗な画面に選択肢が二つ出てきた。

「今度は何年後に飛んだんだ?」

紙を見て当てはまりそうな部分を探す。

「全部[なる]を選ぶ事になってるな・・・」

現れた選択肢からはどの質問の選択なのか解らない。

「紙には全部[なる]を選択するように書かれているんだ。間違いは無いだろう」

[なる]を選択すると突然華やかな音楽が流れ出した。

その音楽はエンディングで流れそうな感じの音楽だった。

「まさかエンディングが始まったりとか無いだろうな」

なんとなくそんな風に思った。

音楽が流れ始めて10秒くらいすると画面の下から何かが出てきた。

「これって…」

俺の予想が当たりスタッフロールが流れて始めた。

「ミキヨシ=ジョン。お母さん=ジョン…」

キャラクターの声をあてている声優の名前が全てジョンだった。

それだけじゃなかった。

シナリオ、システム、グラフィックなどのあらゆる物を作った人の名前は全てジョンと表記されている。

「一人でこのゲームを作ったとでも言うのか?なんだこのエンディング」

エンディングに製作者として載っているのがジョンという人物だけというのはどうかと思う。

「一人でこんな凄いゲームを作れるわけが無い」

クリアの感動が台無しだと思う。

結局最後まで製作者として名前が載っているのはジョンという人物だけだった。



俺がエンディングを見終わった頃に他の2人はエンディングを迎えた。

2人ともエンディングを見ながらそれぞれ難しい顔で画面を見ていた。

エンディングが終わり、森崎さんに電話をかけた。

「皆さんお疲れ様でした。ゲームをやった感想などを聞かせてもらえますか?」

部屋に入り森崎さんは一言そう言った。

それじゃ俺からと手を上げたのは原口。

「このゲームのジャンルがよくわかんねぇっすね。なんかアクションっぽいミニゲームばっかりやったけど、これアクションゲーム?って思った。あ、あとなんか死んだらその面クリアになって話飛ぶの仕様?」

「ゲームのジャンルは一応育成シミュレーションなんだけど、色んなミニゲームが入ってるからちょっと解り難いみたいね」

死んだら面がクリアという事に一切触れずに報告を続けさせる森崎さん。

次に報告するのは増毛さん。

「赤ん坊の時にワンワン泣き続けたらお母さんノイローゼになって病院行っちゃったんですけどちょっとリアルすぎませんか?」

赤ん坊の時に泣いていたらそうなっていたのかと思った。

「あとミニゲームがかなり難しかったです。失敗するとなんか物語が飛んじゃうみたいで途中からよく判らなくなりました」

「解りました。ミニゲームの難易度をもう少し下げてみましょう」

まただ、また触れられていない。

森崎さんの対応が気になる。

次は俺の番だった。

「増毛さんが言った様にミニゲームの、特に、連射ゲームの判定が厳しすぎます。連射機が無いと爪が剥がれたりして問題になると思います」

俺の指を森崎さんに見せながら言った。

「人が出来る速度の連射に設定し直します」

人が出来る速度?

その言葉が引っかかる。

「他にありますか?」

俺に尋ねる。

「このゲームのバグを見つけました」

「バグですか?」

森崎さんがその言葉に反応する。

「3回そのバグが発生しました。最初は小学生編で川に流された時。2回目は中学生編で飛び出してきた子供を助けようとした時。3回目は大学生編で車が突っ込んできた時です」

なるほどと一人納得している森崎さん。

「この3回の後は必ず話が飛んでいました。3回ともゲームオーバーになってもおかしくないのにゲームオーバーにならなかった。多分このバグが発生する条件は[死]だと思います」

森崎さんの顔は驚いていた。

「バグの発生条件まで見つけるとは驚きました。貴方は本当に優秀ですね」

「最後に聞きたいのですが、このゲームを作ったのは本当にジョンという人物一人だけですか?」

フフフと笑う森崎さん。

「本当ですよ。ジョンがこのゲームを1から全て作りました」

そういう森崎さんの表情は嘘を言ってないように見える。

「ただ、ジョンの作ったゲームには欠落している部分があると思い、今日皆さんに来てもらい欠落が見られるルートをプレイしてもらったのです」

森崎さんはそれ以上の事は言わなかった。

そして俺達は報酬を貰い会社を後にした。



3人が退社した後、会社のある部屋で森崎と森崎の上司が話をしていた。

「森崎君、どうだった?」

「原口さんはジャンルがはっきりしていない。増毛さんはミニゲームが難しいと」

原口と増毛の感想を伝える森崎。

「もう一人はどうだった?」

「彼はバグを見つけました。3人とも同じバグが発生しましたが、彼はバグの発生条件まで見つけました」

「ほほぅ、してバグとはどのようなものだった?」

「ある事が起こると話が飛ぶというものです」

「そのバグの条件を見つけたのか」

「はい、条件は[ゲームオーバー]でした」

上司は首を傾げた。

「[ゲームオーバー]だと?」

「はい、ゲームオーバー、つまり死です。ゲーム上で死ぬ場面になると話が飛ぶ言う事です」

「そうか…」

上司がタバコを咥え、火をつけた。

「森崎君、君はジョンに何を教える必要があると思う?」

「ジョンに死の概念を教えなければいけないと思います。ですが…」

はっきりと言えない森崎。

「死と言う概念をジョンに教える事はやはり難しいだろうな」

「死は体験してもそれを伝える事は出来ませんからね」

口から煙で輪を作る上司。

「やはり人工知能に死を伝える事は無理なのだろうか?」

窓の外を見ながら上司はそう呟いた。

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