小学生編
ゲームを始めて2時間ほど経ち、ミキヨシは小学生になった。
幼稚園で四則演算をマスターし、今は分数とルート計算を勉強中だ。
世間でミキヨシは神童と言われ注目を集めている。
ミキヨシの日課はマラソンと筋トレで、毎朝4時に起きて3時間ほど汗を流している。
こんな化物みたいな子供が実際にひくなと思うけれどそこはゲームなので深く考えない。
<クラスでのタチバをどうしますか?>
「そんな事まで指示できるのか」
選択肢には[オモシロケイ]、[マジメケイ]、[マトメケイ]と3つの選択肢が用意されていた。
「ここは纏め系を選択するのか」
ゲームを始めた頃から気になっていたのだけれど、このゲームは漢字表記のところがカタカナで表されていてちょっと読みづらい。
ミキヨシの年齢が上がれば漢字が使われるのかと思ったがそうじゃなかった。
<トナリのクラスのコがイジメられています。どうしますか?>
「あんまりリアルを追求しすぎるのも考え物だな…」
[タスケル]、[ミステル]、[カミサマにイノル]
「最後のは製作者の遊び心だろうな。えぇーと助けるっと」
<イジメッコはミキヨシのカラダをミテニゲダシタ>
「なるほど、このために筋トレを選択させたのか」
物語が進むに連れて過去で選択した事が生かされるというのは面白いシステムだと思う。
<イジメラレッコもニゲダシテしまった>
「せっかく助けたのになんて子供だ!!」
紙に書かれた指示通りにやっているだけなのにミキヨシに情が移ってしまった。
その日の放課後、イベントが発生した。
<ミ、ミキヨシクンだよね?さっきはタスケてくれてありがとう。ボクとトモダチになってくれる?>
[なる]、[ならない]
「これはなるを選択っと」
<ショウライのジムジカンコウホをテニイレタ>
「手に入れたって…それよりもミキヨシは将来政治家になるのか?」
紙の最後の部分に目を通す。
[セカイのオウになる]
うちのミキヨシは最終的に世界の王になるらしい。
「まあ、最後はこれぐらいぶっ飛んでないと面白くないよな」
その後ミキヨシは自身の鍛えぬいた体を武器に苛められている6年生を助けたり、バランスを崩して3階から落ちそうになった校長先生を助けるなどして学校での地位は纏め系では無く学校の頼れるリーダーと言える存在になっていた。
そして小学校で始めての行事、遠足が始まった。
遠足に行く場所は川らしい。
「どんなイベントが起こるんだか」
わざわざ遠足に行くイベントを作ったんだから何か起こるはずだ。
<オサカナいるー>
ミキヨシはムキムキの体に似合わない愛らしい顔で楽しそうに水遊びをしている。
<アメがフッテきたよー>
せっかくの遠足なのに雨が降ってきてしまった。
雨足はどんどん強くなり、川の水量が増えている。
<タケムラクンがカワにオチタ!!>
[タスケル]、[ツル]、[ニゲル]
「いくらなんでも釣るは無いだろー」
ここでの選択肢はタスケルを選んだ。
ミキヨシは先生や生徒達の止める声を聞きもせず川へ飛び込んだ。
<ナガレにサカラエ!!>
「また連打するのか?」
思ったとおり画面右端にゲージが2本出てきた。
「ちょっと待て2本ってどういう事だよ」
<○、×ボタンをコウゴにレンダしろ!!>
俺は赤ん坊の時と同じ様にこすり連打式で連打を始めた。
「何だこれ、全然ゲージが上らねぇ!!」
どんなに頑張ってもゲージが溜まらない。
「連射機じゃないと無理じゃねぇか?」
連射機なんて優れものはこの部屋に無い。
これは無理だと思った。
連射をし続けるだけの体力も無くなりボタンから手が離れ、ミキヨシは川に流され、画面が暗くなった。
<ソツギョウシキにデマスか?>




