表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/17

第15話 後ろと正面の背中

 経文陣を発動させ、二人は歩いて行く。

 歩くといっても、そこは路ではなく。

 障害物といった方がいい。


「ここが――【最果て】なのか」


 大きなリンゴのようなものや、ピエロのような大きな顔。

 地面のような場所に、真っ赤な太陽が埋まり。

 その太陽なものには顔があり、ぎょろり、と二人の同行を見つめている。

「気持ちわりィな……」

 ともテルが、そう吐き棄てた。

 そして宙には、月に似たものが浮いている。

 それにも顔があり、下にいる二人を凝視している。

 無言でだ。

「こんなところに、なんの用事なんだってんだよ。庵」

「用事と言えば用事。でも、そうじゃないと言えばそうじゃないんだけど」

「キサマと、小難しいことを言い合う気はない。それに訊く気もない」

「だよねw」

 そう肩をすくませ、口端を大きく開いてにこやかに庵も言う。

 しかし、すぐに。

 その表情も一変する。

「私も、早くここから出たいことにともテル殿と同じだ」

 目を細め、旋律を回したかと思えば。

 経文陣の文字を動かした。

 まるで、何かを探るかのように。

「何を、求めて来――」

「っし。静かに!」

「! ぅ、ああ」

 口を手で押え、ともテルが顔を横に向けた。

(一体、何をする気なんだ。この生臭坊主は)

 目が離せない庵の行為に。

 ともテルは、じっと見ていた。

(私に、訳も言わずに!)

 怒りに似た感情が、小さな胸を支配していく。

 それが、どうしてなのか。

 ともテルにはーー分かる訳もなく。

 分かりたくもないとも思っている。


「よし! 分かったw!」


 満面の笑顔で、そう庵が叫んだ。

 ともテルは、横目で。


「ふぅん? で、どうすんの?」

「? 機嫌が斜めのようだね? まぁ、場所が場所だしねェw」

(場所のせいじゃないっつー~~のッッ‼)

「ま、まま~~行こうじゃないの! 【約束プロミスランド】にwwwww!」

 陽気に行こうとする庵に、

「私がキサマの身体を抱き、飛んでやろう」

 ともテルが背中の羽を広げて、そう言う。

 しかし、庵は顔を横に振った。

「それではお主に負担をかけるだろう。いいよ、オレは! っと!」


 バッチンッッ‼


「自力で飛ぶさw」


 首に下げられていた【万球玉】を手で、弾き飛ばすと。

 その玉は、庵の周りを勢いよく飛び回り。

 庵の身体を浮かした。

「-~~ッッ‼」

「む? どうかしたのか? ともテル殿????」

「っな、なんでもない‼」

 不機嫌に叫ぶともテルに、庵は顔を傾げた。

「本当に女子おなごは分からんなァ~~」

「うっせぇ~~よ! 生臭坊主の分際で‼」

「ひどい言われようだねw ま、いいけど。ついて来てよ? っと!」


 そう言うと、疾風の如く勢いで。

 ともテルから離れていく。

 見る見る、と置いていかれてしまうともテル。


「っな、そんな……嘘、だろう?????」


 唖然としてしまうともテル。

 そして、立ちすくんでしまう。


 ◆


「やっぱり。ついては来れなかったか」


 頬を掻きながら、そうぽつりと庵が漏らした。

 だが。

 戻る気はない。

 ここに居るのは危険だったからだ。

 早く。

 一刻も早く。


「見つけなければ!」


 と、意気込む庵の傍で。

 声がした。

 しかも、それは泣き声で。

 子供のような、か細い声。


『ぇ、ぅあ゛……ロネ、ロネぇ~~』


 庵も、動きを止めた。

「標的発見w ラッキー~~」

 そう言うと庵は手を合わせ、腕を立てに合わせた。

 腕には魔法陣が浮かび上がった。

 その魔方陣が完成すると。

 閃光が奔り。


「っきゃん!」


 何もない空間に。

 少女が姿を現した。

 大きな瞳から、大粒の涙が零れ落ちていた。


「こ、ここは……ロネ、ロネはどこ?? ロネはどこ????」


 必死に、誰かの名前を呼ぶ少女に。

「お主。名前は? オレは庵と申す」

「い、オリ? あたしは……トリノ」

「うむw トリノ殿。お主は――アメフラシ。雨女だな?」

「うん。でも、あたしは」


「【死人】 ……じゃねぇかよ。そいつぁ、よォ~~」


 息を切らしながら。

 トリノを見たともテルが、荒く息を吐いた。

「確かに。トリノ殿は死人。だが――能力は死なない」

「ま、さか……庵。キサマはッッ!?」


「その能力の引導を貰いに来た」


 低く言葉を発した庵に、ともテルが。

「奪いに、の間違いじゃねぇのかよ。それってさ」

「かもねw」

「最低な奴だな!」

「だねw」

 茶化すような言い方に。

「キサマ!」

 拳を振りかざすともテルに、

「いいよ。挙げる、この能力。もうあたしには必要がないもん」

 優しい口調で、トリノが言う。

「でも。条件があるの。いいよね? それぐらい」

「ああ。もちろんw」


 ぱちん!


 指を鳴らして、ウインクをする庵。

 トリノも、口許に両手をやり。

 目を堅く瞑り。


「ロネを、ここに居るはずのロネを探して」


 そう声を強張らせた。

 庵とともテルが見つめ合う。

 少し困惑気味に。

 何故ならば。


 ロネはトリノの背中合わせにいたからだ。


 お互いが前を見ていて。

 背中が合い、振り向くことが出来ず。

 お互いがお互いを。

 泣きながら探していた。


 彼女たちは――一卵性の双子の姉妹だった。


 元は一つだった。


 だからこその悲劇となった。


「その願い。聞き入れよう!」


 そして。

 庵は旋律を振りかざし、二人の背中を引き裂いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ