表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

奇譚ラッシュ

Now or Never 戦慄の深夜ドライブ

作者: 秋月小夜

 不意にある光景が現れた。



 暗いトンネルの中、私は車の運転席でハンドルを握っている。


 壁面のオレンジライトが規則的に迫っては飛び退る。

 けれど、猛スピードの車窓からは、その輪郭を確かめる事すらできない。




 トンネルの出口はまだ遠いようで視界に対向車はなく、遥か前方を行く二つの赤いテールランプが見えた。


 冷たい革巻きのハンドルを強く握りしめる。

 不意に激しく押し寄せた恐怖と焦りが、意識の集中を噛み切ろうとガチガチ歯噛みする。


 それを振り払うべくアクセルを踏むと、エンジンが一段と高い唸りを上げて加速した。


 そして疾走。




 なおも私は走り続ける。


 急に強い光を感じて視線を走らせたバックミラーに、迫り来る二つのヘッドライトを捉えた。


 それはこちらがスピードを上げても上げても、すぐにジリジリと追い上げて来て振り切れない。




 ああ全く肝心な事が、こうなった理由が分からない。

 いつから、なぜこうしているのかも。


 ただ一つ理解している事と言えば、後方から迫るそれに追いつかれた時、全てが終わるということだ。





 まだトンネルを抜けられない。


 アクセルをさらに踏み込むとエンジンが一層高らかに咆哮する。

 ミラー越しのヘッドライトを一瞬遠ざけた、と思うと背後から別のエンジン音が高らかに威嚇してきた。


 来るぞ!


 暗いオレンジ色の車内が射抜かれるような明るいビームに舐められた。

 バックミラーが酷く眩しい。



 行く手の路面が強烈な光と影のコントラストで切り分けられた途端、銀色の車体を操る追っ手が素早く右に切れて対向車線に踊り出た。


 行く手に対向車は見えないが、あまりに無謀だ!

 コイツは狂ってる!


 しかもそいつは横並びに並んだ途端、左にハンドルを切り接触寸前まで車体を寄せてきた。


「危ないっ畜生、脅かしやがって!」

 一人叫ぶ。


 もしも弾みで左に少しでも大きくハンドルを切っていたら、トンネルの壁に激突していたところだ。


 再び右の助手席越しに銀色の車体が接近し、今度は運転席の黒い人影を視界の隅に捉える。


 と、同時にガツン!と衝撃が来た。

 体が左右に大きく振れて、車の前部が右に傾く。


 まずいっ!

 瞬時にアクセルを離す。


 ガガガガガッ!

 車体左後部が壁面に擦れる音が響き、激しい振動で視界が細かくブレて手が震える。


 ハンドルの重さがこたえる。



 だが対向車線に大きく入り込んだ右前部を必死で立て直し咄嗟に後ろを見ると、幸いにも後続車は居ない。


 状況を確認する間に、追っ手の銀の車体が吠えて加速しながら遠ざかり、やがて見えてきたトンネルの出口を超えると遥か前方で走行車線に戻った。




 命拾いした!


 息が切れ、汗が流れ落ちてくる。

 運転手の顔はおろかナンバーすら読み取れなかった。


 これで終わりか?


 いや、そんな筈のない事はもう理解した。




 一旦離れたと見せかけた銀の車体が再び視界前方に現れ、再びこちらのスピードにシンクロさせながら車体を寄せて来た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 恐怖は、終わらない。果たして、逃げ切れる目はあるのか。一発目でやられてしまっていないので、一応目はあると信じたい。 [気になる点] 一応ホラーとついてるので、心霊現象的なものか、人災である…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ