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Lost Child  作者: 未兔
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デザフィオ 第一節

「あっ……ミト、さん……その、大丈夫ですか……?」

「よぉ、お疲れさん」

「わーい、ユーちゃんありがとう!大丈夫だよ!でも本当に疲れましたよ……」


治療を終えて戻ってきたミトは、シダルスとユーに歓迎された。

次の試合が始まるまでにしばらく時間があるので、共に食事休憩を取ることになった。


人混みが苦手なユーに気を使ったシダルスは、運営関係者専用のロビーへと案内してくれた。

一般のフードコートに比べると人の少なさが圧倒的に違い、落ち着いて会話もできる。

ちなみに、シダルスは騎士団代表のゲストとして、本日のみ関係者席へ招かれている。


「いやぁ、なかなかに面白い光景でよ……笑いを堪えるのが大変だったんだぜ?」

「笑い事じゃないですし、ボクはそもそも大会とかにはもう出ないって決めてたのに!」


ミトは不満の声を漏らし、昼食のステーキを頬張った。

ちなみに昼食はユーの分も含めて全てシダルスの奢り。

何故かシダルスは猛烈にご機嫌な様子だった。


「あぁ、忘れるとこだったあの大男から伝言を預かってる」

「……え、あのボクを投げ飛ばした……?」

「おう。読むぞ」


ミトはため息を漏らして諦めたように聞き手に回る。

もともとこの伝言は戦闘を交えた相手に友好の証や感謝の言葉を伝えるために用意されたものだ。

もう一度手合わせしたい、友達になりたいといった出場者のコミュニティでもある。


しかし、次第にこれを悪用されることが起きた。

差出人を不明のままにして中傷文を送りつける輩が現れたのである。

ミトは過去に受け取った伝言は全てこの手の脅迫文だったため警戒した。


『勇敢なる少女へ

狙った相手を仕留めきれず、逆にわしが予選で落ちるとは夢にも思ってなかったわ!

後からちらっと聞いたが、誰とも手を組まずにあの状況で降伏せんかったらしいな!

それを知ってますますお前さんが気に入った!

いつでも構わねえ、是非うちの店に顔を出してくれ!

お嬢ちゃんなら大サービスしてやるからな!


追伸、機会があればまた手合わせ願う。

お前さんの実力が見てみたいわ!』


「……以上だ。ご丁寧に直筆のサインが入った優待券まで入ってたぞ」

「え……ほんと?これがボク宛に……?え……?」


どれ程の罵詈雑言、誹謗中傷が羅列されているのかと身構えていたミトは嬉しさと驚きでなんとも言えない感情になっていた。

それもそのはず、初めて正しい意味での伝言を受け取ったからだ。

それも豪華な粗品付きでだ。


ミトは予選試合で勝ち残った。

大男に投げ飛ばされた瞬間、毒の効果で少しずつ減り続けたダメージが体力の半分を越えた数値を示したからだ。


会場は大荒れで、歓声とブーイングが混ざっていた。

というのも、今回の大男はマテナルというある筋で有名な人物。

優勝候補の一人でもあるが、まさかの予選敗退に一部の客層から不満の声があがった。

しかし、ルール上なにも問題はなかったためそのまま本選へと駒を進め、今に至る。


ちなみに会場を鎮めたのはシダルスだ。

目視と映像の確認で問題がなく、不正行為は認められない旨を伝えた上で本部の決定を知らせた。


「文句があるなら聞くが……まさか裏で金が動いてんじゃねぇだろうな……?」

この一言で荒れていた一部の観客の声は完全に消えた。


つまり賭博を示唆しての発言だ。

賭博は認められておらず、違法になっている。

騎士団としては取り締まらなければならないが、尻尾を完全に掴めておらず、今もうまく目を掻い潜って行われているのが事実だ。


騎士団として顔が知れているシダルスの前で賭博をしていると発言するも同等の行為はあまり利口とは言えない。

当然だが不満があっても押し黙るしかなかった。

……今回はそもそも不正などは一切ないので、よっぽどのファンでもない限りここで揉めることはないはずなのだが。


そんなわけで、ミトは後から沸き上がる喜びにだんだんと表情がにやけていった。

ミトはマテナルの名を知っている。

姿を見たのは初めてだったが、その名はハッキリと覚えている。


オーダーメイドの専門店、鍛冶屋のマテナル。

細かい依頼も完璧に仕上げる凄腕の技術者。

予約が殺到した結果、現在は依頼を受け付けていない幻の鍛冶職人となっている。

そのオーナーに気に入られたというのだからこれほど喜ばしいことはない。


「ミトさん、よかったですね……!」

「うん!もうユーちゃん大好き!」


ユーはミトに突然抱きつかれたことに驚いた。

それ以上に、こんなに喜んでるミトを初めて見たので、自分のことのように嬉しく思った。


「ここに招いた俺にも感謝の言葉はないのか?」

「それとこれとは別です。そもそも今日はユーちゃんとすぐにここを出る予定だったのに……」


ブツブツと文句を言うミトにシダルスは若干目付きが鋭くなった。

ミトに抱きつかれたままのユーはシダルスの目を見て自分が威圧されているように感じて一人怯えていた。

その震えを感じてミトは思わずにやけていた。


「はぁ……。んじゃあミトがやる気を出す条件を追加してやるから本気でやれ」

「ボクはそんなに簡単にやる気を出さないよー?」

「優勝賞金十倍と高級ビュッフェの食べ放題を奢ってやる」

「やる!!!」


ミトは光の早さで即答した。

即座に言質を取ったと言わんばかりに確認し、シダルスも嘘、偽りはなく必ず約束を守ると言い切った。


ミトが喜んでる間に食事を終えたシダルスは時間を確認してから席を立つ。

わざとらしく言い忘れたことがあると一言添え、ミトの肩に手を置いて小声で話した。


「それと、もしこの大会が終わるまでに一度でも敗北した場合、お前を俺の隊列からの除名し、その少女を一時的にこっちで預かる」

「っ……!?」

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