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第16話 本日は大雨なり

 じっとりとした熱い灼熱に、威六の額に汗が滲んだ。

 依然として。伊藤と威六が睨む格好になっていた。

 そして。

 意味のない会話をしているのだが。

 どうしても、威六も苛々が募り。


「今日はよく喋るもんだ。住職様は」


 そう口元をつり上げた。

 伊藤は、微動だにせず。

「かも、しれませんね。威六の叔父上」

「……――何を、企んでいる?! 貴様は‼」

「企む? それは叔父上ではありませんかな?」

「!? 儂を疑うか! この愚か者がッッ‼」


 勢いよく威六が、顔を真っ赤にさせて。

 立ち上がった。

 その様子にも。

 伊藤は表情を変えない。

「申し訳ありません。気分を害されましたかな?」

「ああ! 分かっているじゃねェかァッッ‼」

「誠に、申し訳ありませんでした」


 畳に手をつけ。

 深々と顔を下げる伊藤。


「っち!」


 渋々、と威六が腰を据えた。

 腕を組みながら伊藤を睨むと。


 ぞわ!


 ぞわわわ!


 腕に、いや。

 全身に鳥肌を立てた。


「っな?! 一体、何事だァああ?!」


「ああ。旋律が奔っている」


 伊藤の顔が緩んでいく。

 その様子に。

 徐々に、威六の目が見開かれていく。

「これが目的か! 貴様の‼」

「目的、ですか? はて、なんのことやらwwwww」

「誤魔化すんじゃねェ! 小童がァああッッ‼」


 威六が黒い数珠を握り。

 伊藤へと攻撃の経文陣を放った。


「!?」


 驚く伊藤に、威六は。

 高笑いをしながら。


「吹っ飛べ! 本家の蛆虫がァああッッ‼‼」


 ドン!


 ドドン‼


「?! なんの、音だ??」


 余りに強い屋根の当たりに。

 地面の振動音に。

 威六は経文陣を破棄していた。

 そして。

 ゆっくりとした仕草で。

 外へと、一歩。

 また一歩、と。


 向かって行くと。


 ガッッ‼‼


 屋根を突き破り。

 威六の目の前に何かが、落っこちた。

 音の正体。

 

 それは。


「さ、かな……だと?????」


 立派で大きな魚。

 しかも。

 冷凍されているカチコチなものだった。

「何故……頭上より、落ちて来ているのだ????」

 膝を折り、それに触れた。

 そして。

 その位置から、外を見た。

 色や、姿形のまばらな魚の骸が庭に。

 落ちている。

 異様な光景に。


「――……昼行燈。あの者が、やったのだな!?」


「さァ。兄上は気まぐれですからね。私は存じません」


 しれっと言い切る伊藤に。

「嘘をつくでない! 兄が兄なら! その弟も弟か‼」

 立ち上がり威六が吠えた。


「吠えるな。愚か者が」


 低い声が庭から、威六に言い放った。

 その声に。

 威六の目が細められた。

「何年、いや……いつぶりだァ? 昼行燈殿」

「さァw 知んないけどぉ?」

 威六は背中越しに、庵に語りかけた。

「なんの真似だァ? こんな珍妙な行為を行って。この八百やお一族の顔に泥を塗る気か?」

 泥、と言う言葉に。

 庵が小さく噴き出した。

「オレが泥を? 愛しい弟君に塗る真似をするとでもお思いかぁw?」

 からかいを込めた口調で、威六に言い捨てた。

「舐めるなよ。小童がッッ‼」

 そして、強い口調で。

 威六を窘めた。


 ビリビリ――……。


 部屋の空間の空気が震えた。

 それに。

 威六も、くぐもった表情をしていた。

 考えている。

 どう。


 対峙出来るのかと。


 ぴちゃ。


 ぴちゃぴちゃ。


「!?」


 さらに威六に追い打ちをかけるかのように。

 魚の骸が鳴った。

 空から降るものに。


「そんなッッ! ふざけたことがッッ‼」


 威六が走り出し。

 庭の魚を見た。

 そして。

 宙を仰いだ。


 ザァアアアアアーー……。


「雨が、降る……だ、と?」

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