第14話 今、そこにある奇蹟
庵とともテルが突っ切った――【世界の最果て】
中は、激しく荒れていた。
「っぐ! これはこれはッッ!」
目の前の絶望的光景にも、庵は不敵に嗤う。
しかし。
一緒に連れ込まれてしまったともテルにとって。
声にも出せない。
どうすることも出来ない。
まさに――……。
恐怖だった。
「いいい、ぃおり~~ィ‼」
藁にも縋る思いで庵に抱き着いた。
ふに♡
「‼」
背中に当たる柔らかい感触に。
庵の鼻先が下がっていく。
だらしなくも、優しく。
震えるともテルの耳に囁くように。
「大丈夫だよ。オレが居るでしょうw」
安心させるように言葉に魂を練る。
言霊を使う。
「う゛! ぅう゛ンん゛!」
さらに、ぎゅ! っと庵の身体を強く抱きしめるともテル。
もう少し、こうしていようかよ。
不埒なことを思ったが。
庵にとっても。
初めての場所。
(さすがに。本気の本気で行くかなw!)
経文陣をさらに強化させ、中へと突き進んで行く。
「竜巻が、2つ……4つ。いや、恐ろしいことよ」
眼下には巨大竜巻が。
宙と、地からそれぞれがとぐろを巻き。
重なり、喰って大きく重なっていく。
その竜巻群が。
ざっと数えて四十もあった。
「父上。母上……世界は広いですねぇwwwww」
ジャラ!
【旋律】を鳴らし、その竜巻の合間、合間と。
庵は突き抜けて行く。
「本当に、オレたちが居る世界は【揺りかご】なのですね!」
声を震わせる庵。
それは、恐怖から出ているものではない。
これは。
理や、智を知る喜びと言ってもいいだろう。
「目が醒めたようだ!」
歯を噛み締め。
喜々とする庵に。
「醒めたくない……このままで、今までで。いいんだ!」
掠れたような声をともテルが吐き捨てた。
変わること。
変わっていくことのーー恐怖。
捨てる日常の――体裁や、規律を。
教養も範囲を超えれば。
越してしまえば、頭でっかちにしかならない。
問題と、回答も。
十人十色――同じにはならない。
でも。
始まりは――いつだって【一つ】だった。
それらが歩み。
二手に、それぞれに歩み、別れ。
回答も、問題と。
複雑怪奇なものに、その色を変えた。
それは。
自身たちが生き残りために生み出した。
苦肉の策に近いものだとしてもだ。
それぞれの生き方だ。
一体、誰が。
そのことに【是非】が出せるだろうか。
「【森羅万象】!」
庵がそう唱えると。
竜巻が嘘のように消えてしまった。
その様子に、目の当たりにしたともテルが。
「え? ぁ、え??」
庵の顔を二度見じてしまう。
しかも、その顔は真っ赤に染まっていて。
瞳も濡れ、なんとも妖艶なもので。
なもので、つい。
「!?」
庵はともテル残しに腕を回して。
唇を塞いでしまった。
自身の――唇で。
ともテルも抵抗なく受け入れてしまったのも、つかの間。
ド、ッゴォオオッッ‼
「ぶ、っほぉおおううw」
「ふざけんじゃねェよ! このエロ坊主がァああッッ‼」
ともテルの右ストレートが庵の左頬に炸裂した。
「あべしw」
「ぶっ殺す! 何万回でもだ!」
「女子が恐ろしい言葉を吐くでない」
「よし。ぶっ殺す♡」
腕を振りかぶるともテルに。
「それはまた後ほどで頼む。今は、それどころではないのでな」
庵は唇に指を添えた。
「このような場所で。オレはともテル殿を失いたくはない」
「……恥ずかしい奴」
ついには折れ、顔を伏せてしまったともテル。
「状況を打開しろ。話しはそっからだろ?」
「うむ。済まない」
経文陣を宙で止め。
庵は大きく息を吸うと、もう一度。
「【森羅万象】‼」
術を唱えた。
すると。
この【最果て】の空間に、庵の経文陣が。
支配するかのように。
文字を浮かばせた。
「キサマ、神にでも……なるつもりか!?」
余りの庵の行為に、ともテルも声を荒げた。
しかし。
当の庵は、
「なりませーんwwwww」
軽く言い返すだけだった。




