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第二十一話「戦いは続く」

「ぐ、こりゃひでぇな」


「意識はあるようです。すぐに運びましょう」


 河原でホームレスのじいさんと別れ、ニシキヤへ向かっていた俺とカホは、橋の下で傷だらけの少年を発見していた。


 最初は、その辺の不良共のいざこざの被害者かと思われたが、そうではないようだ。


 少年は苦しみながらも、鉄の塔がどうとか言っており、しきりと南の方角を指さしていたのだ。


「鉄の塔? そこにお前をやった奴がいるのか? ああ、気を失っちまった」


「あ、ショウスケさん。あれ、見てください」


「え? うお!」

挿絵(By みてみん)

 カホの指さす先には、巨大な鉄の塔が立っていた。


 河原へ入る前には、確かに何もなかったはず。


 わけが分からなかったが、今は考えている場合ではない。


 俺は帰社すると、少年を医務室に運んだあと、ソウジの元に報告に行った。


「どう思う? やっぱり、ワルデットのしわざだろうか」


「おそらくね。数時間で塔を作り上げるなんて、人間業じゃないからね」


「さっきの奴以外にも被害者がいるんじゃねぇのか?」


「可能性は高いね。はぁ、ボスが不在の時だっていうのに」


「とりあえず、現場に行ってみりゃ、詳細は分かるだろ」


 俺とソウジは先発としてすぐに出撃した。


 しかし、予想通りと言うべきか、鉄の塔付近にはすでに大量のワルデットたちが配置されており、入り口も強く固められていた。


「ふぅ。さっそくかよ、おい」


「う! き、貴様ら、エイキュウカンパニーだな!」


 ワルデットたちは武器をかまえると、一斉に襲い掛かってきた。


 俺はひるまずに奴らの中に突っ込んでいくと、片っ端から殴り倒していった。


 後方にひかえていたワルデットたちは銃をかまえ援護しようとするが、今度はソウジが高速移動からの連撃で、蹴散らした。


「く、くそ、強い」


「ホラホラ、どうした。さっさとドーピングでも何でもしろよ」


「ショウちゃん、挑発しないで。まだ中に強い敵が控えているかもしれないんだよ」


「しかたない、あれを出すか。オイ」


 ワルデットの一人が塔の中に合図を送ると、仲間と思われる連中が入口から出てきた。


 彼らの首にはリングがなく、人間であることがすぐに分かった。


「まさか、人質にでも、するつもりなのかい?」


「そんな卑怯な事はしないさ。やれっ!」


 ワルデットたちの命令を受けると、人間たちはいきなり俺たちに襲い掛かってきた。


「オ、オイ、何のマネだ! まさか、あやつられてんのか?」


「いや、意識はしっかりしているみたいだ。だとしたら」


「うう。ん?」


 俺は襲ってくる人間たちの首元にシールのようなものがついているのを発見した。


 何やら、ピコピコ赤く点滅しており、何かが内蔵されているように思えた。


「あれに何か仕掛けがありそうだな」


「う、だ、だめだ。俺にはできない」


 俺たちと戦う事を躊躇した一人の男が武器を捨て、逃げ出そうとすると、いきなり大爆発を起こした。


 続けて、後方で戦わずにうずくまっていた老人も爆発し、近くにいた人間たちも巻き添えをくらった。


「な、何だ。どうなってんだ、オイ」


「まさか、あのシールは爆弾?」


「バカめ、我々の命令に逆らうからだ」


 どうやら、人間たちはあの爆弾シールを首に貼られ、無理やり戦わされているようだ。


 さっきのやり取りを見る限り、無理やり剥がそうとしたり、命令にそむいたりすれば、爆発する仕組みになっているのだろう。


「爆弾シールか。厄介な能力だね」


「オイ、こいつら、どうしたらいいんだよ」


「よし、ボクにいい考えがある」


「おう、どんな方法だ?」


「入り口に向かって、全速力でダッシュだー!」


「って、オイ! 逃げろって事じゃねぇか!」


「しかたないよ。あの人たちを傷つけずに解放する方法なんて、この状況でできるのかい?」


 俺とソウジは全速力で走り、門番を突き飛ばしながら塔の中へと逃げ込んだ。


 しかし、入口を閉める前に人間たちもすぐに入ってきた。


 うかつに傷つけるわけにもいかず、俺たちは前に進み続けるが、上の階から下りて来たワルデットたちが前方にたちふさがった。


「さぁ、袋のネズミだぜ」


「お前らを殺さないと、俺たちが殺されるんだ。悪く思うなよ」


「やれやれ、言うとおりにして助かっても、アジトに連れて行かれるだけだってのによ」


「やれ、人間共!」


「ソウジ、どうすりゃいいんだ。逃げるだけってわけにも、いかなくなったぞ」


「やるしかないようだ。ワルデットは倒していいけど、人間たちには手加減するように。うまく使い分けて」


「むずかしい注文だな、そりゃ」


 考えてもしかたないので、俺とソウジは人間とワルデットの混合チームに向かっていった。


 しかし、人間も混ざっている事を考えると、想像以上に戦いにくい。


 ソウジはともかく、俺はうまく加減ができず、人間に必要以上のダメージを負わせてしまうなどの失敗をしてしまう。


 また、人間との区別をわからなくするためにわざと自分の首元のリングを隠しながら戦うワルデットなどもいた。


「姑息な手を使ってくれるね」


「オイ、お前ら、もうやめろ! 俺がこいつらを倒して、お前らを解放してやるから」


「え? ほ、ほんとに」


「だまされるな、人間共。コイツらにあの方たちは倒せん。裏切れば、即抹殺するぞ」


「くっ、このままじゃ、体力がみるみる削られていく。しかたないね」


 ソウジは、階段に足を踏み入れたところで、隠し持っていた器具をすばやく組み立て、後方に簡易のバリケードを作った。


 追ってきたワルデットと人間たちは、そのせいで前に進めなくなり、立ち往生してしまう。


「何だよ。すげぇ道具持ってんじゃねぇか」


「はぁ、はぁ。これで彼らは追ってこれないけど、まずいよ。この先には、おそらく上級ワルデットがいる」


「ああ、だよな。爆弾シールに鉄の塔。通常のワルデット共に作れる代物じゃねぇからな」


 前には上級ワルデット、後ろには雑魚ワルデットと人間たち。


 囲まれた自分たちはキズだらけで、さっきの混戦で携帯を落としたため、援護も呼べない。


 ソウジの言うとおり、まさにかなりまずい状況だった。


 しかし、ここまで来た以上、もう答えは決まっている。


 俺は覚悟を決め、上の階へと上がり始めた。

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