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俺の日記 俺が使えば世界最強  作者: 琴吹 雫  めぐりー
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謎の男

剣を握りながら走る。

暑くもなく、寒くもなく、あまり感覚がない。なぜなら恐怖というもののせいで全ての神経がいかれてしまっているからだ。

だが、走るしかない。それしかする方法がない。

そうして走り続けると叫び声がどんどん大きくなった。


「キャー‼助けて‼誰が、誰がー!」

もう近くまで来ている。

一秒でも早くエミリーの姿を確認し、逃がせてあげるために俺は声を出した。


「エミリー!こっちだ、こっち!声のする方に来るんだ!」

そう叫んだが返事はなく、もう殺られてしまったのか?

と思っていると進む方向とは逆から息が切れている音が聞こえた。エミリーだ。早く、早く来てくれ。


「助けて!助けてー!」

この声と同時に姿が見えた。

泣きながら走っていた。

もう目の前に来るという所でエミリーは転んでしまった。


「キャッ!」

そこに俺はすぐに駆けつけ剣を置き、抱きしめた。


「大丈夫、大丈夫だから。」

エミリーは号泣、さらに震えていた。

見ただけでも分かる恐怖。


「大丈夫だからな。お兄ちゃんがいるからな、安心しろ。」

俺は強く抱きしめた。

そしてエミリー の肩を持ち、目を合わせ、俺が考えていたプランを言った。


「お兄ちゃんがあのバケモノの相手をしてるから君は村へ全速力で走るんだ。でも、お兄ちゃんが一人でバケモノの相手をしている事は誰にも言わないでね。これはお兄ちゃんとの約束だぞ。」

1つ下しか変わらないが俺と体がひと回り以上違うエミリーにお兄ちゃんと言い、あえて安心させようとした。

自分よりも大きい相手が自分よりも強かったりした相手と代わりに戦ってくれると言われれば、自分は大丈夫なのだと安心するからだ。

エミリーは安心したのか無言で頷き、そのまま村の方向へ走って行った。


「よし、本番はここからだ。」

急いで話していたが、あのバケモノがすぐに追いつかなかったのは運が良かった。

俺はエミリーを怖がらせてはいけないと置いていた剣をもう一度取り、剣を構えた。

木々が揺さぶられたり、折れたりする音が聞こえた。

そしてついに、バケモノが正体を現した。

その正体は狼。

通常の大きさの5倍、いや8倍はある。鋭い牙を見せ、威嚇するように大きく口を開く。

だが、俺はこのバケモノを倒す気などサラサラなく、防御に徹するつもりだ。

今の俺の戦闘能力じゃ勝ち目など1ミリあるか、ないかくらいだ。

一番いいのはこのバケモノが落ち着き、戦闘に入らないというもの。

でもこの様子では俺の望む方向には行かないだろう。

と、その瞬間こちらの方に狼が襲いかかってきた。


「っ⁉」

俺は右足に力を入れ、左側へとずれる。

すると大きく開かれた口は俺の真横スレスレの位置を通る。

俺が約1ヶ月もの間、色々なトレーニングをこなしていたからかわせていたのだろう。

トレーニングをしていなかったら今の攻撃で人生終了のお知らせだった。

そして狼はすぐさまこちら向く。

今回は剣を構える時間がある為、家にあった剣を使う。

狼に目線を集中させ、いつ攻撃してくるのかを見計らう。


「さぁ、来い…………………!」

そう声に出したが狼は攻撃してくる気配はまるでなく、沈黙が続いた。

俺はてっきり狼が諦めたと思っていたが、そんなことはなく、攻撃してきた。

狼は真正面から走ってきて、口を開いて来るのだろうと予測し準備をする。

だが、俺の近くに来た途端、軌道を変え俺へと向かってくる。


「嘘だろっ!?」

とっさに剣で防いだものの次の攻撃がやってくる。

狼はジャンプすると月と共に光り、ものすごい速さで前足を使い俺の体を切り裂こうとする。そしてそれに俺は見事的中!

まではいかないが左の腕で防御した為、致命傷にはならなかった。だけどその痛みは腕が引きちぎれそうになるような痛み。

大げさかもしれないが、そもそも俺が今まで怪我を全くと言ってしたことなかったから痛みがここまで辛いと感じてしまう。

でも、利き手の右腕を損傷させなかったのは褒めてほしいと思っている。

だって唯一、俺が使える武器が使えなくなったら終わりだから。

それと、さっき狼が使った技のようなもの。

あれは恐らく魔力を使った身体強化だ。

言葉の通り自分の体を強化する魔法だが、強化しすぎると体がついていけず筋肉が潰れる。

欠点もあるが実用性のある魔法で、よく魔法使いが魔法を使えない者たちにかけて仕事の手伝いをしている光景をよく見た。

その実用性のある魔法が戦闘で使われ、たった今 死にそうな俺は木の後ろに隠れながら再び剣を構え、必死に逃げる方法を探していた。


「今だっ!」

木の後ろに隠れていた俺は、狼が何故か分からないが他の木を倒したのをチャンスだと思い走り出す。

でも、身体強化を甘く見ていた俺はすぐに追いつかれ体当たりされる。

今ので、あばら骨 数本と右足の骨が折れただろう。

骨が折れて歩けなくなり狼がもう目の前にいるこの状況。

どう見ても終わり。

あ〜、2度目の人生早かったな〜。

そう思い目を瞑っていると、誰かの声が聞こえてきた。

エミリーには内緒しにしておいてと言ったはずだし、魔獣に襲われていると言っても信じないし助けに来ないだろう。

なぜなら普通の人間では倒せないからだ。魔法使いや相当に鍛え上げられた武術家を除いては。

でも、人が来た。

これはなにかの間違いなのではなかろうか。

「大丈夫?もう狼はいないよ。」

えっ?

今の短時間で狼を倒した?

音も何もなくどうやって?

それに声はオジサンやおじいさんの声ではなく若い声。


「え、あの………………うっ!」

話そうとしたがあばら骨が折れたせいで聞こうとしたことが途中で途切れた。


「はいはい、大丈夫。僕が治すから黙ってじっとしてて。」

俺は声を出すと痛いので口を閉じ、頭を縦に振った。

すると、目の前にいる人間だと思われる男は治癒魔法を使い出した。

『治すから』と言っていたが不可能だろう、

理由は簡単治癒魔法は難易度が高くベテランの魔法使いで、切り傷やすり傷を治せる程度だ。

それに比べて俺ときたらあばら骨が数本折れているし他にもすり傷に切り傷が数え切れないほどある。

とても治癒魔法で治せるしろものじゃない。

そう考えているとその若い男は『ヒール』と小声で呪文を唱える。

驚くことに、みるみると左腕の傷も治っていき、呼吸も楽になっていくのだ。

あばら骨もこの様子だと治っているに違いない。

それになぜか疲労もなくなっており、普通に立つことが出来た。

足の骨が折れたのも治り男の事を訪ねようとすると男が先に喋りだした。

一体何者なんだ?

明らかにただものじゃない。


「僕の正体…そしてどうやって狼を倒したのか、気になっているんだろう?それに君は魔法を使いたいとも思っている。」

「ふふふっいいよ教えてあげよう。

だからそれらが知りたいならもう一度ここに来てくれるかな?今日はもう遅いから。」

一人で話を進めるこの男……………………一体何者だ?

でも、行く価値はあるかもしれない。

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