第6話 水と○○心
「やっぱり。どの井戸も、干上がっているな」
「ま。廃れた村の理由には、それしかないだろうな」
腕を組みながらともテルがいう。
「水がなければ、どの種族も苦しいからな」
「そうなんだよね~~」
苦笑交じりに庵が、ともテルに答えた。
そして。
腕を前にスライドさせた。
ヴォン!
【経文陣】が浮かび上がる。
字も光り輝き、浮かび上がっている。
「む」
咄嗟に、ともテルが【モモノ・フ記録】に書き写していく。
ただ。
文字が眩しく、凝視出来ず。
写すこともままならない。
「っくそ!」
ついには、ともテルも諦めて閉じてしまう。
それを、確認したかのように庵も。
「《水よ。甦れ‼》」
字に指を添え、強く唱えた。
すると、どうだ。
地鳴りが起こった。
っご。
ゴゴゴゴーーッッ‼
「ぅ、おおう!? おい! 馬鹿坊主‼」
「あー少し、揺れるよー」
「~~ッッ‼ 遅いッッ‼」
「えー」
にへらと微笑む庵に、ともテルの唇が前に突き出てしまう。
頬を膨らませつつ、胸を抑える。
「っび。びっくりさせてるんじゃねェよ!」
「うんうん。今度からは気をつけるよ」
「ああ。そうしろよな!」
いい合いしている間に、地鳴りも収まった。
「で。なにをしたんだよ。私に説明をしろ!」
「ちょっぴり、水滴があったからね。それを増水させたんだ。って、言っても僅かだけどね。だから、この辺りは潤うし。動物たちの憩いの場にもなるだろう」
【旋律】で肩を叩く真似をし、掻い摘んで説明をした。
それに、ともテルは。
「んじゃ。井戸じゃなくたって、その辺のが動物も喜ぶんじゃねェの?」
思ったことをいう、とだ。
お? という表情を庵がさせた。
「だって。井戸ってのはかなり下だろう? 飲めるのも限っちまうじゃねェかよ」
「そっか。それも、そうだねー」
庵は旋律を井戸にさし、勢いよく上げた。
っざ、っばァあああァアアッッ‼
すると、中から水が生き物のように吹き上がった。
「あ。どこに降ろしたらいいかなー? ともテル殿」
「……降ろさないってのも案だと思うぜ。地面だと、奪われるだろうし。すぐに根こそぎだろうさ。干ばつだからな、どこもかしこも」
庵は水柱を見つめた。
「うむ。それもそうかもしれないね」
「で。んなことも坊主の【昼行燈】は出来るのか?」
ずい、と顔を庵に向けるともテル。
「オレは【昼行燈】にして、【伊都】を管轄とする警備員。出来ないことなんか、作らない!」
旋律を回し、水柱を丸く丸めていく。
器用にも。
シャボン玉のようにーー丸く。
キラキラと、輝くそれに。
「…………」
ともテルは無言で、記録を取り出し。
図解を書き、文を書き進めていく。
――このとき、私は確信をした。
――この小さな【昼行燈】こそが、世界の規律を守っているんだと。
――まだまだ。彼を知らなければ、この記録に価値はない。
――私は、この坊主に寄り添おうと思う。
はた。
ビリビリ‼
「破ったらごみになっちゃうよーもー~~」
「煩い!」
「あー怒られちゃったかー」
――この坊主は【昼行燈】と呼ばれ、恐れられている。
――理由は知らない。
――だから、知るためにも私は。
パタン!
「ん? もう書かないの? 記録」
「いい。終わったし」
「そ。宙に浮く水玉って、気色悪いかな? みんな、飲んでくれるかな?」
ともテルが、腕を伸ばして水玉の中に突っ込んだ。
「っつ!」
余りの冷たさに、ともテルは声を漏らしてしまう。
「きもち、ぃい♡」
「あ。水浴びする? いいよーオレも浴びたくて堪らなかったんだよー」
「……はァ゛!?」
ドスの効いた声で、ともテルも聞き返してしまう。
彼は彼であり、彼女でもある。
厄介な身体だ。
ある周期によって、身体が巨躯が、線が細くなり。
胸も膨らみ、下半身のものも吸収される。
今が、その周期だった。
「え。いいじゃん」
「……おい。キサマ、本気で言っているのか?!」
「え。うん? もちろん??」
真剣な表情の庵に、ともテルが額に手を当てた。
「え。そっか、オレなんかじゃ、人間臭くなるもんな……先に、浴びていいよー」
しゅんとした表情に。
「いい! 分かった! 一緒に浴びればいい‼」
バシュ!
思い切ってともテルも上を脱いだ。
胸元はふっくらとしていた。
男のものとは明らかに異なる。
ドキドキ。
ともテルが庵を見ると。
「……――」
水玉の中に褌の格好で入っていた。
「はァ?!」
気持ちよさそうに、平泳ぎをしていた。
目を開けると、ともテルを手招きをする。
「ぶっ殺す!」




