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侍戦記  作者: 五十猫
第1章︰職業は……「SAMURAI」?
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#07「侍はギルマスに会う」

ギルマスの部屋の中、奥の大きな机に腰かけていたのは……

肌の浅黒い、少年だった。

サリーと同じく、黒いスーツを着込み、黒いネクタイを締めている。あれはギルドの制服なのだろうか。

ギルマスの息子さんか何かだろうか?

顔は整っているが、身長が無い。

多く見積って、百六十もないだろう。

少し不機嫌そうな表情をした彼が、口を開いた。


「サリー?十二の刻を少し過ぎたこの時刻、貴女と会う予定は無いはずなの。」


声の高さはアルトだった。

つまり、この子はギルマスの「息子さん」ではなく「娘さん」だったのだ!……まぁどうでもいいけど。


「それがマスター、この二人のレートを上げて頂きたくて。」


あれ?マスター?この娘が?いやそんなハズは。


「何故なの?その二人、つい昨日ギルドに登録したばかりなの。

そりゃあGレートは嫌かも知れないけど、最低でも五つは依頼をやってもらわないと、レートは上げられないの。」


何かギルマスで間違いないっぽいな。会話からすると。

えぇ……こんな小さいのに?


「小さいとか言うなっ!それも二回も!」


ギルマスが叫ぶ。

……?

今僕は、確かにあの娘を「小さい」と形容したが、それは心の中の話であって、口に出してはいない。

そんな失礼なこと、僕はしない。


「あぁ、マスター、またアレですか。」


サリーがため息をついて言う。

アレってなんだ?


「アレとは、私のスキルの事なの。」


また心を読まれた!……あぁ、つまりそういう事か。

多分あってるが、答え合わせといこう。


「……人の心を読めるんですね?」


「正解なの。まぁ、正確には相手の魔力の流れを読んで、そこから心の機微を予想できるっていう使えないスキルなの。本来は。」


「本来は、という事は、貴女はそのスキルを、本来とは違う使い方を?」


「それについては企業秘密、なの。」


ギルマスが不敵に笑う。


「僕はジン。彼女はヒナ。

僕達は二人共、十五歳で、貴女のギルドには昨日登録しました。

よろしくお願いしますね。」


「私はマリーなの。

歳は……見た目通りとはいかないの。

このベルの街の冒険者ギルドを預かっているダークエルフなの。」


ダークエルフ!珍しい亜人だ。

エルフとは、耳が人間より長く、その魔力は人の限界を易々と超え、ほぼ全員が精霊魔法と弓の名手。

ダークエルフは魔力をエルフよりも多く持っており、強い攻撃が可能の、「攻撃特化のエルフ」だ。

共に森で集落を作り暮らしていると聞いたが……。


「話を戻しますね。マスター、ジンさん。」


サリーが笑顔で言う。

だがその目は笑ってはいない。怖い。マジ怖い。


「話の腰を折って、悪かった」


「悪かった……なの。」


ギルマスと二人して頭を下げる。

そんななかヒナは大人しいものだ。

部屋に入ってからずっと黙っている。

……あれまさか寝てないよな?


(……スー……スー……スー)


立ちながら寝てる……しかもサリー気付いてない……

え?マジで気付いてないの?バレたらやばいよねこれ。



「マスター、彼らには、レートアップするだけの力があります。

聞くところによると、ジンさんは広範囲探索魔法で迷子の猫を一時間足らずで発見、捕獲したそうですし、ヒナさんは薬草とそうでない草の判別がつきその上採集も手馴れています。

彼らは、Gレート冒険者が一日かけてやる依頼を二つも、ほぼ午前中だけで終わらせてしまったんですよ?

これはCレート冒険者相当です。

私達には、高レートの冒険者を遊ばせておくだけの余裕なんてありません!

……以上の理由で、彼らはレートアップするべきです。」


サリーは最後に締めくくるように言った。

マリーが答える。


「なるほど……レートが低すぎる、なの。しかし彼らはまだ登録したてのヒヨッコなの。

レートアップするのはまだ早いの。」


「ですが……!」


「そこで、テストをするの。」


「テストですか?」


「そうなの。このテストに受かったら、レートをCレートにまでアップするの。」


話がとんとん拍子に進んでいく。

ヒナもまだ眠ったままだ。


「そのテストとは……オーガ討伐なの!」


「「オーガ討伐!?」」


僕とサリーの声がハモった。その声でヒナが起きた。


「オーガ討伐って、何の事です?」


「オーガを一対一で倒せるというのが、Cレート冒険者の最低条件なの。

だから、手っ取り早くオーガ討伐をテストにするの。

監督には、Aレート冒険者のフェーンを付けるの。」


「オーガかぁ。

私、先にゴブリン倒したかったなぁー。」


ヒナが寝ぼけて言う。


「安心するの。

ゴブリンよりオーガの方が百倍も強いから、退屈しないですむの。」


っえ?


「いやいや、僕達、つい先日職業を貰ったんですよ?

オーガなんてとても倒せないですよ!」


「大丈夫なの。

テストは一週間後に行うの。

それまでに職業レベルを限界まで上げれば、勝ち目は見えてくるの。

そこまで持っていく根性が無いと、Cレートになんてなれないの。」


マリーが、微笑んだ。

……とても悪い笑みだ。


「……小さいとか言った罰なの」


サリーには聞こえなかったろうが、僕には聞こえた。

この人、性格悪いな。




かくして僕らは一週間後、レートアップテストを受ける事になってしまった。

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