写真
オレの彼女は写真を撮りたがらなかった。
二人で撮った写真はひとつもない。
オレは彼女と二人でとった写真を持っていない。
自分の彼女との写真を持っていないのだ。
普通、どんなヤツでも一枚はもっているだろ?
ちなみに、付き合ってもう2年だ。
付き合いたてとかだったら、わかるけど、もう2年も付き合ってるのに
一枚も写真をもっていないってどうなの?
無理やり撮ろうとしたこともあった。
レンズを手で覆って拒否。完全拒否。
まったく、強情な女だ。
一人でなら写真をとらせる。まぁ、それでも嫌々だけど。
二人で旅行にいっても、写真にうつってるのは一人だけ。
オレが写っているときは彼女が、彼女が写っているときはオレが、それぞれ
カメラマンとなってお互いをとりあう。
決してツーショットの写真はとらない。
そこはもう、断固拒否される。
なんでだろう。そこまで、拒否するものか?
好きな人と一緒に写ってる写真なんてほしいものだろ?ほしくないのか??
そういった疑問が、疑惑に変わるときがきた。
彼女の部屋に行ったとき、たまたま昔のアルバムを見てしまったのだ。
まぁ、たまたまというか、気になってみてしまったのだけど。
見なければ良かったと、後悔した。
そこには、昔の彼氏と思われる男と彼女のツーショットの写真があった。
オレとは撮りたがらないのに、なんで他の男、いや、歴代の元彼との写真は撮っているんだ?
しかも、こんなに大切にとってあるなんて!
オレの写真は一枚もないじゃないか!
オレは疑問だった。しかしそんな疑問もすぐに怒りに変わった。
オレは彼女にとってどんな存在なのだ?
元彼に負けるってゆーのか?
写真をとる必要のない、それだけの存在だというのか?
オレはこの怒りを抑えることができず、彼女にぶつけた。
「だって、大切な思い出だから・・。」
それが彼女が言った言葉だった。
悪びれた様子もなく、あっけらかんと言ったのだ。
オレは、そんな彼女の考えがわからなかった。
だったら、なんでオレとは写真を撮りたがらないのか。
なぜ、元彼の写真をいつまでも大切にしているのか。
オレは彼女のことが解らなくなってしまった。
オレは彼女の思い出に負けたのだ。
こうして、2年という歳月でオレたちの物語はピリオドを打った。
しばらくして、ようやく気持ちの整理がついた頃、彼女から会いたいといってきた。
オレは内心、ちょっと期待していた。やり直したいといわれるのではないか・・と。
しかし、そんな淡い期待ももろくも崩れさった。
彼女が言った言葉によって。
「ねぇ、一緒に写真とろうよ。」
彼女はあの無邪気な笑顔でそういったのだ。
そのとき、オレは解った気がした。
彼女にとってあの写真たちは、自分が歩んできたことを確認できる大切なものだということを。
そして、写真をとりたがらなかったのは、オレのことを【思い出】なんかではなく、
今、一緒に同じ道を歩んでいる、愛する男としてみてくれていたということを・・。
【パシャ】
「ありがとう。この写真、大切にするね。」
オレは今日、彼女の【思い出】となった。