第12話 世界の果てへ
顔がボコボコが痛々しい庵と、怪訝な表情のともテル。
「で。結局、何がしたいんだよ。キサマは」
「オレがしたいのは。そうだなー」
んー~~と腕を伸ばす庵。
「【伊都】を。弟を守りたい」
にこやかな庵に、ともテルが唇を突き出した。
「で。これからどこに行く気なんだよ」
二人は【旋律】で経文陣に乗り、飛んでいた。
その安定感に、最初は。
『そんなもんに乗れるかぁっつ!』
頑なに、乗ることを拒否していたともテルだったが。
今は慣れた。
少し、怖いのか。
庵の腕を掴んでいた。
小さく触れていた胸が当たり、庵も、鼻下を伸ばしていた。
デレ、っと。
「水不足の解消も、そのためなんだよw」
そして、また上昇させると、そこは雲の上。
がくがく、とともテルの膝も笑う。
【八又鴉】であるともテルは、飛ぶことが出来るのは当たり前だ。
だが。
こんなに空を飛んだ経験が、まだ――ない。
見る見ると、表情も真っ青に変わっていく
「だから! なんだって、こんなに! 雲の上なんかに来たんだよっっ‼」
ともテルが声を荒げる。
すると、庵が真剣な表情になった。
「水の気配が、この奥からしたのだよw」
声は陽気に、いつもと同じトーンだ。
だが、目許は獰猛にも、吊り上がっている。
「その水の正体を暴き出し。それをオレが頂く」
「――……キサマの方が。水泥棒になるわけか」
「っど、泥棒って! 誰かのだったら、そぉなるかもしれないが! 誰のものでもないかも、知れないのに、それを、っど、泥棒扱いとは、ともテルも酷い言い方をされるなぁwwwww」
唇を突き出し、目を潤ませる庵に、
「でも。大概だ、妖ですら、その発想はないだろうな」
ともテルも、ともテルなりに誉めた。
したこともない、お世辞にも、そう感じない言い方に。
「凄いよ、庵の案は」
自身も、苦笑する。
「それ。俺を慰めてるの? それとも、悪かったなって反省したからなのかい?」
「‼ どっちだっていいだろう!?」
手の爪を、鋭利なものに変える。
「また首を絞められたいのかっっ‼」
「いやいやw それは、ご勘弁をばー~~」
そうこうしているうちに。
ふわ、と。
湿気を、水の匂いが鼻についた。
「水の、匂い……か? これは」
「ああ。そぉだねー~~」
「本当なのか? キサマはふんわりし過ぎていて、信用が出来ない‼」
「それは。ぐっさりくるなー~~ショックーw」
がっくりと項垂れる庵に反応したのか、経文陣がふらついた。
「!? っひゃあぁあ゛あ゛ッッ‼」
突然のそれに、ともテルの口から、情けなくも悲鳴は漏れてしまう。
「いいいぃいい! 庵ィいいッッ‼」
「あ。ご免ご免wwwww」
「業とか! 業となのか!?」
「いやいや。そんなにオレも、器用じゃないってー」
経文陣を、持ち直した庵が、
「ただね、ちと。相手さんが、厄介だなと」
何かを、見たかのように言う。
手の甲が、ともテルの目に映ると。
そこには目の文様らしいものが浮き上がっていた。
「おい。それは??」
「? ああ、これはウェンの――【千里眼】を拝借したものだよ。小さく抑えたものだから、大雑把にしか、視えないのが難点w」
「ふぅん。本当に妖の部類だな。キサマは」
そう言いながら、ともテルは紙と、筆を出すも。
風圧で、バサバサと書くことは叶わない。
舌打ちをし、胸の中にしまう。
「ま。で、どこまで飛ぶ気なんだ。キサマは」
面白くないと言った風にともテルが、庵に聞き返した。
「このままでは世界の最果てに行ってしまうぞ!」
「世界の最果て……――か」
「ああ! ほら見ろよ‼」
目の前に雲が捻じれ、雷が渦巻く空間が開けていた。
そこを妖たちは忌嫌い。
恐れ戦き――【世界の最果て】と呼んだ。
「上等だw 水をよこせ‼」
そう叫ぶと、庵は中へと突っ込んだ。




