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第7話 どっちもどっちで

「で? 貴様の《兄上》は? 最近は会ってるのか?」


 式神が持ってきた湯呑みに、威六が口をつけた。

 伊藤に遠回しに兄である彼の近状を聞いた。

(叔父上、自らが偵察とは)

 ふぅ、と伊藤も湯呑みに口を寄せた。

「いいえ。でも、ちょくちょく、文が届く程度です」

 今日も、とは伊藤はいわずに茶を飲んだ。

(なにか。策でもあってのことなのかな? さてはて)


 面倒だな。


 その言葉を、伊藤も飲み込んだ。

 溜息ともども。

「気に、かかりますか? 叔父上が兄上なぞを」

「! ぁ、……いや。ただ、聞いただけだ」

「そう、ですか」


 戸惑ったような、曖昧に弱い返事しか出来なかった威六に、伊藤は、さらに追撃の手を緩めずに、続けた。


「兄上は――【昼行燈】ですから、気にかけるだけ叔父上にはどうだっていい存在なのではないでしょうか? いてもいなくとも。叔父上の役には立ちませんよ」


 声を張り上げて伊藤は威六に吐き捨てた。

 言われた当の本人である威六は、お茶を飲み干し中を見据えていた。

「お代わりをくれんか? 喉が乾いてしょうがないわ」

 つっけんどんに、吐き捨てた。

 水不足の昨今。

 それでも、ここ――【伊ヶ谷大社】のに備蓄があり、それを使用していた。

 街人も、そのことに声を上げることをしないのは、伊藤への信頼と崇拝。

 その一点だけだった。

 しかし、それはあくまでも本家に対してであって。

 分家の威六たちは、そうはいかない。

 憎しみと、やっかみの対象だ。

 そのためか、分家は隠し事が多く。

 そのことにも、街人は厳しい目を向けて、牙をむけていた。

 

「そう言われる気がしたので。急須もありますよ。叔父上」


 カランっ! 急須の中で氷が鳴る。

 熱い夏場であるいまは、冷たい粗茶をおもてなししている。

「すまんな。くれんか」

「……はい」


 ずい、と威六が湯呑みを伊藤へと腕を伸ばして渡す。


(首、この細い首を……いや。まだだ。威六、早まるな!)


 威六は自身に、そう言い。

 衝動を抑え込んだ。


 コポコポ、こぽぽーー……。


「どうぞ。叔父上」

「うむ。すまんな」

「いえ」


 微笑を威六に向け、伊藤が口端をつり上げた。


親族ニンゲンが、一番恐ろしい……)


 ◆


「い、つつつ……ともテル殿、いきなり掴み掛るとは」

 庵の頬には鋭利な傷痕と、赤く腫れている。

 その犯人でもあるともテルは、目を鋭く釣り上げ、歯を噛みしめていた。


 ギリギリーー~~ッッ!


「うっせェッッ!」


「!? もう、一体全体と。オレが何をしたというんだよ~~」

 泣き声で庵も聞くが。

「黙れってんだよ!」

 びく、っと身体が揺れた。

「っひ! ふぁい……」

(この軟弱がぁ~~‼ なんだ! 私は見るに値しないか! 魅力がないか!)

 ギリギリ! 

 大股に歩くともテルに、庵がいう。


「ああ。そんなに歩くと、身体に触るよ? 時期でしょう? さっき見た感じだと」


 ともテルは言葉に、反応が遅れてしまう。

 そして。


 ぼっ!


 大きく身体が動揺に揺れた。


「っみ、見てた、の?」

「え? まぁ。見せられちゃったし? 仕方ないよねw」

「ぅ゛うう゛--~~ッッ‼」

 

「え? ともテル、殿??」


 徐々に、ともテルの腕に羽が生えていく。

 爪が伸び、伸び、伸び。

「え? あの、オレ……なにか、地雷に触れた??」


「最っっっっ低‼」


 ばっこ――んッッ‼‼


 ◆


「しかし。神器も、あの兄上が所持とはな。本来なら、伊藤。お前が持つべきものだろ。なぁ、伊藤住職様ぁ~~?」


 切り分けられた羊羹を、威六は口に頬張った。

 それは、伊藤も同じだった。

「羊羹。美味しいですね、叔父上」

「ああ。堪らん美味さだな」

 話しをはぐらかせた伊藤に乗せられた威六は、また一切れと、羊羹を頬張った。


(兄上が好きそうな味だ)

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