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Lost Child  作者: 未兔
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フリオ・グルタ 第三節

「どうぞ、こちらです」

ミトとユーは村長のいるところまで案内をしてもらっていた。

初めに簡単な自己紹介をし、村長の場所へと向かう。

案内してくれているこの人はサビオと名乗り、村長のお付きの者と述べた。

明るいとも暗いとも言えない対応だが、二人を丁重に案内してくれていた。


村長と対面することになったが、詳しい内容はなにも教えてくれなかった。

どんな人物なのかといったこともわからず、直接会って判断してほしいとのことだ。


「都市なのに村長なんだね」

「私も少し気になりましたけど……」

歩きながらミトとユーは小声で何気ない話をしていた。


村長はこの都市の一番奥にいるそうだ。

建物や見た目は違えど、都市の構造や配置はユーの村とさほど変わらない。

この風景を見たユーはどこか懐かしさを感じながらも言葉にはしなかった。


ほどなくして、村長のいるという場所へとたどり着いた。

ほかの建物よりも少し離れた、見通しの良い場所だ。

しかし、この時点で既に違和感があった。


どこにも建物がない。

そこには敷地の地面が整備されただけの空間があった。

一応全体を柵が囲っており、一個所だけ柵がない部分が恐らく入り口なのだと推測できた。

ミトがここから見てもこの柵の中には何もないことが明白だった。

ミトは小声でユーに話しかける。


「ねぇ、ユーちゃん……村長さんのいるところってーー」

「ミトさんもですか?すごく大きいですね!私もこんなところに住んでみたいです……」

「……へ?」


ミトは呆気にとられた。

どこから見てもただの平屋でなにもない。

しかしユーにはここになにかが見えているらしい。


「お待たせしました、こちらになります」

「やっぱり……ここ……なの?」

「ミトさん、どうしたんですか?」

「うーん……」

「???」


ミトに術式は使えないが、ある程度の知識と術式の反応を読み取る技術は持ち合わせている。

しかしここには術式の反応がなく、幻術等の類というわけでもなさそうだった。


「それでは、ミト様はこちらでお待ちください」

「え、ボクだけ?」

「別々にお呼びしますので、それまでお待ちいただけますか?」


ミトはユーの目を見る。

視線に気づいたユーは、ミトに視線を返す。


「ミトさん、どうしたんですか?」

「んー、ユーちゃんが大丈夫そうならいっか……」

「?」

ミトが心配してのアクションだったが、ユーはなにも感じていないようだった。


「それでは、ユー様はこちらへ」

「ユーちゃん、いってらっしゃーい!」

「は、はい……」

ユーはどことなくぎこちなく、少し緊張しているようだった。


ユーが振り向いて何かを話そうと口を開く。

しかし、その言葉を発する前にサビオとユーはミトの目の前から姿を消した。


「ユーちゃん!?」

またしても術式の反応はない。

ミトはほかの可能性を考えた。


「これが……魔法……?」

念のためにユーたちがいた場所を簡単に調べてみたが何もなかった。

ミトは傍にあった大きめの石に腰を降ろして待つことにした。



ユーは胸に手を当てて考えた後、口を開いた。


「あの、ミトさん!後で、その……一緒に……!」

「申し訳ございません、既に移動をしましたので、ミト様にはもう声が届いておりません」

「え……?」


ユーは周囲をよく確認した。

視界にはミトが映っている。

しかし、ミトと目線が合わなくなった。

まるでユーのことが見えていないようである。


「あの、ミトさんは……?」

「もう我々が見えていないだろう、既にムンドに移行しています」

「ムンド……?」

「ユー様、ムンドは初めてですか?」

「はい……」

「魔法で作られた領域、と思っていただければ」


ムンドは、ミトとユーが通ってきたイルサオンと似ている。

魔法と術式という違いもあるが、根本的に目的が違う。

イルサオンは、内側から外に逃がさないための領域である。

一方ムンドは、外側からの侵入を防ぐための領域である。


「どうぞ、こちらに」

「あーよい、堅苦しいのは無しじゃ」

「村長、お連れしました」

「え、村長さん!?」


サビオが扉を開くと、立派な髭の村長が出迎えてくれた。

「わしが村長じゃ」

「村長さん、あの……ここは都市と聞いたのですが、村長なのですか?」

「うむ、村長じゃ。ところで、二人いると聞いていたが人間の者はどうしたのじゃ?」

「別室にて待機させております」

「ここに呼んでもらえるかの?」

「いいのですか?ムンドへ余所者を招いた例は過去に一度もーー」

「構わん、今すぐ呼ぶのじゃ」

「はい、ただちに」


サビオは一礼すると、ミトを呼びに戻った。

「ユーと申したか、エリファス家の者じゃったな」

「はい……え、えっと、私の名前を……?」

「うむ、おぬしは有名じゃからの」

「私がですか……?」

「そうじゃよそうじゃよ、有名人じゃ」

「私はなにもできないですし……有名になるようなことは……」

「いやいや、おぬしはーー」

「失礼、戻りました」

「ユーちゃん!!!」

「ミトさん!?」

「立ち話もなんじゃ、奥で座って話すとするかの」


ミトたちは村長に連れられて奥で話をすることにした。

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