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異世界帰還者ノイジーライフ  作者: 完熟ライム
第1章 愚者の牙《The Fool Fang》編
16/17

第15話 愚者の牙part1

更新するの、いつぶりでしょうか(遠い目)


かなり遅くなりましたが、15話です。

「え、亜紀?そういえば、まだ来てないね」


「………!!」


朝、学校にて。


いつも通りの時刻に学校に到着した俺は、昨日の件について亜紀に聞こうとした。


だが、亜紀の姿が見えなかったので、亜紀とよく話している女生徒に亜紀の所在を聞いたのだ。


…亜紀は、まだ学校に来ていなかった。


「白鳥、どしたん?」


ぼうっとした俺の様子を見て心配したのか、眼前の女生徒が俺の顔を覗き込むようにしながら聞いてきた。


「…あぁ、いや。なんでもないよ。…まだ時間はあるし、そのうち来るだろ」


自分にも言い聞かせるようにして、それに応える。

そう、もしかしたらちょっと寝坊したとか、そんな所だろう。

俺は、自分の席に戻ろうとした。


だが。


「くっ、くく…」


教室のある箇所から、笑いを堪えるような声。


「………?」


俺はそちらを振り向く。


そこには。


「よぉー。白鳥。元気してた?」


天羽あもう 凪津なつ


俺のクラスメイトにして、俺がまだ話した事のない面子の主人物だった。


いや、こいつに関しては、話をしたことのない、というのも間違いだろう。


俺が学校の復帰したあの日。

亜紀が教室を飛び出したあの出来事のそもそもの原因は、こいつのせいだった。


…まあ、あれが起こっていなければ、亜紀とまた昔みたいに話すこともなかったわけなんだけど。


そんな事もあってか、俺はこいつを嫌っていたし。

…おそらく向こうも、俺を毛嫌いしているのだろうと思っている。


何故いきなり嫌われているのかは分からないが。


「天羽…。悪いが、今はお前に構っている暇はないんだ」


「あはっ、もしかして……亜紀ちゃんの事だよねぇ?」


舐める様な言い方だった。

言葉にしただけでは、ただ単にこいつが俺が亜紀の事を探している、と算段を付けただけのようにも感じるが。


俺は、こいつが亜紀の事を何か知っている風に感じてならなかった。


「……そうだけど」


「うん、そうだよねぇ。折角昨日デートの予定だったのにねぇ!」


デート、という単語に教室中がざわめく。


だが、俺はそんな事に構っていられなかった。


「…どうして、そんな事をお前が知っているんだ」


そう。

デートか云々かはともかく、俺と亜紀の遊ぶ予定等は、俺と亜紀、あとはイラハしか知らない筈だ。


にも拘らず、こいつは今おそらくその事を指して言っている。


「どうしたもこうしたもないっしょ。…昨日は散々だったねぇ、白鳥ィ!!」


「………っ!!!」


全て、察した。


昨日のチンピラ達。

彼等を差し向けたのは、今眼前にいる天羽だったのだ。


そして同時に、思い出した。

あのチンピラの言葉だ。


『皐月 亜紀はここにはこない』


あいつらの言った通り、亜紀が結局待ち合わせ場所に来ることはなかった。


そして、あいつらがその事を言ったという事は。


恐らく、そちらもこの天羽の仕業だろう。


「あはっ、大体察した感じ??」


天羽が言う。


「………お前がやったのか」


「うーん、そうだねぇー」


そのぶっきらぼうな物言いに段々腹が立ってきた。


「亜紀をあの時どうしたんだ?」


「さぁ?全部兄貴がやってくれたからねぇ」


「兄貴……?どういう事だ」


「うーん、説明すんのだるいし。その辺の人が知ってんじゃないの?」


天羽がクラスを見渡す。

皆、天羽と目を合わせないように目を逸らしていた。


「チッ。まあいいや、とにかく、亜紀ちゃんの事はアタシどうなったか全然知らねーから。自分で考えて?」


「なっ…」


流石に理不尽すぎる。


俺は天羽に向かって言葉を投げかけようとした。


だが。


「あ。もう時間みたいじゃん?早く席ついた方がいいんじゃない?」


天羽に言われて、時計を見る。


もうそろそろホームルームが始まる時間だ。


「な……」


亜紀は?


亜紀は、まだ来ていない。


俺は天羽の方を見る。


「あら、まだ亜紀ちゃん来てない感じ?珍しいじゃん」


そう言って、わざとらしく手を広げる天羽。


まさか、と思った。


俺は今まで亜紀はちょっと遅れているだけだ、と思っていた。


冷静に考えてみる。

亜紀を俺と合わせないようにする為には、どうするのがいいのか。


どうすれば、確実に俺と亜紀が一度も接触せずに一日を終わらせられる事ができるのか。


その時だけを妨害したとして、亜紀ならばその後メール等で連絡してくる筈だ。


ここまで考えつけば、後は容易く結論にたどり着いた。


亜紀は今、連絡等もとることができない状況なのではないか?


自分が浅はかだった。

自分の事で精いっぱいだった。


自分の怪我の事を優先的に考えていたせいで、亜紀の事を全く考えていなかった。


何故、あのチンピラ達が亜紀の事を知っていたのか。


簡単だ。

恐らくあのチンピラ達は、俺と同様に亜紀の事も狙っていた、という事だろう。


しかも言動から察するに、俺が来るより前に事は終わっていた。


「…………なんてこった…」


俺はボコボコにされるだけで終わっていた。

だが、亜紀はどうだったのだろう。


考える。


今日、亜紀は学校に来ていない。

先程の結論から、連絡も取れない状況である。


考えられる可能性としては、幾つか思いついた。


俺同様、もしくはそれ以上に怪我を負い、連絡も取れない程に負傷しているか。


或いは、無力化された後、どこかに誘拐されたか。


そこまで考えて。


「おーい、ホームルーム始めるぞー」


担任の声。


集中を寸断された為、そこまでで思考が終わってしまう。


「…後で、天羽を問い詰めてみるか」


小声で呟くと、俺は席についた。






「だーかーら、あたしは何も知らないって!だから言ってんじゃん、兄貴に全部やってもらったって」


ホームルームが終わった後、俺は天羽の元に行き、亜紀の事について、あのチンピラ達の事について尋ねた。

そして、帰ってきたのはこの言葉である。


「じゃあその兄貴に会わせろよ」


こいつが駄目ならその兄貴とやらに会ってみようと思った。


しかし。


その言葉を口にした瞬間、俺達の会話を横目で見ながら聞いていたクラスの面々がどよめいた。


「おいおい、あいつやべえぞ」

「白鳥、ちょっとやばくね?」

「天羽さんのお兄さんって…」


などなど、様々な会話が聞こえてくる。


「……………?なんだ…?」


俺は呟いた。


「んー、なんだろーねぇ?」


天羽がまたしてもニヤニヤとした笑みを浮かべてくる。


「おいっ!おい、白鳥!!」


とんできたのは、よく知っている声。


信楽だ。


「どうした、信楽」


「いいからちょっとこい!」


そうして、俺は信楽に連れられて、クラスから出ていく。


「あー、もう終わり?つまんないねぇ」


天羽の言葉が聞こえてきた。


何か言い返したかったが、信楽が待て、というように促した為、何も言わずにその場を後にした。





男子トイレにて。

俺は信楽から説明を受けていた。


「いいか、白鳥。天羽に目をつけられたら相当不味いことになるんだ」


「…なんでだよ」


「あいつ自体はそれ程でもない。ただ、あいつの後ろに控えている連中がまずい」


「天羽の後ろって…、どうせあのチンピラ共だろ…?」


「どうせあのチンピラ共…って、白鳥まさか何かされたのか!?」


「ん…あぁ、ちょっとな」


ちょっと喧嘩(一方的)しただけなのだが、信楽のこの様子は少し異常じゃないか?


「多分そいつらはまだ下っ端の方だ」


「…下っ端?」


あまり日常では使われない言葉が飛び出す。

下っ端とは、大きな集団における、下の方の人間を指す言葉だ。


と、いうことは。


「白鳥。この辺り一帯の不良共の集団があるのを知っているか」


「不良の集団?」


「ああ。その言葉だけだとそんなに大したもんじゃないように聞こえるが、実際は違う。この辺り一帯の野蛮人達の集まりだ。高校生、中学生、社会に馴染めず街を屯する大人、とにかく様々な年齢の人間が、莫大な人数その集団に所属している」


「…はあ」


急にスケールの大きな話だ。


「そいつらは自分達を、愚者の牙(ザ・フール・ファング)と名乗り、この地域一帯の治安を悪くしているんだ。中には犯罪に手を染めているって噂もある」


「確かに凄そうだな…。でも、それと天羽に何の関係が?」


「何故そんな様々な奴らが、一つに集っていると思う?」


「……強大な力をもつ奴がいるのか?」


思い起こすのは、国を纏めあげる王の姿。


人は、突出した人物に憧れ、ついていくものだ。

そのような人には、人を惹きつける力がある。


俺は、そのような人物を何度も見てきた。

何度も関わってきた。


人々は全幅の信頼を置き、自らを委ね、貢献する。


それだけの価値があるのだ。


そのような人物には、必然的に人が集まってくる。


だから、集団というものには、トップに立つ者がいる事が多いのだ。


「ああ、そうだ」


信楽が頷く。


「そいつの名前は、天羽あもう 豪架ごうか。…天羽の、兄だ」


「まじかよ…」


肝が冷えているのが分かる。


もし、そんな奴に亜紀が目をつけられたいるならば。


そんな事を考えると、居ても経ってもいられなくなった。


俺は、男子トイレから出た。


「お、おい!白鳥、どこ行くんだよ」


「亜紀が家に帰っているか確認する」


もし、ただ怪我をしているだけで学校に来ていないのならばまだいい。

病院などにいる可能性もある。


だが。


まだ、家に帰っていないのであれば。


最悪の想像が頭を過ぎる。


「皐月さんの家に…?って、学校は!?」


「そんな事に構っている場合じゃねえんだよ!」


「なんでそんな…。まさか、今日学校に来てない皐月さんに関係があんのか!?」


「……いや、なんでもないよ」


信楽が事情を知れば、こいつは確実に心配するだろう。

そうして関わっていけば、こいつまでそんな奴らに目を付けられる可能性がある。


ならば、こんな事からは遠ざけた方がいい。


そう思ったのだが。


「なんでもないって…。お前、会話から察するに多分天羽の奴に目ぇつけられてんだろ。皐月さんもよ」


思ったよりも鋭い。


「……ん、まあ…。…そうだな…」


「なら、俺も放っておけねぇな」


「おい、お前もその愚者の牙(ザ・フール・ファング)って奴らに目をつけられるかもしれないぞ」


「それがどうしたってんだ。クラスメイトのピンチだぜ?なら、放っておけねぇじゃねえか」


「信楽…」


「だから、俺もついていく。授業受けんのもだるいしな!」


そう言って、ニカッ!と笑う信楽。


恐らく、こいつも内心では怖い筈だ。


俺達二人が危機に陥るのを見て見ぬふりは出来ないのだろう。


そんな信楽に、俺はただ純粋に感謝する。


「ありがとう、信楽。…じゃあ、行くぞ」


「…ああ!皐月さんが無事だといいな!」


そうして、俺達は亜紀の家へと向かっていった。

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