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侍戦記  作者: 五十猫
第1章︰職業は……「SAMURAI」?
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プロローグ

初投稿って訳じゃないけど本気で書こうと思ったのはこれが初めてです。拙い文章ですが、読んで頂けたら幸いです。ブクマ、コメントしていただけると、尚幸いです。

目覚める。

ベッドから飛び出し、トイレに行く。

手と顔を洗い、キッチンへ。



「おはよう」



誰もいない部屋に、僕の挨拶が響く。

朝飯にパンを食べ珈琲を飲んで、片付ける。

それが済むと、古ぼけた剣を手に取り、外へ出る。



「……うぅ……」



うっすらと出てきた日光が早速眼球にダメージを入れる。

瞳の色が人とは少し違う僕は、直射日光という奴が少し苦手だ。

なので、昔父さんがしてたように、サングラスをかける。

うん、だいぶマシになった。……多分似合ってないんだろうけど。



「……ふっ!……ふっ!……ふっ!……」



声と共に素振りする。

まだ父さんがいた頃から続けている習慣だ。

この街の人々はまだ誰も起きてこない時間帯なので、思い切り素 りができる。

斬る。仮想の敵を。ただ、ひたすらに。










素振りが終わったので、次の鍛練に入る。魔法だ。



魔法の鍛練は、家の地下室で行う。

剣を元の場所に戻し、地下室に下りて、


「《ライト》」


光を呼び出す。

十ほど呼び出したそれを、天井付近に移動させ、固定する。

物理的にではなく、「マクロ」で。つまりは命令だ。



この世界で魔法を行使したいなら、自身の「格」を上げる必要がある。

「格」を器、行使したい魔法を液体として、器から溢れてしまうような魔法は行使出来ないのだ。

「格」のレートは上はSSS、下はGまでの十のレートが有る。

生まれたばかりの赤ん坊がG、成人となる十五歳でEくらいだろうか。

個人差はあるが、大体そんなものだ。

まぁ僕は今十五歳でDレートだが。



ちなみに、今僕の行使した「《ライト》」は、格が一番低いレートでも行使出来る。



「……」



マクロを無詠唱で、天井の「《ライト》」を操作する。

十個それぞれに、別々の動きをさせる。


これは、魔力操作の鍛練だ。

これをほぼ毎日こなしてきたことで、僕は今、職業を得ていないにも関わらず、Dレートという大人顔負けの格を得ている。

格は、色んな方法で上げる事が出来るが、これが一番効率が良い。最後に会ったときの母さんの格が確か、Aだったか。これは、ただの冒険者としては非常に高い値だ。

それもこれも、母さん自身が編み出したこの鍛練のお陰だ。

僕もこれを、まだ母さんがいた頃から習慣にしている。



「《ライト》」の操作をしながら、地下室に置いてある木剣を手に取り、素振り。

これは独自に編み出した鍛練だ。

「ライト」は見ず、感覚だけで操作する。



自身で作り上げた魔力レーダーで《ライト》を知覚・操作しながら、木剣を降る。






僕はこれらの鍛練を、五歳くらいの時からずっと行ってきた。

理由はただ一つ。

「勇者」の職業を得るため。



この世界では、十五歳で神様から職業を頂くことが出来る。

その時、その職業を始めるのに適した力、スキルを得ることが出来るのだ。


つまり、「剣士」の職業を得れば、同時に「剣術」のスキルを得る。

「魔導師」の職業を得れば、「魔導」のスキルを得る。

スキルの後に付いてるアルファベットはレートだ。

熟練度や理解度により変動するそれの上限は、SSSだと言われている。

まあそこまで努力と根性で上げる強者は、滅多にいないが。



僕は小さい頃、「勇者」に憧れ、その職業を得る為にはどうしたらいいのか、元冒険者の両親に相談した所、



......................................................




『「勇者」になりたい、か……俺も昔はそんなだったなぁー。

いろいろと試行錯誤したっけ。まぁ、結局貰った職業は「剣士」だったけど。』


『でも、方法が無いこともないんじゃない?』


『ほう、その心は?』


『「素質」よ。』


『なるほどなぁ。職業がその人に合ったものを与えられてるんだとすれば、職業を貰う前にある程度戦闘能力があったり、魔力が使えたりすれば、「勇者」も夢じゃないってハナシか。……一応、筋は通ってる。』


『そう。……もしかして試した事、ある?』


『無いよ、無い無い』


『うっそ、じゃあなんで分かったのよ?私が「素質」って口走っただけで、そこまで理解出来る頭、あんたには付いてないでしょ』


『ほざけ、惚れた女の考えることくらい分からないで、冒険者が務まるかよ』


『あなた……』



......................................................



という会話を経て、僕は自分に眠る「素質」を引き出すことで、「勇者」の職業を得ようと、15になる今日まで父と母の考案したこのキッッッツイ鍛練を続けて来たのだ。



その両親は、数年前に久々に冒険者として指名依頼を受け、その仕事の最中に行方不明になってしまった。

僕は「勇者」になった後の目標は無かったが、両親の失踪があってからは、両親を探す旅に出るつもりでいる。



「……ふっ!……ふっ!……ふっ!……ふっ!!」



そろそろ終わろうか、といった時に、都合良く鐘が鳴った。

これは、僕の住む街で、七の刻、十二の刻、十七の刻に鳴る鐘で、つまり今は七の刻。



木剣をしまい、《ライト》を消し、地下室を後にする。



汗をかいたので、井戸で水を浴びてから、剣を腰に吊るし、よそ行きの服装になる。



今日はいよいよ、教会で職業を得る日だ。

(死ぬ程辛い)鍛練を(面白半分で)考えてくれた父さんと母さんを見つけるためにも、僕は「勇者」を貰わねばならない。



僕は気合いを入れ、扉を開けた。

先程より一層強くなった日光が、僕の肌を焼く。

それは何故か、少しだけ心地よかった。

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