プロローグ1
はじめまして。
初めてではない方はこんばんは。こちらに移動しても読んで下さり、ありがとうございます。
これは、ふと思いついて、書きたいままきまぐれに始めてしまった小説です。
以前、ムーン様の方で連載を始めたのですが、諸事情により、こちらに移動する事にしました。
設定も多少変更になりましたが、掲載した文も短いですのであまり大きな変更はないはずです。
大きな違いと言えば、プロローグの部分だと思います。
不定期気まぐれ更新になると思いますので、のんびりとお付き合い下さるとありがたいです。
完結まで頑張りますので、よろしくお願い致します。
ちなみに初め、主人公の口調など、ころころ変わるのは、寝ぼけていたり、パニックになっていたりといろいろな理由がありますので、その辺りは流して読んで下さい。
荒々しい足音と共に乱暴に扉が開き、一人の青年が殺気を纏いながら部屋の奥へと進んでいった。
「父上、あれはどういう事ですか!」
青年が怒り顔で、その部屋にいる中年男性を睨み付ける。
「どうもこうも、お前の見た通りの事だが? 何か問題でもあるのか?」
「おおありです! 私の許可なしに、何であんなものを!」
「お前に聞けば、反対するだろう?」
「当たり前です!」
噛みつかんばかりの青年の表情に、父上と呼ばれた男は軽く苦笑をもらす。
「仕方がないだろう。いつまでも独り身のお前が悪いのだ。痺れを切らせた近隣諸国が、とうとう姫君達を贈ってきたのだから……」
「だからと言って、すぐに追い返せばいいだけの事を……」
「下手な事は戦争の火種になる。民のためにも、詰まらぬ争いは避けねばならない。万が一、我が国が攻め込まれたらどうするのだ?」
「それは……」
男の説明に、青年はぐっと言葉に詰まらせた。
何も言い返せない青年を見て、男はニヤリと笑みを浮かべる。
「では、決まりだな。早速、今宵から励むがよい。孫の顔を拝めるのを楽しみにしておるぞ」
「……残念ですが、孫の顔は当分諦めて下さい。私は一歩も後宮に足を踏み入れる気はありませんので」
「各国から選り取り見取りの美女が揃っているのだぞ。顔ぐらい見に行ってもよいのではないか?」
「全く興味はありません」
取り付く島もない青年の様子に、少し思考した男は何かを思いついたように軽く手を叩いた。
「お前……。本当は男の方が好きだったのか? だったら、各国には姫ではなく王子に代えて貰わないと……」
「父上!」
青年の周囲の温度が低くなる。
「冗談だ。そんなに目くじらを立てなくても……。はぁ、融通の利かぬ面白くない息子だ」
「だったら、面白い息子にでも後宮を差し上げて下さい。ついでに私の地位も譲っていいですよ」
「あいつはどちらも喜ばぬだろう」
「そうですね」
「お前達……足して二つに割ったらちょうどよかったものを……何故、こうも極端に……」
「仕方ないでしょう。それは親である父上の責任です」
「おい……」
淡々と返答する青年を、男は何ともいえない表情で見つめた。
「父上、話も済みましたので、これにて失礼致します」
「あぁ……。それで……」
「後宮にはいきませんよ。絶対に」
「………………」
男の言葉を遮った青年は、静かに部屋を出ていった。
そうして、残された男は閉じられた扉を見つめ、深い溜息を吐くのであった。
「あれの女嫌いも何とかならぬものか。我の時のように、女神が現れてくれないかのう……」
青年の前に、父親の願う女神が現れるまで、あとわずか……。
いよいよ、運命の歯車が動きだす。