第4話 旅の除け者
「ウェン? どうだい?」
ともテルと庵は、廃屋と化していた小屋に滞在していた。
庵は一人深い森の中に入り、そこの中で【ファイル】を開いていた。
中に封じ込めていた妖を解放をする為であった。
ウェンも、その中の一人で【千里眼】を操る妖と人間の中立だ。
『Jrこりゃあ、一体全体どゆことさね』
「ん? なにがだい?」
『Jrが欲するものの、気配が全く視えないよ』
「そぅか……」
庵は小さく息を飲み宙を見上げた。
風もなく、生温く空気が漂う。
『ときに。Jr? いよいよ、伊藤の奴に追い詰められているみたいじゃなぁ~~い?? 俺は知ってんだよォ~~う?? ファイルされてても視えるんでさぁ♡』
「……有難う。じゃあ、ファイルにもどーー……」
『女と結婚して所帯を持って欲しいって、弟が望んでいるだけじゃないかい♡ 身を固めればいいじゃないかぁあ♡』
ウェンはサングラスをかけ、大きく口を開かせた。
彼は、庵を弄ぶことが大好きで。
堪らなく、どしょうもなく大好きだった。
「オレと所帯を持つ女性は可哀想だよ。だから、いままで清いままなの。死ぬまで清い身体でいるつもりだし!」
『女かよ。いひひ♡』
「うっさいなぁ」
『あ』
突然、ウェンが宙を見上げた。
「? どうかしたのかい? ウェン??」
『気象が、動いた……』
「!? どこ?? どこだ?!」
庵はウェンの腰を激しく叩いた。
『消滅★ しました♡』
そんな庵を抱き締めるウェンに、
「っぎゃぁああ! 離せェ~~‼」
ジタバタ、と暴れ始めた。
そんな庵の耳元で、ウェンが囁いた。
「!? ぅ゛、あ、ぁ、うん。そのことはーー」
いい辛そうに口ごもる庵。
そんなときだった。
ガキィイイッッ‼
『ああ。来ちゃったんだ、テルるんちゃんってばァ♡』
「キサマに、あだ名でいわれる筋合いは! ない‼」
バサ!
ともテルは両手を羽に変え、足も鳥の鋭利な爪にし、ウェンに攻撃を仕掛けた。
庵が傍にいようと、お構いなくである。
「っちょ! ちょっと待て! ととと、ともテルッッ‼」
流石の庵も【旋律】を呼び、自身の前に経文陣を放った。
「!? っぐ、ぁアア゛! この!? なんのつもりだ! 庵ッッ!?」
「ともテル殿! オレごと殺るつもりだっただろう‼」
抱き着かれた格好のまま、庵はともテルに強い口調でいう。
それに、ともテルも憤慨していい返す。
「そんな真似をする程度だと思ったのか? 私を甘く見過ぎだ!」
喧々囂々の二人に、ウェンがほくそくんだ。
『テルるんちゃんもJrが所帯持った方がいいと、思うよね?』
「はぁ?! 馬鹿も休み休みにいえ! この子供が所帯だァ?! 誰が相手するもんか。たく、頭がおかしい妖だな!」
『Jrは成人男性で、テルちゃんよか遥かに年上だぞ♡』
その言葉にともテルが目を見開き、庵の顔を真っ青な顔で見た。
信じられないものを見るかのように。
その視線に、慣れている庵が答えた。
「オレは――二千と四百ちょいの歳だよ」
「――~~はァ?!」
声を大きく響く森の中。
鳥が木から飛び立っていった。
庵の年齢はともテルよりも、確かに遥か上で、ともテルもいい淀んでしまう。
「そんな子供の、姿してなに、ソレ」
『そうしないと妖力が暴走しちゃんだよーJrは、さらに法力に魔力に、純潔種だから気が気でないんだよw 日常生活もね♡』
自慢げにいうウェンに、
「嘘ついてんじゃねェぞォ? あァ゛?」
ともテルが凄んだ。
「いや。すっごい悪いんだが。ともテル殿、事実だぞ??」
庵本人が認めると、ともテルが武装を解いた。
戦意喪失したからだ。
「――……所帯、か」
そういい漏らし、ともテルが視線を地面に落とした。
だが、すぐに。
顔を勢いよく持ち上げた。
「ははは! 誰がこんな子供の容姿の奴を相手にするもんか! 所帯?! ないない!」
大笑いするともテルに。
『ああ。【八又鴉】は中性でしたね』
ウェンが微笑んだ。
「おい! 庵、このムカつく野郎をどうにかしろよ!」
「はいはいっと。【済。ファイルOFF】!」
『バイバーイ♡ Jrに、お嬢さん♡』
ようやく去った妖に、庵とともテルが佇んでいた。
「なにをしてたんだよ。勝手に、一人で」
「……調べ事をするのは集中力も必要なんだ。悪かったね」
「こ、今度から、……一人の単独は、止めてもらおうか」
「はいはいっと」
「キサマ。分かってないだろう、絶対」
歩き去ろうとする庵の尻を、ともテルは蹴飛ばした。
そして。
「私が、キサマを監視していくからな! 覚悟しろ!」
声を震わせながら、いい叫んだ。
(面倒くさいなーだから、嫌なんだよなー繋がりってさー)
いわれた庵は、苦笑するほかない。
「で。キサマは、なにを調べていたんだ?」
ともテルの問いかけに、
「それは――……」
次いで庵も諦めて言うのだった。




