過去へ
「はぁ、はぁ。」
気がつくとそこはどこか懐かしい匂いと景色。
木製のベッドに床、壁、ドアなどと頭の奥の棚にしまわれた記憶が蘇ってくる。
俺は戻ってきたのだ。
ベッドに体を任せていた俺はスッと起き上がり、本当に戻ってきたのか確認する。
家はそっくりで懐かしく感じるが容姿や、そもそも二度目に死ぬ前の世界にいるのかあやしいからだ。
あの女神なありえゆる。
でも、そう考えている時間よりも動いてみるのが一番かもしれない。
そう思い、立ち上がってみると…「軽っ!」
思った以上に体が軽く中身が追いついていかなかった。
そりゃ、30歳から18歳若くなっているはずだから少しの変化はあると思ったが『少し』ではなく『大きな』だった。
いや、そうとは限らない。
体の変化ではなく、いつに戻ったか、だ。
俺は12歳と念じたが、今本当に12歳という確証がない。
「確かめてみる必要があるか。おっと、その前にアレを探さなきゃな。」
アレとはいわゆる切り札。
俺がこの時の為に作ったものだ。
あの女神に頼んだ通りならば俺の所有物として存在している訳だからすぐそばにあると思う。
本棚や、ベッドの下にあるのではないかと覗いたりしてみたがない。
「どこにあるんだよ……………?!」
その言葉を発し天井を見るとそこには例のアレが浮いていた。
浮いている例のアレを取るとアレの表紙が光り、文字が浮かび出した。
「えーっと、これはアトラ=ディアリスの書物である。この書物に選ばれし者以外が開こうとした時、災いを招くことになるだろう。」
選ばれし者と言っても元々は俺のものだ。
これもどうせあの女神のミスかイタズラでもしたのだろう。
いや、さすがにミスはしてもイタズラはしないだろう。
今いる場所から2度目の人生の時の世界にいることが分かった。
ただしいつに戻ったかだ。
何か、アクションが起こればアレから推測出来る。
「アトラ!」
おっと、噂をすればだ。まだこの事からは明確には分からない。
「はい!何?」
「シリアスちゃんが来たわよ。」
シリアスが来た?ん〜、自分の記憶だけでは思い出せん。
アレを見るのもいいけど未来が少しでも変わってしまったら困る。
だからと言って今、過去と同じ事を出来るとは限らない。
だが、なるべく子供っぽく演じてみるか。
「はいはい!今行く!」
「早くしなさいよ。」
急いで部屋から出ようとするが、手にはアレを持っていた。
「ん〜。流石に持ってくのは危ないよな。」
ベッドにかけてある毛布の下にアレを隠して部屋のドアを開ける。
そして、玄関のドアを開けると同じ位の目線だが小さなシリアスの姿があった。
「もう、遅いじゃない。待ち合わせに遅れてるわよ。」
「え?待ち合わせ?何だっけ。」
今はアレを使えないからなるべくシリアスから情報を集めるしかない。
「あっ、待ち合わせね。遊ぶんだっけ?」
「本当になに言ってるの?ラックと遊ぶって言ったじゃない。」
ラックか。
死ぬ前のあれは何だったのだろうか。
俺はラックを信じる。
ほぼ30年一緒にいたやつが裏切るなんて信じられないからな。
「そっか、そうだったな。よし行くか。」
「そうよ。遅刻なんだから早くミナトの森ヘ行くわよ。」
ミナトの森?あっ!そうか、あの時か。
これで分かった。
今は12歳だ。今の『ミナトの森』で俺の記憶の中から引きずり出されてきた。
でも、この森って確か事件が起きたような………… 少し険しい顔をしていると
「もう、なにボーッとしてるのよ。行くわよ。」
シリアスは俺の手を引きミナトの森へと俺を連れて行こうとする。
多分ここまでは歴史通りに進んでいると思う。多分、多分だ。
大きな出来事は覚えていてもこんな些細なことなんて覚えてないからな。
そんな事を考えているともう目的地に到着していた。
すると、木の上から声が聞こえてきた。
「おいおい、遅ぇーぞ。いくら待たされたと思ってんだよ。」
「ちょっとしか待ってないじゃない。
それにラックが呼びに行けって言ったからアトラを呼びに行ったんでしょ。」
何故か言い争いになりそうだったから間に入って話を切り替えた。
「そうそう、ごめん。
ちょっとボーッとしててさ。」
「そうなのよ、呼びに行った時もボーッとしてたじゃない。」
「ん?なんだ、エッチな事でも考えてたのか?」
そう笑いながらラックは木から降りて肩を組んできた。
俺はラックに愛想笑いで返すと、それに気づいたのかシリアスがラックに対してまた敵意を持ち口を開いた。
「ラックはそんな事言ってるけど、アトラはそんな事考えてないよね!ね!」
シリアスが強気で言ってくるが、考えないって訳でもない………………ってやめだ、やめ。
「アトラも男なんだからよ。わかんねーぞ。」
「ラックは考えてるかもしれないけどアトラはまだよ。」
いや、『まだ』って。
まぁ、成長すればそうなるよね。
それにラックだって嫌味で言っている訳でもない。
ラックはそういう性格でムードメーカーみたいな感じだ。
少し強引に見えたり、していると思うかもしれないがそれが彼の素なのだからそれも魅力と言えると思う。
それに、そのうちにラック自身もその事に気づき悩まされる時が来る。
「まあまあ、二人ともそこらへんにしといて、遊ぶんでしょ?」
「そうよ。そう!遊ぶのよ。」
「そうだった。遊ぶんだった。」
いや、先に待ち合わせの場所に着いて俺を呼びに来た人が何言ってるんだよ。
でも、まあいっか。久しぶりに3人での遊びを楽しみたいしな。
「ほらほら!早く遊ぼう。」




