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第17話 八百一族の男たち

 目の前の不可思議な現象に。

 威六が目を疑った。


「は、ははは……ふは、はは!」


 乾いた笑いが漏れた。

 そして、膝が折れた。

「お主の野望も、これまでだw」

「……――いつからだ?」

「雨が降らなくなってから、可笑しいなと思っていた」

何故なにゆえ。そんな早い段階で?」

 ゆっくりと威六と庵が話し合う。

 その様子を、伊藤が見ていたが。

 すぐに、雨の中に立ちすくむ影に気がついた。

「? あれは?」

 それは少年とも、少女とも見える。

 ともテルだった。

 伊藤が駆け出して行く。

 威六を超え、庭へと一目散に。

 さらに。庵をも超え。

 ともテルの元に、裸足で行った。


「雨、降ってるのだから。屋敷の中にお入り下さいませんか?」


「あ? 私に言っているのか? キサマは」

「はい。そうですよ?」

「いい。私は妖だ、このくらいの雨な――」

「いえいえ。ダメです」


 伊藤はともテルを抱きかかえると。

 そのまま屋敷の、あの部屋へと戻っていった。

 庵を超え。

 威六を超えて。


「離せッッ! おいィいいッッ‼ キサマァああッッ‼」


 ジタバタ、と暴れるともテル。

 そして。

「はいはい。暴れないで下さい。お嬢さん」

 にこやかに、伊藤が優しくともテルを畳の上に下した。

「星々《キララ》さーん。星々さー~~ん!」

「はい。あなーー!? ま、まぁまぁまぁまぁ♡ あらあらあらぁ♡」

 呼ばれてやって来た星々が、ともテルを見て。

 目を輝かせた。

 歓喜の笑顔だ。

「お湯に浸からせて下さいませんか? お願いします」

「はい♡ 喜んで」


「!? ぇ、ええええ??? っちょ! 待てって! ぁあ゛ああ゛~~‼」

「王行際が悪いですわねぇ~~もう♡」

「ぃ゛、っやぁだァ゛~~‼」

 引きずられるように連れ去られていくともテル。

 ここで戦場離脱となった。

「……星々殿w」

 庵が唖然とした表情をするのも、束の間。

「話しを反れて悪いな。オレがお主を疑ったのは、法力のだ」

「……――法力、だと? 意味が分からんなァ!」

「お主の法力は禍々しい上に、オレたち本家の近く、ほど遠いが。人界ではまかり通るだろうが」


 ザァアアアアッッ‼


 雨が激しく振り始めた。

 今までの雨不足が嘘のように。

 水甕がひっくり返ったというように。


「それで妖を脅かし、妖を配下に置いたのか! このならず者がァあああッッ‼」


 その激しい雨音内に。

 庵の叱咤の声が飲み込まれていく。

 声を荒げられた威六の身体がよろめいた。

「く、っそ……この儂が、この儂が……」

「悔い改めよ。若造が!」

 そう見下ろす庵に、

「っふ。はははは……ふふふ、ふは!」

 威六が嗤い出した。

 声色の変化に、庵の眉毛も吊り上がった。

 それは威六のものではない。


「――……父上、ですか?!」


 確かめたくもないのに。

 訊かずにはいられない。


「意外と。バレないもんだよね♪」


 にこやかに、そう伊吹がそう言う。

 威六の姿が、伊吹の姿に変わっていく。

「おい。父上……あなたがここに居ることを母上はご存知で」

『「当たり前を申すでない。愚か者めが」』

「! 母上ッ‼」


 伊吹胸元から、ひょっこりと狐が顔を出した。

 菜の葉御前だ。

何故なにゆえですか、このような現世に!?」

 驚いたのは庵だけではない。

 伊吹の本家の子孫である伊藤もだ。

「……八百、伊吹殿」

 初めて見る先祖でもある伊吹。

 面影が庵と、全く重ならない。

 それはそれで、よかったと伊藤は思った。


 全力で戦えるからだ。


 「何か、御用でしょうか?」


 平静を装いながら伊藤が訊く。

「愚か者を引き受けに来たまでのことだ。遥々、このような場所までね」

 飄々と、伊吹が応えた。

『「わらわたちが連れ帰るのじゃ。感謝するがよい」』

「感謝? なんでですかな? 菜の葉御前殿」


『「人界の塵を引き受けてやるのじゃぞ? 感謝されも当然だろう?」』


 不敵に口を開き獰猛に尖った歯を見せる。

 ギラリ、と鈍く輝く。

『「馬鹿でも感謝の一言も言えるだろうにのぅ? なァ、庵ィ?」』

「馬鹿でも馬鹿なりに。頭はあるのですよ、母上様w」

『「それはどうかな? 愚息が」』


 睨み合う母親と、その息子。


「行こう。もう、威六の肉体は私と一体化したことだし」

 胸元の菜の葉御前の顎に手をやり。

 優しく撫ぜる伊吹。

「待て! 父上ッッ‼ その者も八百の分家でも当主! 慈悲はないのか‼」

 庵が伊吹の前に立ちはだかった。

 雨で、ビシャビシャになりながら。

 畳に雨が滲んでいく。

 息子の庵を見下ろしながら。

 冷淡にも伊吹が吐き捨てた。


「慈悲はない。人界を混沌に陥れた罪は重いのだ」


「! っく……――」


 がくりと項垂れる庵の肩に手を回し力強く、伊吹が抱き寄せた。

 そして、耳元で囁き。


「忘れるな、庵。その言葉を!」


 突き放すと手を前にかざし門を呼び出した。


 そこからは甘い蜜の香りが漂ってきた。

 桃の匂いが。


 バタン‼


「兄、上様」

「オレは……――無力だなァwwwww」

「兄上様、お帰りなさいまし」

「うん……ただいまぁ。伊藤」


 記録的な大雨となった。

 その大雨は、この日を境に4年間と降り止むことはなく。

 結果として川の決壊により水没。

 壊滅的な村や、押し流され姿形すら失った村もあった。


「これから。どうなさるおつもりですか?」


「うん。暫くは、屋敷に留まるよ。いつものように」

「! はい、はい! ですよね! です、よね~~ふふふ」

「そうしたら。また出て行くよ」

「しかし。兄上様」


 怪訝な声を漏らす伊藤に。

 庵が首を傾げた。

 いつもの訊くだけの伊藤ではなく、喰いついてくる様子に。

 庵も、びっくりしてしまう。


「祝言や、婚儀やら。兄上様にはしなければならないことが山のようにあります故。暫くと言わずに、腰を埋めて頂いた方が、奥方も安心するのではいですか? 妊娠とかはされていらっしゃいませんか? しかし、新婚とならば、やはり一緒に暮らし。愛を育み。子を成された方が、やはり私はいいとは思うのですが。兄上様は、どうされたいのでしょうか?」


 うきうき、と伊藤が饒舌に語り言う。

 庵の目がまん丸になってしまう。

「あ、あの……ともテル殿は、嫁とかじゃ……」

「ああ! 結婚を前提としたお付き合いされているので、家におつれされたのですね!? ともテル殿と申されるのですね。愛らしいお名前です」

「いや、あの……恋人とかでも」

「いえいえ! ああ、私は嬉しく思います! 歴代の弟君たちが望んだ瞬間に立ち会えるのですから! なんたる幸福でしょうか!」

「え? あの、初耳……なんだけど? え? どういうことw????」


「兄上様の子に会いたいのです! そして、兄上様が【昼行燈】から一線を引き。この伊都に、腰を据えて頂きたいのです。もう、兄上様も身を休めるべきなんです!」


 庵は眉間に指をあて渋い顔にもなってしまう。


「それはこれから考えようじゃないかw ああ、手紙は届いたかい?」

「ああー~~それが、威六の叔父上に邪魔をされまして」

「それはそれは。可哀想だったねwwwww」


「はい。兄上様」


 ◆


「地上が恋しいか? 伊吹よ」


 悪戯に菜の葉御前が自身の膝に寝そべる伊吹に訊ねた。

 だが、彼からの返事はなかった。

 小さくも規則のよい寝息が聞こえたからだ。


「夢の中でも行くのか? 妾を置いて」


 返事がないと分かっていても聞いてしまう。


「誰かが、……来た」


「!? どうかしたのか? 伊吹」


 勢いよく起き上がった息吹が当たりを見渡した。

 戦闘態勢の準備もすでに完了している。

 喜々とした表情をする伊吹に菜の葉御前も光悦な表情となった。

「出て来い!」

 低い口調の彼の前に汚い鉄の箱が止まった。

 属にいうところの――バスだが、今の時代の彼らには分かるはずもない。


「手前がっ、伊吹に間違いねぇかぁ!?」


「! ああっ、私が伊吹僧だが!」


 伊吹の返事に安堵に胸に手を当てた男。


 額は広く、紙は薄く。歯は煙草で黄ばみ口許には煙草を咥えている。

 服装もだらしない身なりにしか見えない。


「俺ぁ、江頭保ってんだわー~~ちと、付き合ってくんない?」


 突然の申し出に伊吹も驚いたのだが。

 すぐに2つ返事が返って来たのは言うまでもない。

 そしてそのままと【御霊特急ミタマファンファーレ】へと乗せた。


 そして、連れて行かれた先は――遥か未来であり、もう1つの世界。

 伊吹が知る訳もない。


【日本】であった。

 

「あの馬鹿を全力で止めて欲しいのよwwwww」


「あの馬鹿????」


「ああ。ゼナスっつぅんだけどねw」

最終回までお付き合い有難うございました!時間経過は伊吹は過去、庵は未来、伊藤は今と言う時間経由で書いていました。分かりづらくで申し訳ないです。カクヨムの方では改稿前のものが掲載していました。ご興味があればよろしくお願いします!それでは失礼致しました!

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