# 02「少年は職業をもらい侍になる」
「え、『さむらい』って………………なんすか?」
「至極当然の質問だな。だが残念な事に俺はその職業を知らない。今までの記録に無いんだ。説明のしようがない。」
目の前が真っ暗になった。
「さむらい」?なんだよそれ。
聞いたことも無い職業。
神父様ですら知らない、そんなマイナーな職業。
これじゃあ、父さんと母さんを探しに行けないじゃないか。
今までの苦労も、報われないのか……。
「あ、いや、ちょっと待てよ。
何世界の終わりみたいな顔してんだよ。お前。」
「え?」
「お前な。職業は、スキル見てから良いか悪いか決めんだよ。しかもこの職業、全く見たことない職業だけど、貰えるスキルが死ぬ程良いぞ。ちょっと見てみろ」
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職業︰侍(Lv.1/∞)
スキル
・剣術(D)
・鍛治(D)
・魔法格(A)
・魔力操作(S)
・聖魔法(A)
・闇魔法(A)
・炎魔法(A)
・水魔法(A)
・雷魔法(A)
・風魔法(A)
・土魔法(A)
・魔術(A)
・精霊魔法(S)
・多重思考(S)
・鑑定(SSS)
称号
【侍】【護る者】【斬る者】
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僕は目を疑った。
「……何ですかこの凄まじいスキルの羅列は」
「俺も、こんなに初期値が高いのは初めて見る。昔王都で神父やってた時に、1回だけ「勇者」を授けたが、それより上だ。上位互換かもな。」
「勇者よりも上位の職業なんて、初めて聞く……」
「それよりお前、自分のスキルの、「鑑定(SSS)」で自分を見てみたらどうだ?
多分、この水晶玉より詳しくでるだろ。SSSともなれば。」
「……そうですね。家に帰ってから、見てみます。」
「あとお前、この凄まじいステータス、むやみに人に言うと多分だが、嫉妬で殺されたり、王都から召集掛かったりすっから、その辺気ィ付けとけ。
じゃあ、面倒事が起こる前に行った行った。
俺はもう一眠りする……」
それでいいのか自称敬遠なる信徒よ。
「わっかりました。……ありがとうございました。」
「おうよ」
僕は、呆然としながら、部屋を後にした。
◇
部屋を出ると、ヒナが待っていた。
目をキラキラさせて、神父様から貰った職業とスキルの紙を眺めている。僕に気が付いて、近づいて来た。
「ねぇ、ジン、どうしたの?なんか、いつもと様子が違うけど……?」
「いや、大丈夫。ちょっと職業が予想外だっただけで……」
「そうなの、ジン。もし、職業が冒険者向けのやつだったなら、私とパーティー組んで欲しいと思ってたんだけど…………どうだったの?」
ヒナは上目遣いに僕を見る。やばい可愛い。いつもと変わらないヒナの態度のお陰で、どうにか平常心を取り戻すことが出来た。
「……う、うん。貰った職業は冒険者向けだったから、いいよ」
「やったー!え、ちなみになんだったの?「魔法剣士」みたいなの?」
「ま、まぁ似たようなものかなー?」
嘘では無い。「魔法剣士」の上位互換が「勇者」で、その上位互換(と思われる)が「侍」だからだ。
断じて嘘ではない。
……でも、ヒナには言っても構わないとかも知れない。
神父様は、むやみに人に言うなって言ったけど、ヒナは幼なじみで、僕が一番親しくしている、いわば親友だ。
ならば、言ってもいいのではないだろうか。
よし、言おう。
彼女に自分の職業を伝えようとしたその時、
『短慮だな、若いの。』
声が、した。
僕の内側から。
『お前さん、聞こえてるだろう?俺の声が。』
聞こえる。だが、知らない声だ。そこで思い当たった。スキルに、「多重思考(先任者との対話)」というのがあった。おそらく、それか。
『ピンポーン!大正解!…なるほど頭は回るみてぇだな、若いの。俺は先任者。元々は「侍」だった者達の残留思念だ。先輩とでも呼んでくれや、若いの。
それとな、お前さん自分でも分かっていないのに他人に言うなんて、馬鹿げてるぜ?』
当たりのようだ。しかし、僕が彼を「先輩」と呼ぶのに、彼は僕の事を「若いの」と呼ぶのはどうかと思うんだが。
でも「先輩」の言う事は確かに正しい。
僕は今、自分の職業について何も知らない。
確かに短慮だった。
『わーったよ。若いの。じゃなくて、後輩君。よろしくな。』
よろしく、お願いします……ってか先輩、僕これからずっとあなたと一緒何ですか?アレする時もコレする時も。それはちょっと、プライバシーが侵害されてるような……
『つってもなー。こちとら「多重思考」とかいうスキルだしなぁ。』
なんか、オンオフ切り替えるみたいなの無いんですか?又は「スキル封印」みたいなのでもいいですよ?
『怖い事言うねぇ、君。流石の俺も封印は御免こうむるなぁ。
あ、そうだ。』
?なんです?
『良いこと思い付いたから、ちょっと「そこ」、代われ。』
え?なんて?どこを代わるんです?
『「そこ」だよ。身体を俺に任せてくれ。』
え?どういう
っと、「先輩」と会話していると、ヒナが話し掛けてきたので、
あ、先輩ちょっと待ってて、その話家帰ってからで。
『あぁいいよ。お前さんの女か?大事にしろ。じゃあ、あとでな。』
先輩は静かになった。
「ねぇ、ジン、紙、見せてくれないの?」
「え?あぁ、紙は神父様の所に預けて来ちゃったんだ。僕はスキルに「鑑定」があったから、別に要らないだろうとおもって。」
「へぇー、「鑑定」かぁー!凄いなジンは!」
「そうでも無いさ、運が良かっただけ。」
そうしてヒナと話しながら歩き、家に着いた。
「じゃあヒナ、お母さんとアニキを上手く説得して、冒険者になる許可を貰えるよう、頑張れよ!」
「うん。ありがと。ジンと冒険者やるためだもんね。頑張る!じゃあねー!」
ヒナと別れ、家に入り、呼びかけてみる。
先輩?
『…………おう、後輩君か。おはよう。
お前さんがさっき言ってた、俺との対話にオンオフ付けるって話、スキル「鍛治」なら何とかなるかもだから、ちょっと身体の主導権俺に貸してくんね?』
それがあるさっき言いたかった事ですか。
『まぁ、そうだな。ちょっとでいい。
ついでに、お前に必要な「刀」も取り敢えず一本打っときたいから、代わってくれ』
まぁ、いいですけど。
昨日少し緊張して、鍛練に根を詰めすぎてあまり眠れていないし。
終ったらすぐ戻るんですよ?
『分かってるよ、後輩君。俺はお前さん、お前さんは俺だ。俺はお前さんを裏切れないし、逆もまた然り、だ。』
はい。では、どうぞ。
『悪いね、じゃあちょびっと、1日程貸してもらうぜ、後輩君。』
まぁそれくらいならいっか、と僕は主導権を手放した。
すると、身体を動かしている感覚が消える。触覚はあるが。これだと多分、痛覚もある感じだな……。先輩が言っていたことの意味が分かった。
◇
……しかし、何も出来ないのは暇だな。
自分の主導権を明け渡し、内側に潜ると、全く持って身体を動かせず、しかし触覚はあるという不思議な体験をすることが出来る。
だがそれゆえに暇で暇でしょうがない。
もう後は寝るくらいしかすることが無い。
……あ、そうだ。寝る前に自分を「鑑定」してみよう。
神父様の水晶玉よりも詳しくでる筈だし。
……よし、いくぞ、「鑑定」!
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name︰ジン
age︰15
rate︰SS
job︰侍(Lv.1/∞)
skill
・剣術(D)《使用武器が刀の場合に限り、SSS》
・鍛治(D)《刀鍛冶の場合に限り、SSS》
・魔法格(A)
・魔力操作(S)
・聖魔法(A)《「斬る」場合に限り、SSS》
・闇魔法(A)《「斬る」場合に限り、SSS》
・炎魔法(A)《「斬る」場合に限り、SSS》
・水魔法(A)《「斬る」場合に限り、SSS》
・雷魔法(A)《「斬る」場合に限り、SSS》
・風魔法(A)《「斬る」場合に限り、SSS》
・土魔法(A)《「斬る」場合に限り、SSS》
・魔術(A)《「斬る」場合に限り、SSS》
・精霊魔法(S)
・多重思考(S)《先任者との対話》
・鑑定(SSS)
degree
【侍】【護る者】【斬る者】
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えっと、新しく出たのは名前と……レート?ってなんだ?
【レート】
その人物の強さを表した数値。上から、SSS、SS、S、A、B、C、D、E、F、Gレート。
……「鑑定」で出た情報も鑑定できるのか。そして、僕はその上から二番目。え?でも職業貰って1日経ってなくない?
加えてまだLv.1だし……
え?この職業、大丈夫?