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第1話 日常の終わり

かなり久しぶりに書けました。

2016~2017年くらいに上げていた作品のリメイクです。

お暇な方はご覧くださいませ。

週1回は更新できたらと思います。

追記:慧の口調を下手くそな関西弁にするかもしれません。口調でキャラが分かる方がいいなぁなんて思ったもので。急に変えたらすまぬ。

変更しました。

 教室の端々にある花瓶には可憐なコスモスがほころぶ季節。

 残暑もいつの間にか過ぎ去り、露骨なほど秋らしい顔を見せていた。


 時刻は15時半過ぎ。

 秋の季節は昼の時間が短いためか、この時間帯ともなれば夕刻を匂わせる頃合いだ。

 今現在、先日行われた中間テストの返却が行われようとしていた。

 担任教師であるゴツイ男性教師が教卓をバンバン叩いて、帰りのホームルームでもうすぐ学校から解放されると思って浮足立っていた生徒たちに呼びかける。


「よーし、おまえら喜べ。おまえらが大っ嫌いなテスト結果の発表だ!」


 男性教師の憎たらしい声に生徒たちは顔をしかめた。

 そんな生徒たちをニヤニヤと眺めながら、ここぞとばかりに追い打ちをかけていく。


「ちなみに、めでたくも赤点を取った者は明日から居残り授業(補習)だからな! わかったな! この俺が直々に教え込んでやるから覚悟しとけよ! はい、それじゃあ名前呼ばれたやつは取りに来い。赤崎ーー」


 生徒たちは、心底嫌そうに顔を歪め、口々に文句を言うがテスト返却は問答無用で始まるのであった。


 そんな生徒たちの一人である男子生徒ーー大森 創那(おおもりきずな)は今、果てしなくテンションが下がっていた。


 苦行としか言えない授業を乗り越え、ようやく自由なれると思っていたのに!

 何事もなく帰れると思ったのに……!!

 帰って昨日大型アプデが実施されたマイ〇ラを楽しもうと思ったのにぃぃぃ~!!


 帰宅後のゲームを心底楽しみにしていた創那(きずな)はキリキリと歯ぎしりをしながら先生を睨みつけている。

 一部を除いた(勉強していた)他の生徒たちも同じように睨みつけているが、流石は現役バリバリの教師だけあってまったく怯んだ様子はないようだ。

 むしろ、ニヤニヤとした嫌らしい笑みを浮かべて生徒を眺めている始末である。

 

 皆、何煽っているんだ畜生め! 性格出てんぞっ!! と、心の中で盛大に文句を垂れる中。

 次々に名前を呼ばれ答案用紙が返されていく。


 勉強をおろそかにしていた者たちが答案用紙をふるえた手で受け取り、重い足取りで自分の席へと戻っていく。

 そして、意を決して答案用紙を表にひっくり返すのだ。

 右上に表記されてある今後の運命を左右する絶対的な数字をこれ以上ないくらいに凝視する。


「ぎいやああああああああああっ!!」「絶望した……」「ほ、補習が決定したのか……! 最悪だ!!」「ぜ、全教科赤点……わ、ワロタ……わろ……た……うへへっ……」

 

 一切の容赦のない無情な現実が赤点取得者を襲い、そのまま深い谷底へ落ちていった。

 まあ、間違いなく彼らの自業自得ではあるが。


大森 創那(おおもりきずな)取り来いー」


 そんな光景を苦い顔で見ていた創那だったが、とうとう自分の順番が来てしまったようだ。


 創那きずなはいつもより重い腰を上げてどうにか教卓まで向かう。

 そして、やたらとニヤニヤ顔を見せる先生から答案用紙を受け取る。


 正直、創那はテスト結果に全く自信がない。

 しかし、まだ完全に補習が決まったということではなく、ワンチャン(赤点回避)あると思っているようだ。


 頼むから赤点回避してくれ!

 俺は何の憂いもなくマ〇クラを楽しみたいし、録画してあるアニメの消化もしなきゃいけないんだッ!!

 ほんと頼むから赤点だけは……!!


 なんてことを心の中で祈りながら席に戻ろうと教師から背を向けた創那きずなに担任教師がポツリと一言。


創那きずな、補習おっめとさん(おめでとう)!」


 ーーグシャッ


 創那きずなは、思わず左手に持っていた答案用紙を握りつぶした。


 ……補習決定かよ……!!

 というか答案用紙を見る前に盛大なネタバレ(補習決定)すんなよっ! 

 ど畜生ちくしょうめッ!!

 ……まあ、誰が悪いって勉強しなかった俺なんだけどさ。はぁ……。

 

 残念ながら補習決定した創那きずなは、どんよりとした空気を引きずったまま席に戻ると、すぐさま項垂れていた。

 そんなネガティブブルーなオーラ全開である創那きずなの席に歩いて来る者がいた。

 よく知っている顔だ。

 

「よっ、創那きずな。ちょいと聞いてくれ。前例ののう(ない)レベルの快挙を果たしたかもしれへんのや!」


 項垂れていた創那きずなに忙しなく声をかけたのは、佐々城 慧(ささしろけい)である。

 けいは創那の中学時代からの付き合いがあり、高校生になった今でも当然仲が良く、お互いに親友と思っている間柄だ。

 バリバリの脳筋タイプというのが玉にきずではあるが、性格は明るく社交性に富んでいるのか友達は多い。

 また、ワックスでバリバリに尖らせた、まるでウニでも乗っけたかのような髪型と関西弁が特徴的なイケメンでもあり、かなりモテていたりする。

 基本的にいつも創那きずなたちとよくつるんでいるようだ。


「ん? 快挙かいきょ?」


「ほんまビビったんだけどな、俺まさかの全教科赤点だったっ!! これ、やばない!?」


「えぇぇ……ほんとにやばくてネタにすらならないやつじゃん……。赤点取った俺が言うのもなんだけどけいも少しは勉強したほうがいいんじゃない? 流石に全教科はまずいだろ……」


「クッ……。ったく、痛いとこをつくなよ。俺は、アレだ。えーと……そう! 勉強をすると体調がすこぶる悪くなる病なんや! これは、ほんま仕方がないことなんや!! いや、ほんまやから!!」


「……うわぁ……」


「……創那きずな、本気のドン引きはやめてくれへん。さもなくば、恥も外聞もかなぐり捨てて、おまえの席で大泣きすることになるで? 高2の男がドン引くレベルのマジ泣きすんで。ええんか!?」


「なんてタチの悪いおどしだよ……それは勘弁してくれ」


 創那きずなけいがだべっているといつの間にかテスト返却も終わり、帰りのホームルームも終わろうとしていた。


 いつもと変わらない日常。

 これからも続くありきたりな日常。

 退屈ではあるものの温かな、それでいて穏やかな日常。


 --そんなごくごく普通な日常が突如終わりを告げた。


 いきなり、何の脈絡もなく教室全体が激しい光に包まれたのだ。

 さらにその直後、何かが破裂したような爆音も響き渡り、教室中は大きな混乱を招いた。

 慌てふためき悲鳴をあげる生徒たち。

 突然の閃光せんこうにより視界がえぎられているので何も見えないでいた。


 テロかッ!? こんな平和な日本で!?

 おいおい一体全体何が起きてんだよッ!?!?


 創那も他の生徒たちと同じように動揺しているのか固まったまま動けないでいた。

 そんな慌てふためく創那たちを置き去りにして状況は刻刻こくこくと変化していく。


「うおっ!?」


 一瞬の浮遊感があり、浮いた足が地面に着くと同時に謎の爆音と閃光が鳴りやんだ。


 創那は閃光により閉じていた目をおそるおそる開けた。

 するとそこにはーー


 社会の教科書でしか見たことがない、王様とかが住んでいるきらびやかな宮殿のような場所が映っているではないか。

 しかも、宮殿の中心には豪華な椅子に座った王様のような男が、その周りには家臣のような者たちが控えている。


 今の今までいたはずの見慣れた教室はどこへ消えた!?

 ここはどこなんだよッ!?

 目の前のこの人たちは誰なんだよッ!?!?


 皆、思考が追いつかず、ただただ呆然と立ち尽くしている中。

 創那きずなだけは、冷や汗をかきながらも一つの可能性が思い浮かんでいた。


 しかし、もし本当にそれ(・・)が起きたのだとしたら次元を超えた所業であり、現実では起きえるはずがない事象だと断言できる。

 そう、断言できるはずだが、今しがた自分の目の前で起きた現実ことだ。

 とてもではないが頭ごなしに否定できない。


 と、考えがまとまらず困惑だらけの創那を横目に、王様みたいな恰好の男がゆっくりと立ち上がる。

 そして、創那きずなの考えを裏付けることを言い放ったのだ。


「突然の召喚に応じていただき大変感謝致す。我はフラジアール王国第14代目国王ドバネス・ワイラー・フラジアールである。異世界よりまいられし勇者(・・)の方々、全国民の(代表)として歓迎しようではないか」


 --異世界転移


 ただの高校生にしか過ぎない創那たちは何の因果か、異世界へと召喚されてしまったようだ。

ご覧いただきありがとうございました。

のんびり更新していきます。

追記:親友の慧の口調を下手くそな関西弁に変更しました。

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