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Lost Child  作者: 未兔
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フリオ・グルタ 第五節

村長はおもむろに杖を取り出した。

そして杖を軽く振りかざし、なにかを唱えた。


「外界の者には一応聞いておかねばならん決まりがあるんでの、すまんが無粋なことを尋ねるぞ」

「はい……?」


村長はなにかの魔法を唱え終わると再び席に戻り、質問を始めた。

「エリファスの者と共に行動をしている理由を聞かせてもらえかの?」

「んー、ユーちゃんが心配だから……かな?」

「ふむふむ……」


村長はじっとミトの目を見つめていたが、少し間をおいてから質問をした。

「魔法の技術や、この者の命を狙ってる……ということはないかの?」

「え……?ボクはーー」

「そ、そんなことはないです……!ミトさんは、そんなこと思っていません!!ミトさんは、私を助けてくれて……」


ミトが答える前に、ユーは思わず声を荒げた。

「ふむ、いやな気分にさせてしまって申し訳ないの。じゃが、気持ちはわからんでもないが今はおぬしに聞いているわけではないぞ」

「あ……えっと、ごめんなさい……」

「よいよい、おぬしがこの者を信頼していることはよく伝わったぞ。して、外界の者よ、改めて尋ねるぞ、魔法やこの者の命を狙っているのかの?」


ミトはユーを一度見つめてから、村長の方を真っすぐ向いて答えた。

「ボクは術式も使えないし、ユーちゃんの命を狙ったりしません。どちらかというと守ってあげたい子なので!」

「ミトさん……!」

「無粋な質問をしたの、おぬしらの言葉には嘘、偽りがないことは明白じゃ。わしは嘘を見抜く力があるんでの、しきたりとはいえ少し意地悪なことをしてしまったの」


村長は立ち上がって二人の近くに来ると、再び杖を取り出した。

その杖で床を突くと、ミトとユーの目の前にあったテーブルやコップが消えた。

魔法で出した時と同じように元に戻したのだろう。

「では、本題に戻るとするかの。少しついてきてくれるかの?」

「は、はい!」

「本題……?」

「なに、来ればわかるわい」


三人は部屋を出て、どこかに向かうことになった。

部屋を出ると、サビオが出迎えてくれた。

「もうよろしいのですか?」

「うむ、客人を祠へと案内してくるぞ」

「では、準備の方をーー」

「いや、おぬしはここで待っておれ。わしもすぐに戻るでの」

「わかりました」


村長はサビオを残し、二人を連れて外へ出た。

少し歩いてから村長が杖で床を突くと、ミトの視界から先ほどまであった建物が消失した。

「き、消えた……!?」

「むぅ?そうか、人間には見えないんじゃったな、驚いたじゃろ?」

「びっくりした……術式も物を消すことができるけど、家をひとつまるまる消しちゃうのは初めて見たよ!」

「そうかそうか、ひとまず祠に行くとするかの」


村長が案内してくれた場所は都市の反対側にある出入り口だった。

特に変わった様子もなく、ユーが最初にくぐった特殊な門と同じ構造のものだった。


「さて、この先の突き当りに祠はあるぞ」

「え、村長さんはいかないんですか?」

「うむ、わしが行っては都市に影響がでるのでの」


村長はそういうと門の目の前で歩みを止めた。

「まあ難しいことでもないしの、さくっと見つけて帰ってくるのじゃ。わしは少し用事があるのでの」


村長は軽い会釈をすると、そのまま来た道を引き返していった。

「本当に戻っていったね……でも突き当りってことは真っすぐ行くだけだし迷うことはなさそうかな?」

「魔物とかがでてきたりするんでしょうか……?」

「そのときはボクが全部やっつけるよ!」


ミトは胸を張って自信満々に宣言した。

確かにある程度の魔物ならミトは対処できる腕と経験がある。


しかし、グアルダとの戦闘で若干の不安もあった。

自分自身だけでなく、ユーを守らなければならないということだ。

ミトは単独行動が多かったため、その辺りの行動に慣れていない。

万が一戦闘になれば、同時に護衛の習得を試みようと考えていた。


そんなミトの気持ちは露知らず、ユーは自分のために体を張って守ってくれるミトに好意を抱いていた。

いつまでも守られているばかりの自分にユー自身が嫌気を差していたのだ。

そんなユーの気持ちに応えるかのようなイベントがこれから待ち受けているとも知らずに……

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